前庭神経炎:どんな病気?入院が必要なの?治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- めまい専門医の堀井 新と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとめまいがあり、「前庭神経炎」と診断され、不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 前庭神経炎とはぐるぐる回るめまいが起こり、その後にふらつきが続く病気です。
- 耳の器官からくるめまいであり、聞こえは悪くなりません。
- 脳からくるめまいのように、命にかかわる病気ではありません。
- 急性期は安静や薬剤の投与、その後は運動によるリハビリが必要です。
- 3か月以上たってもふらつきが続くときは、専門医を受診しましょう。
前庭神経炎は、どんな病気?
- 前庭神経炎とは急にぐるぐる回る大きなめまいが起こり、その後ふらつきが出る病気です。
- 風邪の後に起こることが多く、ウイルス感染との関係も言われています。
- ひどい場合は入院が必要なこともあり、ステロイド剤が投与されます。
- フラフラは次第に軽くなっていきますが、3か月以上続くときは病気が悪化している場合もあるので、専門医の受診が必要です。
コラム:症状が3か月以上続くとき
- 症状が3か月以上続くときは「代償不全」や「持続性知覚性姿勢誘発めまい」に移行している場合があります。
前庭神経炎と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 前庭神経炎はさまざまな検査をしないと診断がつきにくいです。
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- 数十分以上続く、ぐるぐる回る強いめまいの他に以下のような症状がある場合
めまいの他の症状
- 聞こえにくい
- 耳鳴りがある
- 前庭神経炎ではぐるぐる回るめまいが特徴的です。
- 上記の症状を伴う場合、前庭神経炎ではない可能性が高いですが、耳鼻科開業医を受診し、まずは聞こえの検査を受けてください。
救急車を呼ぶ場合
- 数十分以上続く、ぐるぐる回る強いめまいの他に以下のような症状がある場合
めまいの他の症状
- 吐き気
- 顔面のしびれ
- 手足が動きにくい
- ろれつが回らない
- 足腰に力が入らず立てない
- 激しい頭痛がする
- 意識がはっきりしない
- 前庭神経炎では吐き気などが伴うこともあります。
- 上記の症状がすべてある場合、前庭神経炎の可能性は低いです。しかし、脳卒中によるめまいが考えられるのですぐに救急車を呼んでください。
受診前によくなるために自分でできることは?
- めまいが起きたときは安静が重要です。暗い静かな部屋で、できるだけ刺激を避けて横になってください。
- 少し落ち着いてきたら以下の項目について考えてみましょう。
めまいが起きた時に確認すること
- 聞こえは大丈夫か
- 耳鳴りはなっていないか
- 手足のしびれや動かしにくさはないか
- これらがなければもう少し安静にしておいてください。
- めまいの症状が完全に落ち着いた後、早くよくなるためには下記のことを行うとよいでしょう。
早く良くなるために
- 適度な運動
- ラジオ体操
- 今まで通り活発に動く
- いつまでも安静のままにしたり、外出などを避けていると、治りが悪くなります。
前庭神経炎になりやすいのはどんな人?原因は?
- 特になりやすい人というのはありませんが、風邪をひいた後に起こることが多いです。
- 原因としてはウイルスが疑われています。
どんな症状がでるの?
- 前庭神経炎にかかった場合、下記のような症状を示します。
前庭神経炎の症状
- 急性の回転性のめまい
- 嘔気、嘔吐
- ふらつき
- 下記のような症状は認めません。
前庭神経炎では認めない症状
- 聞こえにくい
- 耳鳴りがする
- 顔面のしびれ
- 手足が動きにくい
- ろれつが回らない
- 足腰に力が入らず立てない
- 激しい頭痛がする
- 意識がはっきりしない
- これらの症状が現れる場合、ほかの病気である可能性が高いです。いずれにせよ、医療機関を受診しましょう。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院では主に下記の検査をすることになります。
検査の種類
- 問診:脳卒中の症状はないかをみます。
- 眼振検査:めまいに特有な目の動きがないかどうかをみます。
- 起立検査:まっすぐ立てるかどうかをみます。
- 聴力検査:聞こえは正常かどうかをみます。
どんな治療があるの?
- 前庭神経炎の治療として下記のものがあります。
- 全身の管理:めまいのため水分や食事が摂取できない時は、点滴や入院が必要なことがあります。
- 薬物療法:めまいを抑える抗めまい薬や、不安を和らげる薬、ステロイド薬が投与されることもあります。前庭神経炎の原因の一つとしてウイルス感染が考えられていますが、抗ウイルス薬が効くかは分かっていません。
- リハビリテーション:めまいが落ち着いたら、運動や体操、良く体を動かすなどがふらつきに対する予防になります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- めまいが起こった時、少しめまいがましになっても急な動きでめまいが悪化することがあります。そのような時は再度安静が必要です。
- 点滴やお薬はめまいの特効薬ではないので、ピタッとめまいが止まるわけではありません。
- めまいが治まった後でも、ふらつきが3か月以上続く場合は、再度耳鼻咽喉科やめまい専門医を受診してください。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- インフルエンザのように人にうつる病気ではありません。
- 前庭神経炎の原因の一つとしてウイルスが考えられています。
- しかし、ウイルス感染そのものが原因ではなく、感染後の体の反応が原因の可能性が高いといわれています。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- めまいの症状はほぼ完治します。
- その後のふらつきが治る期間は個人差があります。
- 3か月をめどにして、それ以降ふらつきが続く場合は、再度専門医を受診してください。
追加の情報を手に入れるには?
- めまい診療の専門医は以下の日本めまい平衡医学会のホームページから検索できます。
- http://memai.jp/