百日咳:症状は?人にうつるの?大人もかかるの?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 小児科専門医の岡田 賢司と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が百日咳になってしまった?」あるいは「赤ちゃんが百日咳にかかったかもしれない」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 「百日咳」とは、百日咳菌という菌が原因で特徴的な咳の症状が出る感染症です。
- 小児でかかりやすいですが、ワクチンをしていない赤ちゃんは重症化して、ときに亡くなることもある病気です。
- 赤ちゃんの周囲にいる人の咳からうつることが多いため、人の咳に気を付けましょう。
- 百日咳に特有な咳が出始めたら、早めに医療機関を受診して、このような咳があること、周囲に赤ちゃんがいることを伝えてください。
- ワクチンで予防できる病気の一つです。
百日咳は、どんな病気?
- 百日咳菌と呼ばれる菌の感染症で、特徴な咳が出ます。
- 最初は軽い咳ですが、次第に特徴的な4つの咳が出始めます。
特徴的な症状
- 急に“コン、コン、コン”と連続して咳込んで、咳込みが止まりません。
- 咳込んだ後に、苦しくなり、息を吸うときに“ヒュー”と音が聞こえる咳。
- 咳込んだ後に、吐くこともある。
- 赤ちゃんでは、咳をする前に、いきなり呼吸をしなくなることがあります。
- ワクチンで防げる病気の一つです。
- ワクチンとは予防接種で使われる薬液のことで、百日咳を防ぐためのワクチンは、百日咳含有ワクチンとしています。ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの四種混合ワクチン(DTaP-IPV)やジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)があります。
百日咳と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- 大人・子ども・百日咳のワクチンを接種した赤ちゃん:百日咳に特徴的な咳が出始めた場合
- 大人:特に、百日咳を予防するワクチンを接種していない赤ちゃんが家族内にいて、周囲にいる兄弟・姉妹、ご両親、祖父母が百日咳に特徴的な咳が出始めた場合
救急車を呼ぶ場合
- 百日咳のワクチンを接種していない赤ちゃん:急に息をしなくなったり、元気がなく唇の色が悪くなったりした場合
百日咳になりやすいのはどんな人?原因は?
- 百日咳ワクチンをしていない赤ちゃんは、かかるとひどくなりやすいので、最も注意が必要です。
- 小さい頃ワクチンを接種していても、 ワクチンの効果がなくなってきた小中学生もかかりやすくなっています。
- 百日咳にかかった子どもを看病するご両親、祖父母もかかりやすいです。
- 百日咳の患者さんと接触する機会の多い医師や看護師さんもかかりやすいです。
どんな症状がでるの?
- 最初は軽い咳ですが、急に“コン、コン、コン”と続けて咳込んで、咳込みが止まりません。
- 続けて咳込んだ後に、苦しくなり、息を吸うときに“ヒュー”と音が聞こえることがあります。
- 咳込んだ後に、吐くこともあります。
- 赤ちゃんでは、いきなり呼吸をしなくなることがあります。
- 大人では、2週間以上続く長引く咳のこともあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 鼻の奥に菌がいるかどうかを見る検査と血液検査です。健康保険でできます。
どんな治療があるの?
- 鼻の奥に菌がいると診断された場合は、百日咳菌に有効な抗菌薬を処方します。処方された抗菌薬をきちんと飲めば、周囲の方へ、うつすことはなくなりますので、残すことなく忘れずに飲んでください。
ご理解いただきたいこと
- 抗菌薬をきちんと飲んでも、咳はすぐには治まりません。抗菌薬は、百日咳菌を減らすことはできますが、咳を止める薬ではないことをご理解ください。
- 市販の咳止めや医師から処方された咳止めの薬を飲んでも、なかなか咳が治まらないのが、百日咳の特徴です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 百日咳と診断された場合は、抗菌薬を飲み始めて5日間、あるいは特有な咳が治るまで、学校などを休む必要があると法律で定められています。
- 抗菌薬をきちんと飲んでも、咳はすぐには治まりません。抗菌薬は、百日咳菌を減らすことはできますが、咳を止める薬ではないことをご理解ください 。
抗菌薬治療の場合
- 処方された抗菌薬は、決められた量を決められた期間、忘れずに飲み切ってください。途中で止めてしまうと、抗菌薬が効かない菌(耐性菌)が増えることになり、その後の治療がとても大変になります。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 百日咳はとても人にうつりやすい病気のため、他の人に、うつさないように注意をする必要があります。特に、まだワクチンを接種していない赤ちゃんがいるときは、うつさないように、マスクをして、手洗いに心がけることが大切です。
- 咳をする際には手やティッシュなどで口を覆いましょう。その後、使用したティッシュなどはできる限り早く、ごみ箱に捨てた後、必ず手を洗うことをお勧めします。
ワクチンで予防する
- 赤ちゃんは、生後3か月になれば早めに百日咳含有ワクチン接種を始めましょう。
- 赤ちゃんが生まれる前の準備として、周囲にいる家族(兄弟姉妹や両親、祖父母)には、できれば、追加の百日咳含有ワクチン接種をお考えください。ただし、任意接種で有料となります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 咳がひどくても、百日咳なら治ります。先にも述べましたが、抗菌薬をきちんと飲み切ってください。
- ただし、咳はすぐには治まりません。抗菌薬で、周りの人にはうつしにくくなりますが、咳を止める薬ではないことをご理解ください。
- 肺炎や百日咳脳症などを合併することがあり、入院が必要となることがあります。特に急に息が止まり、なかなか回復しないことがある場合は早めにかかりつけを受診しましょう。
追加の情報を手に入れるには?
- 百日咳に関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 国立感染症研究所のサイト
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/pertussis.html
- 日本小児科学会のサイト(日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 標準的接種期間 ・ 日本小児科学会の考え方・注意事項)
- http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf