意図しない体重減少:原因は?病院受診のタイミングは?必要な検査は?
更新日:2020/11/11
- 家庭医療専門医の三澤 美和と申します。
- 突然体重が減少したり、よく食べているのに体重が増えなかったりすると、心配になりますよね。「何か悪い原因で起こっているのではないか?」と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、意図しない体重減少の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけど本当は知ってほしいこと」ついて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- ダイエットをしているわけでもないのに体重が減少する原因には、感染症や飲んでいる薬の副作用、悪性腫瘍や糖尿病、甲状腺の病気、うつ病など様々な原因が含まれます
- 意図しない体重減少が起きる場合には多くの場合、医療機関で適切な問診と身体診察、検査を受ける必要があります。
- 治療はその原因により多岐にわたるので、緊急性のあるものかどうか、緊急性がなくても治療が必要かどうか、生活で改善できる面があるかどうかも含めて医療機関で相談をする必要があります。
意図しない体重減少は、どんな病気?
- 意図しない体重減少とは、食事量を減らすなど、体重を減らそうとしていないにも関わらず、6~12ヶ月で5%以上体重が減少することをいいます。
- お年寄りの方は、筋肉が減って自然に体重が減少することも多く、病気が隠れている体重減少と区別することも大切になります。
意図しない体重減少と思ったら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 以下のような場合には、病院への受診をおすすめします。
病院へ行った方がいい場合
- 自分でダイエットをしているわけでもないのに、6ヶ月で5%以上の体重減少がみられる場合
- たとえば60kgの人であれば、自分では食事を減らしているつもりはないのに、半年で3kg以上の減少がみられる場合です。
- 熱や寝汗、食欲がない、お腹の痛みや続く下痢など、体重減少の他に症状がある場合
- 特にこれらの症状があるときは、早めに病院へ行ってください。
- まずは身近なクリニック、かかりつけ医に相談し、病気が隠れている体重減少かどうかご相談ください。必要に応じて、より大きな病院で詳しい検査が必要になることがあります。
受診前に自分でできることは?
- 病院に行く前にご自身でできることは、以下のようなことがあります。
受診前に自分でできること
- 体重の変化の記録、食事量の記録
- 心や体の状態に変化がないか、他の家族からの情報をもらう:特にお年寄りの方は、食事を作るのが難しい、経済的な理由、認知症など様々な原因で食事の量が減っている場合があります
- 歯の状態の確認:歯の状態が悪く十分に食べられない場合は、まず歯科で相談し、おいしく食事が楽しめる歯の状態を作るのがよいです
- お酒の量を減らし、適切な栄養バランスのとれた食事を心がける
- (一部の競技のスポーツ選手、職業上必要があって体重をコントロールする方などに関して)必要なカロリー量と体重のバランスが見合っているかどうか、適切に指導を受ける
意図しない体重減少がおこりやすいのはどんな人?原因や症状は?
- 意図しない体重減少がおこりやすい人は、お酒をよく飲む人、ヘビースモーカー、歯の状態が悪い人などです。
- その他の原因として、意図しない体重減少に関連する病気には以下のようなものがあります。
感染症
- 細菌感染症、結核、HIV、真菌(カビ)感染症、肝炎などで、体重減少を起こすことがあります。熱や寝汗、疲労感や咳、お腹の痛みや下痢など様々な症状があります。
癌
- 疲労感や微熱、寝汗などの症状があります。食欲があまりないことも多いです。
内分泌疾患(ホルモン分泌や代謝に関する病気)
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)は汗がよく出る、暑がり、手のふるえ、動悸などの症状があります。
- 糖尿病では喉が渇く、大量に飲み物を飲む、尿の量が増えるなどがよくみられます。
- まれですが、強い疲労感などの訴えで副腎という臓器の働きが低下していることもあります
消化管の病気
- 悪性ではない、胃腸の病気が関連することがあります。胃や十二指腸に潰瘍ができる病気、腸が炎症を起こす病気(クローン病や潰瘍性大腸炎など)が考えられます。下痢やお腹の痛み、血が混ざった便が出るなどの症状があります。
精神の病気
- うつ病や摂食障害(食事を全然とらなくなってしまう拒食症)などで体重減少を起こすことがあります。何をしても気分が晴れない、体重が増えることへの恐怖、体重への強すぎるこだわりなどの症状があります。
心臓の病気、腎臓の病気、肺の病気
- 慢性的な心不全(心臓の機能が落ちる病気)や腎不全(腎臓の機能が落ちる病気)は、体重減少を起こすこともあります。しかし、逆にむくみによって体重が増えることもあり、注意が必要です。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)(タバコによってなりやすい肺の病気)は、息切れや呼吸が苦しいなどが主な症状ですが、栄養状態が悪い、呼吸をするときに使うエネルギーが増えることによって、体重減少となることがあります。
アルコールや薬物
アルコール依存の人はエネルギーのほとんどをお酒からとるため、適切な栄養がとれずに体重が減りやすくなります。
- その他、薬物の乱用や一部のハーブ製品、市販薬が原因になることもあります。また、普段病院から出してもらっているお薬の中でも、薬を飲み過ぎることにより副作用として体重減少がでることもあります。
- タバコも体重減少の原因の1つです。
歯が悪い、味覚がおかしい
- 歯の状態が悪い、歯周病や虫歯によって体重が減少することがあります。
- 亜鉛や鉄の低下は味覚がおかしくなることがあり、苦く感じる、美味しくないといった味覚の異常により食事の量が減って体重が減ることもあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- お医者さんに行ったら、まず、体重がどう変化したか、食事の量、飲んでいる薬や健康食品、ハーブ製品、アルコールの量、他の症状がないかなどを聞かれます。
- 次に、体の診察からヒントになるようなものがないかを考えます。例えば甲状腺機能亢進症という甲状腺ホルモンがたくさん出る病気では、甲状腺が大きく腫れている場合があります。
- その後、以下のような詳しい検査を行います。
病院で行う可能性のある検査
- 血液検査、尿検査:患者さんの血液や尿から、栄養の状態や、どのくらい炎症を起こしているか、感染症がないか、甲状腺の機能に異常はないかなどを調べます。
- 便潜血検査:便に血が混ざっているか検査し、大腸の病気の可能性を調べることができます。血が混ざっていた場合には、大腸にカメラを入れて調べることもあります。
- 上部内視鏡検査(胃カメラ):口からカメラを入れて、食道、胃、十二指腸の病気を調べます。
- 胸のレントゲン、胸やお腹のCT:腫瘍などの異常を画像で調べます。
- うつ病などの問診:気分の落ち込みや、普段していた趣味や楽しみがいつも通りできているか、精神的な変化を起こすきっかけになるような出来事がなかったか、極端なダイエットをしていないかなどを聞きます。
どんな治療があるの?
- 原因によって治療はそれぞれ変わりますが、大きく分けて「食事の習慣や栄養量を見直す」「原因の病気の治療をする」と2つあります。
食事の習慣や栄養量を見直す
- 体重減少しか症状がなく、他の原因が見つからない場合は適切なカロリーをとるよう指導(時に栄養士さんとの面談)、適度な運動、お酒の制限などを行います
- 食事をとることや飲み込むことに問題があるお年寄りの方では、食事の準備や食事の環境作り、お弁当の宅配、味付けや風味の工夫、何回かに分けて間食を勧める、飲み込む機能を評価し必要ならリハビリをする、などをします。
- 場合によっては少量で高カロリーである栄養補助剤を使うことも可能です。
- 認知症が原因で適切な食事がとれていない場合には、病気で治療やサポートを相談していきます。
- 禁煙が勧められます。
原因の病気の治療をする
- 感染症:適切な細菌をやっつける抗菌薬、結核菌をやっつける抗結核薬などが選ばれます。場合によっては入院で治療することもあります。
- 悪性腫瘍(癌):癌の種類によりますが手術、化学療法、放射線療法など様々な方法があります。
- 糖尿病:適切な食事・運動指導を受け、必要な場合にはお薬を飲んでいただきます。
- 甲状腺機能亢進症:多くはお薬を飲んで治療をしますが、他にも病気の状態に応じて手術や放射線アイソトープ療法が考えられることもあります。
- 悪性腫瘍ではない消化管の病気:胃や十二指腸の潰瘍には、胃の中の消化液ある胃酸を抑える薬を飲むことが多いです。クローン病や潰瘍性大腸炎といったまれな病気では、その病気の状態に応じて、多くはお薬を飲んで病気をコントロールします。
- うつ病などの精神の病気:病院の精神科や心療内科に相談しながら、うつ病のお薬を飲み始めてもらうことがあります。生活や心理面のサポートによって、薬を飲まなくても改善に向かう人もいます。
- 心不全、腎不全、呼吸不全:それぞれに適切な食事の量・塩分の量の指導や、必要に応じてお薬を使います。慢性閉塞性肺疾患では、禁煙を勧め、呼吸の機能に応じて、吸入するお薬などを使うことがあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- お医者さんで治療を受けた後は、お薬の副作用については常に注意が必要です。新たに起こった症状や異常があれば、主治医の先生にご相談ください。
予防のためにできることは?
- 予防のためにできることは、以下の通りです。
意図しない体重減少の予防
- 定期的に歯の検診を受ける:歯の健康は、将来の食事の質を大きく左右します。若いときから、歯の良い状態を維持してください。
- 禁煙:吸わない、吸わせないが大事です。家族や友人にタバコを吸う方がいたら禁煙を勧めましょう。
- よく噛み、バランス良い食事を心がける:美味しく食べられる環境作りをしましょう。
もっと知りたい!意図しない体重減少のこと
どのくらいの人が意図しない体重減少になるの?
- 65歳以上の大人の15~20%が、5~10年の間に意図しない体重減少を経験するとされている報告もあります。しかし、大人全体でみると、5%程度と頻度は高くないとされています。