ビタミンB12または葉酸欠乏性貧血
更新日:2020/11/11
- 血液内科の大西 康と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がビタミンB12または葉酸欠乏性貧血になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- ビタミンB12と葉酸は細胞の核にあるDNAをつくるために必要な栄養素です。
- ビタミンB12と葉酸は体内で作ることができないため、外から食事として摂る必要があります。
- 毎日、十分な量の血液細胞をつくるためには多くのDNAを必要としますので、ビタミンB12や葉酸が不足すると十分なDNAをつくれずに貧血(体内で酸素を運ぶ赤血球が少ない状態)をきたします。
- 症状は、息切れ、動悸、めまい、足のむくみなどがあります。
- 治療は不足しているビタミンB12や葉酸を補充することです。
ビタミンB12または葉酸欠乏性貧血は、どんな病気?
- ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血とは、ビタミンB12や葉酸が不足することで、血液細胞の核にあるDNAが十分に作れず、貧血をきたす病気です。
- ビタミンB12や葉酸は体内で作ることができず、外から食事として摂る必要があります。
- ビタミンB12や葉酸が欠乏する原因として、摂取する量が少ない、または摂取しても正常に吸収できていないことが考えられます。
ビタミンB12または葉酸欠乏性貧血と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 以下のような症状があれば、お近くの医療機関にご相談ください。
病院へ行くべき場合
- 疲れやすさ
- 息切れ
- 動悸(胸がドキドキする)
- 脱力感
- しびれ
受診前によくなるために自分でできることは?
- ビタミンB12を多く含む肉や乳製品が不足しているときは積極的に摂るようにしてください。
- 葉酸を多く含む生野菜や果物が不足しているときは積極的に摂るようにしてください。
- ビタミンB12や葉酸のサプリメントも効果的です。
ビタミンB12または葉酸欠乏性貧血になりやすいのはどんな人?原因は?
- 以下のような方は、ビタミンB12または葉酸欠乏症貧血になりやすいです。
ビタミンB12欠乏性貧血になりやすい方
- 60歳以上の方
- ビタミンB12を含む肉や乳製品を食べない方
- 胃の手術後の方
- 腸の慢性的な病気をお持ちの方
葉酸欠乏性貧血になりやすい方
- 慢性アルコール中毒の方
- 抗痙攣薬・経口避妊薬・代謝拮抗薬を飲んでいる方
- 妊娠されている方
- 癌をお持ちの方
どんな症状がでるの?
- それぞれ以下のような症状が見られます。
ビタミンB12欠乏性貧血と葉酸欠乏性貧血で共通の症状
- 疲れやすさ
- 息切れ
- 動悸(胸がドキドキする)
- 頭痛
- めまい
- 足のむくみ
- 舌の味覚障害やヒリヒリ感
- 顔があおじろい、または黄色い(黄疸)
ビタミンB12欠乏性貧血に特有の症状
- 手足の軽い脱力
- 手足のしびれ
- 感情の不安定さ、落ち込み
- 物忘れ
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査で貧血の程度やビタミンB12や葉酸の欠乏の有無を判断します。
- 血液検査でビタミンB12の値が低かった場合、胃炎や胃がんが原因のことがあるため、胃カメラ(内視鏡)の検査が必要になることもあります。
- 手足の脱力やしびれなどの神経症状がある場合は、神経内科の診察やMRIなどの画像検査を行うこともあります。
どんな治療があるの?
- ビタミンB12欠乏性貧血では、比較的状態が安定しており、神経症状がない場合は、ビタミンB12の内服薬を飲んでいただきます。
- ビタミンB12欠乏性貧血の中でも、悪性貧血と呼ばれるビタミンB12の吸収障害が原因の貧血の場合は、ビタミンB12の筋肉注射を行うことがほとんどです。最初の一周間は毎日注射を行い、その後頻度を減らしていきますが、原則として生涯継続する必要があります。詳しい注射スケジュールは主治医の先生とご相談ください。
- 葉酸欠乏性貧血では、葉酸の内服薬を飲んでいただきます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?食事や生活で気をつけることは?治療の副作用は?
- お薬の副作用はほとんどありません。
- お薬を飲み始めて症状が改善しても、自己中断せず通院を継続してください。
予防のためにできることは?
- ビタミンB12や葉酸を多く含む食事を心がけることが基本となります。
- 胃の手術を受けた方は主治医の先生にビタミンB12の筋肉注射が必要かどうか相談してください。
- 胃やその他の検査でピロリ菌が陽性と判明した場合は除菌療法で胃の病気を予防できるため、結果的にビタミンB12欠乏を予防することにつながります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 不足しているビタミンB12や葉酸を補充することで、ほとんどの方は治ります。
- 補充開始から1週間程度で症状が軽くなり、2か月程度で血液検査でも改善がみられます。
- 神経症状は半年から1年かけて改善しますが、症状が残ってしまう方もいらっしゃいます。
追加の情報を手に入れるには?
- 東京都病院経営本部ホームページ>食事療法のすすめ方 貧血の食事
- http://www.byouin.metro.tokyo.jp/eiyou/hinketsu.html
- 「総合医療」情報発信サイト ビタミンB1
- http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/07.html