神経伝導検査:どんな検査?検査を受けるべき人は?検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2022/05/20
- 日本臨床神経生理学会専門医指導医の坂本 崇と申します。
- こちらをご覧になっている方はご本人やご家族友人が神経伝導検査をすることになったのでしょうか、神経の問題・その検査というといろいろご心配が出てきますね。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は理解していただきたいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 神経伝導検査とは、末梢神経に電気刺激を加え、その反応を見ることで、神経の機能を評価する検査です。
- 糖尿病を代表とする末梢神経障害の検査に不可欠です。
- 電気刺激による一時的な痛み・不快感がありますが、体への影響は全くありません。
どんな検査?
- 神経伝導検査は、手足の神経に電気刺激を与え、それに対する反応から、神経の伝わり方を見るものです。
- この検査によって、その神経にどんな問題があるかを検出します。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 神経伝導検査は、主に末梢神経に異常がないかをみる検査です。したがって、末梢神経障害が疑われたときには必須となります。
- 末梢神経障害の症状としては手足のしびれ・痛み、筋力低下があります。原因としては糖尿病やアルコールの影響などが代表的です。物理的に圧迫されて神経がダメージを受け、手足が上がらなくなってしまったり、しびれが強くなる単神経障害もあります。手関節の付け根にある手根管で正中神経が圧迫される手根管症候群や膝のところで腓骨神経が圧迫されて足首をそらすことができなくなる下垂足、また顔面神経麻痺(特に原因ははっきりしない場合が多いです)などでも見られます。
実際には、どんなことをするの?
- 運動神経の検査では、それぞれの神経の支配している筋肉に電極を置いて、神経を何箇所かで刺激します。刺激に対する反応が電極から波形として検出されます。その波形の大きさ・形をみることで神経の機能を評価します。
- 感覚神経では実際に神経の走行に沿って電極を配置し、神経の伝導の様子を評価します。
- 中枢に向かって刺激を発し、その反応を末梢で拾うことで、その神経全体の経路を評価します(F波)。
- 特定の神経を繰り返し刺激することで、神経情報が筋肉に伝わる部分の状態を評価することができます(反復刺激検査)。電気刺激を与えるため、ペースメーカーや除細動器を埋め込んでいる方には施行できません。
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 習熟した検査者が行うと、一つの神経の検査にかかる時間は五分以内です。
- 神経に異常があるときは刺激に対する反応自体が微妙となり、その微妙な反応を慎重に判断する必要があることから、多少繰り返して再現性を見たり、別の方法で刺激したりと検査を追加するため、時間がかかることはよくあります。
- 神経に与える電気刺激によってびりっとした不快感が生じます。検査者はこの不快感を最小限にとどめるよう努力しますが、検査のシステム上どうしても避けることができません。この点はご理解いただきたいと思います。
他にどのような検査法があるの?
- 神経伝達検査の他に、中枢神経はMRIやCT画像でみることができます。末梢神経も根元のほうに行くとMRIやCTなどで見ることができますが、先の方では、異常に腫れていない限り、なかなかよくわかりません。
- 最近、超音波検査で末梢神経を評価しようという研究が進められています。超音波検査は体に当てるだけですぐに画像としてみることができることから、神経伝導検査の痛みや画像検査の被曝の問題なく、安全かつ簡便に行うことができるようになります。神経超音波検査の普及には検査者の増加・習熟が求められていますが、大いに期待したいところです。
理解しておきたい リスクと合併症
- 電気刺激の不快感はありますが、人体に影響の起こりうるような刺激ではなく、きわめて安全な検査です。
検査後の注意は?
- 特にこれといって注意することはありません。顔面の検査を行うときに、女性の方ではお化粧が落ちるので直していただく必要がある場合がございます。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- 神経伝達検査での電気刺激が人体に与える影響はほぼありません。
- まれに、刺激による痛み・不快感が残ったように感じる方がいらっしゃいますが、もともとの神経の異常によるものと考えられます。その場合には、神経の異常の治療を進めていきますので主治医にお伝えください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 専門家向けですが、実際の波形等のサンプルが日本臨床神経生理学会のホームページに載っています。
- http://jscn.umin.ac.jp/specialist/sample.html