糖尿病足病変:症状は?足の切断が必要になるの?フットケアの方法は?
更新日:2020/11/11
- 糖尿病専門医の関口 直孝と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が糖尿病による足の病気になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、つらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 糖尿病足病変とは、糖尿病によって足の感覚や血流が悪くなり、ばい菌が入りやすくなったり、炎症や変形を起こしたりする状態です。
- 血糖値を一定に保てない場合や、糖尿病で神経や血管が傷んでしまった場合になりやすくなります。
- 予防と早期発見・早期治療が大切です。
糖尿病足病変は、どんな病気?
- 糖尿病足病変とは、糖尿病の方に起きる、足の異常です。糖尿病によって、足の神経・血管・血流が傷つき、ばい菌が入って、足の皮膚や筋肉、骨までが壊され、足が変形したり壊死【えし】してしまいます。
- これは決してまれな病気ではありません。糖尿病にかかる方が増え、高齢化などを背景として、近年さらに増えています。
- 足病変が悪化して改善が望めない場合は、足を切断せざるを得ないことがあります。ひどくなる前に見つけ、治療を始めることが大切です。
糖尿病足病変と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
糖尿病で治療中の方
- 足の様子がおかしい(色が悪い、変形してきた、悪臭がするなど)、足が痛い、歩きにくいといったことがある場合は、糖尿病足病変の可能性がきわめて高いと考えられます。
- 血糖値が高い方は抵抗力が落ちていますので、悪くなるスピードが速いです。すぐにかかりつけの病院を受診し、治療を受けてください。
- 皮膚科、形成外科、整形外科、血管外科などに紹介されることもあります。
糖尿病といわれたことがない方
- まずは足の状態を確認する必要があります。皮膚科、整形外科、形成外科で診察をうけてください。
- もしかすると糖尿病かもしれませんから、血糖測定も受けていただくことをお勧めします。
受診前によくなるために自分でできることは?
- まずは足を清潔にしておくことが重要です。また、足に負荷をかけすぎないことも大事です。
- なお、糖尿病が進行すると、足病変の状態が悪くても痛みを感じないことがあります。色の変化や変形で足の異常に気づけるよう、足を見る習慣をつけるようにしてください。
糖尿病足病変になりやすいのはどんな人?
- なりやすい、かかりやすいことをハイリスク(高危険度)といいます。糖尿病足病変になりやすい、すなわちハイリスクなのは、下記のような方です。これらの条件に当てはまる人は、注意を要します。
糖尿病足病変になりやすい方
- 糖尿病になってからの期間が長い方
- 血糖値をコントロールできない方
- 糖尿病で神経が傷んでいる方
- 動脈の壁が硬くなり、血管が細くなって血流が悪くなっている方
- 足に潰瘍【かいよう】ができたことがある方
- 足が壊死して切断したことがある方
- ウオノメやタコがある方
どんな症状がでるの?
- 足の裏にウオノメやタコができたり、足の指が変形します。
- ばい菌が入ると赤くはれて、悪臭がすることもあります。
- 足の細胞が死んでしまうと、ミイラのような黒い色になってきます(壊死【えし】、壊疽【えそ】といいます)。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まず、足病変の診察を行い、問診・視診・触診によって診断と評価が行われます。検査としては、神経の検査、血流の検査、筋肉・骨の画像検査、感染症の検査などがあります。
神経の検査
- 反射(打腱器でアキレス腱を軽く叩き、足がピクッとするか)や、感覚(音叉の振動を感じるか。触られていることがわかるか)の検査をします。
- 心電図をとり、自律神経に問題がないか確認します。
血流の検査
- 足の血流が悪くなっていないかを見ます。血圧(腕と足)や、血管に流れている酸素の量を測ります。そして、足の血管を超音波検査、CT・MRI検査などで確認します。
筋肉、骨の画像検査
- ばい菌がつくるガスや、骨の炎症がないかを画像で確認します。X線検査、CT・MRI検査、骨シンチグラフィ(骨の破壊と再生がないかを見る検査)などです。
感染症の検査
- 採血して炎症がないか確認します。そして、足の病変部と血液にばい菌がいないか、また、どんなばい菌が関わっているのかを検査します。
どんな治療があるの?
- 糖尿病足病変には様々な治療法があります。早期に発見し、主治医の先生と治療方法について相談してください。
足にかかる負荷を減らす方法
- 潰瘍などがある場合は、病変部分になるべく負荷をかけないようにします。
- 安静にするほか、パッドや足底板(治療用の中敷き)、治療用のくつを使います。
糖尿病の治療
- 感染症にかかると血糖値が上昇しやすくなり、血糖が上昇すると免疫力が低下します。
- 血糖値を一定に保てるよう、糖尿病の治療を行ってください。
薬をつかった治療
- 足にばい菌が入ってしまった場合は、抗菌薬を使います。使用する抗菌薬は、菌の種類、病変の範囲や程度によってそれぞれ異なります。
- 血行が悪くなっている場合は、血管を広げて血液の流れを改善するお薬(血管拡張薬)を使います。
外科治療
- ばい菌が入って膿がたまっている場合は、皮膚を切って膿を出します。また、壊死してしまったところを切り取ります。
皮膚移植
- 治療によって病変が落ち着いても皮膚がなかなか元に戻らない場合には、自分の体の別のところから皮膚をもってきて足の皮膚にします。とってきた部分の皮膚は自然に戻ります。
血行再建術
- 血管を広げる薬を使っても足の血流がよくならない場合は、血管の中に細い管を入れて血管を広げる治療(カテーテル治療)や、ほかの血管から血液が流れるようにする手術(血管バイパス術)をします。
切断
- 壊死や痛みが強く、治療を続けてもよくならない場合は、足を切断しなければならないことがあります。
治療を受けた後に注意をすることは? 予防のためにできることは?
- 糖尿病足病変は何度も繰り返す病気です。治療した後も定期的に足を観察していただき、再び足の変化がありましたら、すぐに病院を受診してください。
- 特にハイリスクの方は、足を清潔に保ち、足を見る習慣をつけてください。足の感覚がにぶくなっていないか、皮膚の色が悪くなっていないかなど、セルフチェックをしてみてください。
- 医療機関では、医師・看護師・理学療法士・薬剤師・栄養士・臨床検査技師がチームで医療を行っていますので、気軽に相談してください。専門的なフットケアが受けられます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- ここが最も気になるところですよね。実は、足病変の大きさや深さ、原因となっている糖尿病のコントロール、神経や血管の傷み具合によって、治るかどうかにはかなりの個人差があります。
- 残念ながら、すぐに治らないことも少なくありません。ですから、早期診断・早期治療・そして、十分な予防につとめてください。