痛みのしくみ:検査をしてもわからない痛みへの対処法は?治療で良くなる?
更新日:2020/11/11
- 日本ペインクリニック学会専門医の濱口 眞輔と申します。
- このページに来ていただいた方は、疼痛【とうつう】(痛み)についてのお悩みがあり、どうして痛みが生じるのか、ということについて理解することを望んでおられるかもしれません。
- 疼痛(痛み)を理解するために、それがどうして生じるかについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 疼痛(痛み)とは、「からだに傷をおったときに感じるいやな感覚やつらい気持ち」のことです。
- 疼痛の情報は、脳の感覚にかかわる部分と、感情にかかわる部分に送られ、痛みをやわらげる命令を出す部分にも届けられます。
- 痛みは急性疼痛と慢性疼痛、体性痛と内臓痛などに分けられます。
- 痛みの評価は、診断や治療の効果を確認するために用います。
疼痛(痛み)ってなに?
- 「疼痛(痛み)」とは、『実際に組織損傷が起こったとき、組織損傷を起こす可能性が潜在しているときに表現される不快な感覚や情動体験』と定義されています。なにやら難しいですね。
- 疼痛(痛み)とは、簡単にいうと、目に見えるケガやわからないような小さなケガをしたときなどに感じる、「いやな感覚」や「つらい気持ち」のことです。
疼痛(痛み)は、どのように感じるの?
- 疼痛(痛み)の情報は、皮膚などから入って神経の中心部分を構成する脊髄【せきずい】に、さらに脊髄から脳に伝わります。
- 脳のからだの感覚を感じる部分に痛みの情報が届くと、人は初めて「痛い!」と感じるのです。このような急な痛みを「急性疼痛」といいます。
- 人は痛みを感じると避けますよね?例えば、指を刃物で切ってしまった時、「痛い!」と思ってすぐに手を引っ込めますよね。これが正常な人の脳のはたらきです。
疼痛(痛み)は、どうやったらしずまるの?
- 人が疼痛(痛み)を感じたとき、同じ強さの痛みがずっと続くわけではありません。
- 痛みを感じると、人の脳は痛みをおさえる役割をもつ場所に命令を出し、命令を受けた部分は、痛みをやわらげる経路をはたらかせて、からだの中にある痛みをしずめる(鎮痛【ちんつう】)物質を放出します。
- このはたらきがあるから、人は痛みを感じたとき、いつまでも同じ程度の痛みを続かせないでやわらげることができるのです。
長く続く痛み(慢性疼痛)は、急性疼痛とどう違うの?
- ケガや炎症などが治ったはずなのに、痛みが続いている場合を「慢性疼痛」といいます。おおよそ6週間〜3か月以上続く場合をさします。
- 疼痛(痛み)はからだの感覚を感じる部分に届いて痛みとして認識されることを説明しましたが、疼痛の情報は大脳の感情にかかわる部分にも届いてしまうのです。
- この場所に疼痛の刺激が送り続けられると、不安や気分の落ち込みが生じます。ですから、痛みが長く続く病気にかかっている慢性疼痛の患者さんは、不安になったり、痛くなることにおびえたりするのです。
- 慢性疼痛は管理が難しいので、痛みの治療の専門医を受診することをおすすめします。
疼痛にはどんな種類があるの?
- 痛みは、その原因に基づいて、侵害受容性疼痛【しんがいじゅようせいとうつう】、神経障害性疼痛【しんけいしょうがいせいとうつう】、混合性疼痛【こんごうせいとうつう】に分けられます。
侵害受容性疼痛
- からだの組織に傷をおったときや、外から強い力が加わったときに生じる痛みで、からだの「侵害受容器」というセンサーを通して伝わります。
- 一般的なケガや骨折などは、この侵害受容性疼痛です。
神経障害性疼痛
- 傷ついた神経がかかわる部分に生じる痛みや感覚の異常をいい、神経そのものの異常な活動が原因です(いわゆる「神経痛」と思ってください)。
- 「ビリビリするような」、「電気が走るような」、と表現される痛みが生じます。
- 通常ではあまり痛くはない刺激でも「痛い!」と感じてしまうこと(痛覚過敏【つうかくかびん】)、ただ触られただけでも痛くなること(アロディニア)が生じることがあるので、やっかいです。
混合性疼痛
- 侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の両方の原因による痛みです。
おなかの痛みはどのような疼痛に分類されるの?
- 痛みは、発生の時期からは前に挙げた急性疼痛と慢性疼痛に分けられますが、発生する部分によっては「体性痛」と「内臓痛」に分けることができます。
おなかの痛みの分類
- 体性痛:皮膚、筋肉、骨などへの刺激が原因で生じるもので、「ここが痛い!」と痛い場所をさせる、ズキズキする痛みです。
- 内臓痛:内臓の刺激や血流障害で生じ、おなかの痛みのように「ここら辺が痛い!」と痛む場所が決められないのが特徴です。
- 関連痛:痛みの原因となっている場所から離れた部分に痛みを生じることをいいます。心筋梗塞、狭心症、胆石などの病気では、肩が痛くなることがあります。
疼痛(痛み)を検査する方法ってあるの?
- 疼痛は患者さん自身の体験なので、医師などの他人が採血などで評価することはむずかしいです。しかし、患者さんの痛みの質や強さをわからなければ、診断や治療の効果が調べられないので、さまざまな痛みの評価法が編み出されて使用されています。
- 痛みの評価法には、数字や絵などによる評価、言葉を用いた評価、質問紙法による評価などがあります。物差しのようなものを使って評価する方法と言葉による評価は比較的簡単なので、幅広く使われています。
- 神経障害性疼痛の評価には、神経障害性痛スクリーニングツール(簡易調査票)などを使います。
痛みを治すお薬にはどんなものがあるの?
- 侵害受容性疼痛にはアセトアミノフェンや一般的な消炎鎮痛薬以外に、ステロイドやオピオイド鎮痛薬が用いられます。
- 神経障害性疼痛には抗うつ薬や神経障害性疼痛治療薬や、オピオイド鎮痛薬を用います。
追加の情報を手に入れるには?
- 痛みのしくみに関しては下記のホームページを参考にしてください。
- 日本ペインクリニック学会
- htps://www.jspc.gr.jp/
- 認定NPOいたみ医学研究情報センター
- http://www.pain-medres.info/