潰瘍性大腸炎:原因は？ 症状は？ 食事やお酒、タバコとの関係は？ 治療は？

• 消化器病専門医の溝上 裕士、鈴木 英雄と申します。
• このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が潰瘍性大腸炎になってしまった？」と不安を感じておられるかもしれません。
• いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
• 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいことについてまとめました。

潰瘍性大腸炎は、どんな病気？

• 潰瘍性大腸炎とは、大腸の壁が傷つき、一部がただれたり深くえぐれてしまったりする病気です。
• 20～30代の若い人に多くみられますが、50代以降にかかることもあります。
• かかりやすさに男性と女性の違いはありません。
• 治療には炎症を抑えるお薬や免疫を調整するお薬を使いますが、最近はさまざまなお薬が開発されて治療成績も良くなりました。
• お薬でよくならない場合には、手術をすることがあります。
• 潰瘍性大腸炎は指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。

潰瘍性大腸炎と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの？ 医療機関の選び方は？

• 下痢便に血が混じるときは病院を受診してください。
• 大腸内視鏡検査ができる病院がおすすめです。
• すでに潰瘍性大腸炎で病院に受診している方でも、治療などにかかる費用の補助を受けたい場合には、自治体が指定した「難病指定医」の診断書が必要になります。
• 難病指定医は次のウェブサイト（http://www.nanbyou.or.jp/entry/5309）で調べることができます。

潰瘍性大腸炎になりやすいのはどんな人？ 原因は？

• 20～30代の若い人に多くみられます。
• 免疫異常（ばい菌などをやっつける細胞が、外から入ってきた異物と間違って自分のからだの一部を攻撃してしまう状態）が原因といわれています。
• 腸内細菌や食生活、遺伝などがからみあって関係しているとされていますが、くわしいことはよくわかっていません。
• タバコをやめることで症状が悪くなるという報告がありますが、タバコを吸うことによる悪い影響のほうがはるかに大きいためタバコを吸うのはおすすめしません。

どんな症状がでるの？

• 潰瘍性大腸炎にかかると、下記のような症状があらわれます。

潰瘍性大腸炎の症状

• 下痢
• 便に血が混じる
• おなかの痛み
• 熱がでる
• 食欲がなくなる
• 体重が減る
• 関節の痛み

お医者さんに行ったらどんな検査をするの？

• 潰瘍性大腸炎が疑われる場合、下記の検査が行われます。
• 血液検査：採血をして、炎症反応の強さや、栄養状態を調べます。
• 大腸内視鏡検査：おしりからカメラのついた管を入れて、大腸の壁がどれくらい傷ついているか観察します。
• 大腸造影検査：おしりから造影剤というお薬を入れて、病気の広がりなどをみます。
• 便検査：炎症が起こっているときに増える物質を調べ、また、下痢などの症状を起こしているほかの原因（ばい菌など）がないか確認します。

どんな治療があるの？

• 治療にはお薬を使うことが中心の内科的治療と、手術をする外科的治療があります。
• 内科療法は、主に軽症の方から一部の重症の方に行われます。
• 外科療法は、重症の方や内科治療で症状が抑えられない方、また、大腸癌がある場合に行われます。

内科治療　

• 5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬：潰瘍性大腸炎では必ず使うお薬で、症状を良くするほか、ぶり返さないようにする効果もあるため、続けて飲むことが重要です。
• 副腎皮質ステロイド薬：症状をよくするために使われますが、ぶり返しを防ぐことはできず、長く使用すると糖尿病や骨粗鬆症などの副作用が出ることがあります。
• 免疫調節薬：副腎皮質ステロイド薬で炎症を抑えたあとに再び症状がでないように予防する場合や、副腎皮質ステロイド薬が効かない場合に用いられます。
• 分子標的薬：特定の炎症にかかわる分子（細胞の中のきわめて小さな構成成分）をねらって使うお薬です。
• 血球成分除去療法：大腸の壁を壊してしまう血液中の有害な細胞を、特殊なフィルターを使って取り除く方法です。

外科治療　

• 大腸全摘術：手術で治す場合は、基本的に大腸のすべてを切り取り、小腸と肛門をつなぎます。
• 一時的に人工肛門（おなかに肛門の代わりの穴をつくり、その穴から便がでるようにします）になることがあります。

お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは？ 食事や生活で気をつけることは？ 治療の副作用は？

• お薬によって、さまざまな副作用がありますので、使い始めてからからだに異変が起こった場合はすぐに病院に相談してください。
• 自分では気づくのが難しい副作用も多いので、定期的に病院を受診してください。
• 日常生活では規則正しい生活を心がけ、暴飲暴食や睡眠不足、ストレスを避けるようにしてください。

治るの？ 治るとしたらどのくらいで治るの？

• 何もしないで自然に治すことが難しい病気ですので、自己判断で薬をやめないようにしてください。
• 7年以上、大腸の広い範囲に炎症があると、大腸がんになりやすいといわれていますので、定期的に大腸内視鏡検査を受けてください。
• 治療が終わった後の、そのほかの状態のなりゆきは普通の人と変わりません。

追加の情報を手に入れるには？

• 潰瘍性大腸炎に関してはインターネットの次のページを参考にしてください。
• 難病情報センターのサイト（http://www.nanbyou.or.jp/entry/62）
• 潰瘍性大腸炎は厚生労働省が指定する難病のひとつで、治療などにかかる医療費の補助を受けることができます。助成をうけるには、次のホームページの「難病指定医」による診断書が必要です。
• 難病指定医一覧（http://www.nanbyou.or.jp/entry/5309）
• 自治体によっては、指定難病に対して独自の給付金を行っているところもあります。ご自身の住んでいる自治体のウェブサイトなどを確認されることもおすすめいたします。