胃瘻造設術:どんな治療?どういう時に必要?もう口からは食べられない?
更新日:2020/11/11
- 消化器内科専門医の大久保 秀則と申します。
- このページに来ていただいた方は、ご自身またはご家族、お知り合いの方が胃瘻を提案され、どのような治療か知りたいと考えられているかもしれません。
- 体に栄養を送る方法のひとつである胃瘻造設術について理解するために役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 胃瘻造設術【いろうぞうせつじゅつ】とは、体の外から胃の中に直接栄養剤を流し込むための穴をお腹にあける手術のことです。
- 胃瘻造設術を勧められる人は、飲み込むことができない人、誤嚥性肺炎を繰り返す人、通常の食事ができず、栄養剤治療を長期間(4週間以上)必要とする人、たまったものを外に出す治療が必要な人などです。
- 胃瘻造設術は、多くの病院で広く行われている手術で、確実に栄養を体に与えられるという点でメリットが大きい処置です。しかし、同時にリスクも高い処置なので、担当医とよく話し合い、必要性をよく理解してから行うことが大切です。
胃瘻造設術とは?
- 胃瘻造設術とは、体の外から胃の中に直接栄養剤を流し込むための穴をお腹にあける手術のことです。
- 通常は内視鏡を使った手術ですが、難しい場合は外科手術を行うこともあります。
胃瘻について
- 胃瘻には、2つの働きがあります。1つは、穴に専用のボタンやチューブを付けて、そこから栄養剤を胃の中に流し込むことができます。2つ目は、胃や小腸の病気で食べ物が通らない場合に、たまったものを外に出すこともできます。
- 胃瘻は、胃の内側のストッパーの形で、バルン型とバンパー型に分けられます。また体の表面から出るチューブの長さで、ボタンタイプとチューブタイプに分けられます(図1)。
図表1 胃瘻の4つのタイプ
どういう人がこの治療を受けるべき?
- 以下のような人は、胃瘻造設術を勧められます。
胃瘻造設術を受けるべき方
- 飲み込むことができない方:認知症、脳神経の病気、喉や食道の癌で食べ物がつかえてしまう場合。
- 誤嚥性肺炎を繰り返す方:飲み込みはできるが飲み違えてむせてしまう場合、肺炎を起こす場合
- 通常の食事ができず、栄養剤治療を長期間(4週間以上)必要とする方:クローン病など
- たまったものを外に出す治療が必要な方
- 胃瘻造設術の同意は、患者さんご本人に行います。なお、患者さんに判断力がない場合は、過去に本人の意思表示があったかどうか、この確認ができない場合は親族の判断にゆだねられます。
コラム:胃瘻造設術が禁忌になる方
- 補えないほどの出血傾向がある人
- 大量の腹水(お腹に水がたまっている)がある人
- 胃に大きな病気がある人
- 過去に胃を切り取る手術を受け、残された胃が小さい人
- 妊娠中の人
- 腹膜透析を行っている人
- もともとの病気で全身の状態が悪い人(胃瘻造設術に耐えられない人)
- 予後が悪い人(一般的に余命が1か月未満の人)
- 理解・同意の得られない人
理解しておきたい リスクと合併症
- もともと全身の具合の悪い人が受ける手術ですので、胃瘻造設術は高いリスクを伴います。
- 合併症として、出血、傷口の感染、他の臓器(肝臓や大腸)を傷つけてしまう、腹膜炎、内視鏡による誤嚥性肺炎、深部静脈血栓症や肺塞栓などがあります。また手術後には、胃瘻の周りの炎症、チューブトラブル(抜けてしまう、自分で抜いてしまうなど)があります。
- 内視鏡ガイドラインによると、合併症の発生率は約6%、死亡率は1%と報告されています。
治療後について
- 治療後は、胃瘻を定期的に交換することが必要です。通常、バルン型は1-2カ月に1回程度、バンパー型は6か月に1回程度になります。
- また、目詰まりを起こしてしまった場合も適宜交換が必要です。目詰まりを起こさないようにするために、栄養剤を入れた後に少量のぬるま湯を入れて中をすすぐとよいです。
- また、チューブやボタンが抜けてしまった場合、放置しておくと胃瘻の穴はすぐに塞がってしまいます。すぐに病院を受診してください。
治療を受けるにあたって
- 胃瘻造設術は、多くの病院で広く行われている手術で、確実に栄養を体に与えられるという点でメリットが大きい処置です。
- しかし、同時にリスクも高い処置なので、担当医とよく話し合い、必要性をよくご理解いただくことが大切です。