親知らずの歯の除去:どんな治療があるの?どんな時に必要なの?費用は?
更新日:2020/11/11
- 東京医科大学病院 口腔外科専門医の近津 大地と申します。
- このページに来ていただいた方は、親知らずについてのお悩みがあり、将来親知らずの歯を抜く手術について考えておられるかもしれません。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
まとめ
- 親知らずとは、第三大臼歯が正式な名称で、智歯とも呼ばれています。
- 最近はあごが小さい人が多く、親知らずがななめに生えて歯並びが悪くなったり、むし歯になりやすいこともあり、手術で抜くことが多くなっています。
- 親知らずの抜歯はよく行われている手術で、併発症が起こることはまれですが、異常な出血が起こることがあります。
親知らずの歯とは?
- 親知らずの正式な名称は第三大臼歯といい、智歯【ちし】とも呼ばれています。
- 親知らずが生えてくる時期はおおむね10歳代後半から20歳代前半で、「親に知られることもなく生えてくる歯」であることが、その名前の由来だと言われています。
どんな治療?
- 歯の除去(抜歯)は、口腔外科でよく行われている歯を抜くための手術です。抜歯は手術の方法により、普通抜歯【ふつうばっし】(単純抜歯ともいいます)と難抜歯【なんばっし】(複雑抜歯ともいいます)に分けられます。
- 普通抜歯は、抜歯鉗子やエレベーター(挺子)という器具を使って歯を抜く方法です。
- 難抜歯は、歯肉を切ったり、歯を支えている歯槽骨を削ったり、歯を割ったりする処置が必要な方法です。
- 親知らずが斜めに生えていたり、歯肉の中に埋もれていたりする場合は難抜歯となります。通常、数十分から1時間くらいかかることもあります。
- 抜歯した後はうがいで洗浄し、抗菌薬や痛み止めを飲んでいただきます。3〜5日間程度でよくなります。
親知らずの歯は抜かないといけないの?
- 親知らずの歯が他の歯と同じようにまっすぐ正常に生えていて、丁寧に歯磨きできていれば、必ずしも抜く必要はありません。
- ただ、現代人のあごは小さくなってきており、親知らずの歯が生えるスペースが狭くなったので、特に下あごの親知らずはななめに生えたり、一部埋まったままになることも多いです。その場合は、むし歯になりやすかったり、歯並びが悪くなったりしますので、抜歯することを検討してください。
コラム:親知らずの影響
- 埋伏した親知らずの歯の周囲の歯肉は歯周ポケット(盲嚢)という深いスペースがあり、プラーク(歯垢)や細菌が中に溜まりやすく、智歯周囲炎を引き起こしやすいと考えられています。
- また、清掃不良により親知らずの前の歯(第二大臼歯)に虫歯ができやすくなります。
- さらには、埋伏智歯がもたらす弊害として、歯列不正や神経痛様症状、袋状の病変(嚢胞)や歯原性腫瘍の発生があげられます。
歯医者さんに行ったら、どんな検査があるの?
- 親知らずを観察して、歯肉に埋もれている様子などを触って確認します。
- 歯のレントゲン検査を行い、歯の傾きや位置、深さを確認します。
- あごのCT検査をして、周りの歯や骨の様子、骨の中の神経や血管の位置関係、ほかにむし歯などがないかを調べます。
歯を除去する手術の危険性は?
- 抜歯は最も一般的に行われている外科処置であり、手術などがもとになって起こることがある症状(併発症といいます)はまれです。
- ただ、次のような併発症が起こる可能性があります。
異常な出血
- 抜歯後は、ガーゼを約20分間強くかんでいただき、傷口を圧迫することで止血します。
- もし、1時間以上血が止まらない場合には、血をとめるお薬をつかって傷口を縫い合わせたり、傷口を固定したりします。
ドライソケット
- うがいを何度も強く行った場合や、歯を抜いた傷あとに炎症が続いていた場合は、血の塊でできたかさぶた(血餅【けっぺい】といいます)が取れてしまう「ドライソケット」という状態になり、鈍い痛みが続いてしまうこともあります。
神経麻痺
- 埋もれていた親知らずを抜いた場合、近接する顎(下歯槽)や舌の神経が麻痺してしまうことがあります。
- 発症してしまった場合は、短期的にはステロイドの投与、長期的には抗神経炎薬・ATP製剤などの投与による治療を行います。