注腸造影:何がわかるの?どんな時に必要?痛みや苦痛はないの?
更新日:2020/11/11
- 消化器内科専門医の河口剛一郎、磯本一と申します。
- このページに来ていただいた方は、大腸に病気があるか、またはその疑いがあり、どのような検査があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
- 代表的な検査方法である注腸造影検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 注腸造影とは、「バリウム」というレントゲンに写る液(造影剤)をおしり(肛門)から大腸の中に入れて、その写り方を見て、大腸の病気を調べる検査です。
- 検査中体の向きをあちこち変えながらレントゲン写真を撮ります。
- 精密さは大腸内視鏡には劣りますが、苦痛が少なく、内視鏡検査を行えない方にも使えます。
- 検査自体は安全で殆どリスクがないとされていますが、ひどい腸炎や事故のリスクもあることがあります。
どんな検査?
- 注腸造影検査とは、「バリウム」というレントゲンに写る液(造影剤)を肛門から大腸の中に入れて、その写り方を見て、大腸の病気を調べる検査です。
- 大腸を詳しく調べるには、現在は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を使います。しかし、注腸造影は代替検査として、内視鏡を使えない方に行われることが殆どになっています。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 以下のような方は、注腸造影検査を受けてください。
注腸造影を受けるべき人
- 大腸内視鏡検査が出来ない患者さん(例えば癒着や病変などでカメラが奥まで入らない方や小児の患者さん)
- 大腸がん検診で便潜血陽性(便に血が混ざっている)になった患者さんの一部
- 腸に腫瘍や炎症のある患者さんの一部
- 大腸腫瘍などの外科手術の前の患者さん
実際には、どんなことをするの?
- 検査の流れは以下の通りです。
検査前(前日)
- 胃腸に負担をかけない食事をとる
- 大腸検査食、エニマクリン食などを食べ、便が大腸に残りにくくします。
- 検査用の下剤(腸の中の物を出してきれいにするお薬)を飲む
- 普段から便秘気味の方は不十分なので、検査の数日前から下剤を飲んでもらいます。主治医に申し出てください
検査前(当日)
- 肛門からお薬(座薬)を入れ、便を促します
- 検査直前に胃腸の動きを止める注射をする事もあります
- このお薬は、緑内障(眼の病気)、前立腺肥大症、心臓の病気や不整脈のある方には使用できません。そのような病気をお持ちの方は申し出てください。
検査中
- バリウムと一緒に空気(あるいは炭酸ガス)を大腸の中に注入し腸を膨らませ、バリウムを消化管の壁に付け、凹凸を見る
- 体を起こしたり寝かしたり、さらに体の向きをあちこち変えることで、大腸にまんべんなくバリウムを行き渡らせる
- 大腸がしぼんでしまわないように、おならを我慢してもらう
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 検査にかかる時間は10分~20分程度です。
- 痛みは通常はありませんが、おなかが張って「おなら」の我慢が大変な方もいます。
他にどのような検査法があるの?
- 他の検査は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)があります。また、注腸造影検査で異常があった場合にも、大腸カメラで詳しく調べる必要があります。
理解しておきたいリスクと合併症
- 注腸造影のリスクや合併症は以下の通りです。
注腸造影のリスク・合併症
- 閉塞性腸炎
検査の前に十分な便のコントロールをしておかないと、飲んだ下剤で閉塞性腸炎というひどい腸炎になることがあります。特に癌や炎症などで、大腸に狭いところがある場合、注意が必要です。
検査後の注意は?
- 注意点は以下の通りです。
注意点
- 検査後はおなかが張って苦しくなることがあります。
- 検査中や直後に、気分が悪くなったり、倒れたりすることがあります。検査前に注射した腸の動きを和らげる薬の効果でそれほどでもなかった方が、その薬の効き目が切れてなります。
- 検査後は脱水や大腸内でバリウムが固まることがあります。しっかり水分を取ってください。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- 以下のような症状があったら、病院にご連絡ください。
病院へ連絡するべき症状
- おなかの張りが強く、気分が悪い
- 強い腹痛があり治まらない
もっと知りたい! 注腸造影のこと
なぜ腸に炎症がある患者さんの一部は注腸造影を受けるべきなの?
- 大腸に炎症のある患者さんでは、特に症状がひどい時は大腸内視鏡は出来ないこともあるからです。
- 炎症による腸管の腫れ、腫れによって腸管がどのくらい狭窄しているか、病気の部分の範囲などを見るために行います。また、長く腸管に炎症のある患者さんでは、瘻孔(ろうこう)(腸管に穴が空き周囲の臓器とつながってしまう状態)を評価するためにも行われます。
なぜ大腸腫瘍などの外科手術の前の患者さんは注腸造影を受けるべきなの?
- 外科手術の際には、病気がどのくらい広がっているのかを見ることが大切で、ある程度内視鏡で分かっていても造影検査が行われます。
- 大腸内視鏡検査は腸管の中から評価しますが、注腸造影検査では大腸の外から、大腸全体と病気の場所の位置関係を見る形になります。さらに、周りの臓器や骨などとの位置関係も見ることが出来ます。
レントゲン(X線)による影響は大丈夫?
- 通常、1年間に何度も繰り返して行われる検査ではありませんので、一般の患者さんでは全く問題有りません。
- ただ、妊婦さんや妊娠の可能性がある方は、この検査は出来ません。医師に申し出てください。
- また、一般的に妊娠可能な女性にこの検査を行うタイミングとしては、月経(生理)が来てから10日間以内が良いとされています(10 days rule)。これは、レントゲン検査後に妊娠しても赤ちゃんにほとんど影響がないのがこの期間であるとの報告があるからです。ただし、病状によっては必ずしもこだわることなく、必要な検査を受けて頂く必要があります。気になる方は主治医に良く相談して下さい