食道静脈瘤に対する内視鏡的治療法:どんな治療?どんな時に必要なの?
更新日:2020/11/11
- 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本門脈圧亢進症学会技術認定取得医の中村 真一と申します。
- このページに来ていただいた方は、内視鏡検査などで食道静脈瘤を指摘されたり、治療を勧められて心配になっている方と思います。
- かつて、食道静脈瘤は怖い病気でしたが、今は胸やお腹を切ったりせず、内視鏡で治療できる時代になっています。
- 病院で「内視鏡治療を受ける患者さんに説明している」ことをわかりやすく記載させていただいています。
目次
まとめ
- 食道静脈瘤の治療は、ほとんどの場合、内視鏡を使います。血をかたまらせる薬を使う方法と、膨らんだ血管をゴムでしばる方法があります。
- 治療後は、胸の痛み、つかえ感、熱が出るなどの症状が出ることがあります。
- 食道静脈瘤はくり返すことが多いため、半年~1年に1回は内視鏡の検査を受けてください。
どんな治療?
- 内視鏡を使った治療がほとんどで、2種類あります。
- 内視鏡的硬化療法:内視鏡の先から出した針で硬化剤というお薬を膨らんだ血管に注入します。硬化剤は膨らんだ血管に流れる血液をかたまらせ、血流をとめるお薬です。
- 内視鏡的静脈瘤結紮術:膨らんだ血管にゴムをかけて、血流をとめ、膨らみをなくします。
この治療の目的は?
- 膨らんだ血管が破れ出血する危険がある場合や、血管が破れてしまい止血したいときに行われる治療です。
どういう人がこの治療を受けるべき?
- 内視鏡検査で食道静脈瘤が見つかった患者さんのうち、血管が破れる危険がある方が受ける治療です。
- 血をはいたり、黒い便が出たりしている場合は、すでに膨らんだ血管が破れていると考えられますので、すぐに入院し治療する必要があります。
実際には、どんなことをするの?
- 治療は原則入院して行います。膨らみの大きさや場所、数などにもよりますが、週1回のペースで2,3回治療します。
内視鏡的硬化療法
- 食道静脈瘤に針をさし、硬化剤というお薬を入れます。
- 硬化剤というお薬を入れると、血管の中の血液がかたまり、血流がなくなります。かたまった静脈瘤は次第に消えていきます。
- 1回20分程度かかります。
内視鏡的静脈瘤結紮術
- 膨らんだ部分を持ち上げ、ゴムバンドでしばります。しばった部分には血液が流れなくなるので、静脈瘤は小さくなります。
- しばった部分は1,2週間ほどでポロっと取れます。
- 1回10分程度かかります。
他にどのような治療があるの?
内視鏡を使った治療
- 食道の壁を焼いて固める方法があります。静脈瘤ができやすい部分を焼きます。
- 再び膨らんでこないようにするには有効な治療です。
カテーテルという細い管を使った治療
- 血管にカテーテルという細い管を入れ、膨らんだ血管に血が行かないように、スポンジやコイルで詰め物をする治療です。
- 患者さんにとって負担が大きく、現在は一部の方に行われます。
手術
- 食道の下の方を切断する食道離断術や、食道・胃のまわりの血管を取り除く血行郭清術などがあります。
- 現在では、内視鏡やカテーテルで治療できない場合に行われます。
治療を受けるにあたって
- 検査当日は朝から絶食です。お水は少量なら飲んでも問題ありません。
- 治療後はベッドで安静に過ごしていただきます。痛みなどがあればお薬を使います。
- 治療から6時間たてば、お水を飲むことができます。
- 治療翌日、合併症がないことを確かめた後、流動食を始めます。
理解しておきたい リスクと合併症
- 多少の胸の痛み、ものがつかえる感じが出ます。熱が出ることもあります。
- 治療したところから出血する、食道の壁に孔があく、食道やまわりに炎症を起こすことがあります。
- 硬化剤を使う治療では、硬化剤が腎臓を悪くしてしまうことがあります。
- まれに、数週間後に、治療による刺激で食道が狭くなってしまうことがあります。
治療後について
- 治療をすると食道静脈瘤はなくなりますが、もともとの原因(多くは肝臓の病気が原因で静脈瘤ができます)は治っていません。再び血管が膨らんできて、もう一度治療を受ける必要がでてくることがあります。
- 半年~1年に1回は内視鏡で静脈瘤ができていないか確認してもらってください。
- 血をはいたり、黒い便が出たり、めまいやふらつくなどの症状が出た場合は、すぐに病院を受診してください。
よくあるご質問
硬化療法と静脈瘤結紮術では、どちらがよいですか?効果は?
- 硬化療法のほうが、再び膨らんでくることは少ないといわれています。しかし、治療の回数、安全性を考えると、ほぼ同じだと思います。
食道静脈瘤は自然によくなる(なくなる)ことはないのですか?
- 残念ながら、まずありません。
食道静脈瘤は1回治療すれば、治りますか?
- 食道静脈瘤は何度でもなりやすい病気です。治療を受けた後も、定期的に状態を確認することが必要です。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 食道静脈瘤治療専門のガイドラインはありませんが、肝硬変診療ガイドライン2015 改訂第2版(日本消化器病学会編、南江堂)が参考になります。
- 医師や専門家向けですが、厚生労働省の班会議から、「門脈血行異常症ガイドライン2018改訂版」が発表されています。