腹腔穿刺:なんのために行うの? どんなときに必要? どのようにするの? 痛みはあるの? 安全性は?
更新日:2020/11/11
- 肝臓専門医の米田 政志と申します。
- このページに来ていただいた方は、「おなかに水がたまっているから腹腔穿刺を行います」といわれて不安になり、心配されてどのような処置なのか知りたいと考えられているかもしれません。
- ここでは、腹腔穿刺はどのような処置か、何がわかるのか、どのようなことをするのかなどを理解するうえで役に立つ情報をまとめました。
まとめ
- 腹腔穿刺【ふくくうせんし】は、腹水がたまってしまった状態のときにその原因を調べる、腹水で苦しいときに症状をやわらげる、腹水の原因となっている病気を治療するために行います。
- 超音波検査で、腹水があり、かつ安全な場所を確認して注射針を刺します。
- おなかに針を刺すときにはその部分にあらかじめ局所麻酔をかけますので、痛みはほとんど感じません。
腹腔穿刺って何?
- 腹腔【ふくくう】とは、おなかの中で胃や腸、肝臓、膵臓、腎臓といったおなかの臓器(腹腔臓器)が入っている空間をさします。
- 腹腔には健康な人でもごく少量(50 mL程度)の水がたまっていますが、なんらかの病気になって大量の水がたまってしまう状態を「腹水」と呼んでいます。
- 腹腔穿刺【ふくくうせんし】は、腹水がたまってしまった状態のときにその原因を調べるため、腹水で苦しいときに症状をやわらげるため、さらには腹水の原因となっている病気を治療するために行います。
腹腔穿刺はどんなときに受けるの?
- 腹腔穿刺を必要とする病気はおなかに水がたまる病気ですが、それは次のようなときに起こります。
おなかに水がたまる病気が起こる原因
- 腹腔内に炎症がある
- 肝硬変症などで門脈という血管の圧力が増している
- なんらかの原因で栄養状態が低下している
- 癌がおなかの中の腹膜というところに広がって(転移あるいは浸潤【しんじゅん】して)しまった
- 心不全、甲状腺機能低下症、ネフローゼなどの腎臓病、膠原病や結核などにかかっている
- 腹腔穿刺は、おなかの中に癌が広がってしまっているとき、抗癌剤を直接注入するためにも行うこともあります。
- 何のために腹腔穿刺を行うのかは、担当のお医者さんに確認してください。
実際には、どんなことをするの?
- 腹腔穿刺は、実際に大量に腹水がたまっている場所に注射針の長いものを刺して行います。
- 以前は、おなかを指先などで叩いてみて(打診【だしん】といいます)、腹水が大量にたまっていて、おなかの中の臓器に間違って刺さない場所を選んで注射針を刺していました。
- 医学が進歩した現在では、超音波検査で、腹水があり、かつ安全な場所を確認して注射針を刺します(図表1)。
図表1 超音波で確認しながら行う腹腔穿刺
腹水があり、かつ安全な場所を確認して注射針を刺します。
検査にかかる時間は? 痛みはある?
- 腹腔穿刺を行う目的を、次にまとめました。
腹腔穿刺を行う目的
- 腹水の原因を突き止めるため
- 腹水が大量にたまって苦しい場合の症状をやわらげる
- 腹水がたまった原因となっている病気の治療
- 検査のために腹腔穿刺を行うときは、注射針を一時的に刺すだけですみます。
- 腹水の症状をやわらげるためや治療のために行うときは、注射針よりも太いチューブを留置することがあります。
- どちらの場合でもおなかに針を刺すときには痛みがありますが、針を刺す部分にあらかじめ局所麻酔をしますので、それほど痛みを感じることはありません。
- ときどき局所麻酔にアレルギーのある人がいますので、患者さんはアレルギーに関する問診を受けます。
- 局所麻酔は歯医者で歯を抜くときなどに使用しますので、歯を抜く際の麻酔で具合の悪くなったことのある人はお医者さんや看護師さんに伝えてください。
- 腹水が大量にたまっていて、症状をやわらげるために腹水を抜くときには、あまり急激に大量の腹水を抜いてしまうと血圧が下がるなどの合併症が起こることがありますので、無理のないペースで血圧を測りながらゆっくりを腹水を抜いていきます。
- 腹水を抜いているときに異変を感じたらお医者さんや看護師さんに遠慮なく伝えてください。