脂質代謝異常患者さんの生活指導:食事で気を付けることは?運動は必要?
更新日:2022/05/20
はじめに
- 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門の甲賀裕希子、石橋俊と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が脂質代謝異常かもしれない?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 高コレステロール血症の治療の基本は生活習慣の見直しです。
- 喫煙をしている方は禁煙をし、また吸わない方もほかの人のたばこの煙を避けてください。
- 食事の見直しや適度な運動習慣をつくることも大切です。
- 生活習慣の改善でコレステロールや中性脂肪が下がらないときには先生と相談してお薬を始めます。
高脂血症は、どんな病気?
- 血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)が必要以上に増えるか、または善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減った状態です。
- 血液のなかのコレステロールには食事などから取り込まれて小腸から吸収されるものと、肝臓で作られるものがあります。
- コレステロールは、体の細胞を作る成分として必要なものですが、悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態が長く続くと動脈硬化の原因となります。
- 動脈硬化は血管の壁に油の塊ができることです。その塊によって血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞を引き起こし、命の危険があります。
高脂血症と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 高脂血症はそれだけでは自覚症状はありません。
- そのため定期的に健康診断を受けることがとても重要です。1年に1回は必ず受けるようにしましょう。
- 健康診断で高コレステロール血症があれば、まずは近くの内科の先生に相談してください。
高コレステロール血症になりやすいのはどんな人?原因は?
どんな症状がでるの?
- 高脂血症それだけでは自覚症状はありません。
- だからと言って放置してしまうと動脈硬化が進み、以下のような症状が出る可能性があります。
動脈硬化が進むと出る症状
- 心筋梗塞:左胸や左肩の痛み、胸の違和感などがみられます。
- 脳梗塞:体の片側の麻痺や、ろれつがまわらないなどの症状が出ます。
- 下肢動脈閉塞:足の冷え、歩行時の両足の痛み、足の色が変わるなどの変化が出ます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査で悪玉コレステロール、善玉コレステロール、中性脂肪を測定します。
- 高脂血症の診断としては動脈硬化の度合いを見るために以下の検査を行います。
検査
- 頸動脈エコー:首の動脈を超音波で見ます。
- ABI:足関節と上腕の血圧を比べます。
- PWV(脈波伝播速度):心臓から出て動脈を伝わる脈の速さを見ます。
どんな治療があるの?
- 高脂血症の治療の基本は生活習慣の改善です。
- 喫煙をしている方は禁煙をし、また吸わない方もほかの人のたばこの煙を避けてください。
- 食事の見直しや適度な運動習慣をつくることも大切です。
- 生活習慣の改善でコレステロールや中性脂肪が下がらないときには先生と相談してお薬を始めます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 禁煙、食事療法と運動療法を続けることが大切です。
- 薬が始まった場合には、飲み忘れのないように気を付けましょう。
- 薬を飲み始めてから筋肉痛や赤褐色の尿が出る場合には必ず先生に相談してください。これらは横紋筋融解症という副作用のサインとなります。
- 悪玉コレステロールや中性脂肪の目標値は人により異なります。高血圧や糖尿病など、他の動脈硬化を進行させる原因が複数ある場合には、進行が早まって心筋梗塞などのリスクが高まります。その場合は、悪玉コレステロールや中性脂肪をより低く管理する必要があります。
- くわしいご自身の目標値は先生に確認してください。
予防のためにできることは?
- 繰り返しになりますが食事習慣や運動習慣が重要です。
- 前に述べたように高脂血症だけでは自覚症状はないため、定期的に健康診断を受診し、生活を見直してください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 生活習慣病は「完治」することはありません。
- 食事療法や運動療法だけで良くなったり、薬をやめられたとしても、残念ながらそれは治ったわけではありません。
- そこで治ったと思い、生活習慣が乱れてしまうと、悪玉コレステロールや中性脂肪はまた上がってきてしまいます。
- 食事療法と運動療法は続け、健診や病院の定期受診は必ず続けてください。
もっと知りたい! 脂質代謝異常について
タバコはなぜいけない?
- タバコは動脈硬化を引き起こす要因の一つです。
- 血管の壁を傷つけたり、善玉コレステロールを減少させ動脈硬化をすすめてしまいます。
- 高脂血症がある方は動脈硬化の予防のために禁煙が必須です。
運動はなぜ良いの?
- 肥満の解消に加え、内臓脂肪を減らし、筋肉を増やして脂肪の代謝を良くします。
- もちろん肥満のない方にも効果的です。
- まず1日30分を目標に歩くことがおすすめです。
- 他に、水泳や水中歩行、サイクリング、ラジオ体操など体に負担が少なく、楽にできたり、ややきついと感じる運動が適しています。
食事は何に気を付ければいいの?
- まずは過食を抑えて標準体重を維持してください。
- 標準体重は身長(m)×身長(m)×22(kg)で求められます。肥満がある方は25~30kcal×標準体重が1日の望ましい食事量です。
- 例えば標準体重60kgの人は1500~1600kcalが1日の望ましい食事量です。
- ただし望ましい食事量は人によって違うので、先生や栄養士さんと相談してください。
注意する食材は?
- 野菜、未精製雑穀、海藻、魚類、大豆製品、玄米などを増やし、塩辛い食品を控えてください。
- アルコールも適量にしてください。1日あたり日本酒で1合、ビール中瓶1本程度が目安です。週に2日は休肝日を作るとよいです。
- 悪玉コレステロールの高い方は、卵(魚卵を含む)・肉の脂身・内臓(レバー・もつなど)・乳製品などを避けるとよいです。
- 中性脂肪が高い方は、糖質を多く含む菓子類・糖含有飲料・果物の摂取を控え、アルコールに特に注意しましょう。