蛋白尿:蛋白尿って何? 原因は? どんな病気があるの? 必要な検査は?
更新日:2020/11/11
- 腎臓専門医の小林 敬と申します。
- このページに来ていただいた方は、健康診断などで「蛋白尿【たんぱくにょう】がでている」といわれて心配になり、どのようなことなのか知りたいと考えられているかもしれません。
- ここでは、蛋白尿とはどんなものか、どんなことがわかるのか、「蛋白尿だ」といわれたらどうしたらいいのかなど、役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 蛋白尿とは、蛋白質が異常に多くふくまれている尿のことです。
- 蛋白質はからだの重要な成分であり、血液中にも含まれています。
- 尿は腎臓で血液をろ過してつくられますが、血液中の蛋白質が尿の中に多くでることはほとんどありません。
- 尿の中に蛋白がでていることは、なんらかの病気のサインである可能性があります。
どのようにして発見されるの?
- 健康診断や病院での診察などで尿検査を行い、判定されます。
- 尿蛋白(尿の中に含まれる蛋白質)が1日に150 mg以上認められると蛋白尿といいます。
- 試験紙を尿に浸して行う検査では、(−)は陰性(蛋白尿ではない)、(±)は疑陽性(蛋白尿の疑いがある)、(+)が陽性(蛋白尿である)となります。
- 尿が泡立っていることで気づくこともありますが、食事や濃度自体の影響で泡立つこともあるため、尿が泡立つからといって必ずしも尿蛋白がでているわけではありません。
なぜ蛋白尿がでるの?
- 主に腎臓に障害があるときに尿蛋白陽性となります。
尿がつくられるしくみ
- 尿は、血液中の不要な成分を排泄するために腎臓でつくられます。
- 腎臓の糸球体【しきゅうたい】という部分で、血液中の老廃物などをろ過して、原尿【げんにょう】といわれる尿のもとをつくります。
- その原尿から、尿細管や集合管と呼ばれる部分で必要なものを再度吸収して、不要な老廃物や毒素、水分を尿として排泄します。
蛋白尿がでるしくみ
- 腎臓で尿がつくられる過程に障害が起こると蛋白尿がでます。
- 主に糸球体が障害されてうまくろ過することができなくなることによります。
- ろ過するザルの目が壊れて荒くなり、より大きな粒【つぶ】がもれてしまうイメージです。
- 血液中の蛋白が異常に多いときや尿細管などが障害されてでることもあります。
病気ではない蛋白尿ってあるの?
- 病気ではない、生理的蛋白尿といわれるものがあります。
- 激しい運動をした後や、熱がでたとき、からだを後ろに曲げる姿勢をとったときなどにでることもある、一時的なものの多くは病気ではありません。
- 女性の場合は経血が混ざると陽性になることがあるので、月経時の尿検査は避けてください。
- 妊娠中には、一過性に蛋白尿がみられることがあります。
蛋白尿がでる病気にはどんなものがあるの?
- 蛋白尿になる病気には、腎臓そのものの病気と、その他の病気があります。
腎臓そのものの病気
- 糸球体腎炎(急性糸球体腎炎、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、IgA腎症など)
- 糖尿病性腎症
- 膠原病【こうげんびょう】に伴う腎症など
その他の病気
- 多発性骨髄腫【こつずいしゅ】など、血液中に異常な蛋白が増える病気や、尿路の結石や感染症などでも蛋白尿がでます。
- 妊娠中でも尿蛋白が継続したり、高血圧を伴う際は、妊娠高血圧腎症という病気の可能性があります。
- ネフローゼ症候群と呼ばれるような、大量の蛋白尿がつづいて血液中の蛋白質が減少する病気では、むくみなどもあらわれます。
尿蛋白がでているといわれたらどんな検査をするの?
- 一時的な尿蛋白の可能性もあるので、尿の再検査を行います。
- 尿蛋白が持続している場合は、その程度によって専門医へ紹介されます。
- 尿蛋白の原因が明らかでない場合は、前に述べた病気の有無を血液検査、さらに詳しい尿検査、画像検査(レントゲン、超音波、CTなど)で診断します。
- 糸球体腎炎などが疑われたときは、腎臓に針を刺して少量の組織を採取する腎生検という検査を行うこともあります。