眼瞼や筋肉のピクつき:原因は?病院受診のタイミングは?必要な検査は?
更新日:2020/11/11
- 脳神経内科専門医の望月仁志と宇川義一と申します。
- 突然、眼瞼やその周囲の筋肉がピクついたら、不安になると思います。
- このページでは、眼瞼やその筋肉がピクついたときの一般的な原因、診断のされ方、治療、将来どうなるのかについて、役立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- まぶたや筋肉のピクつきをおこす主な原因として、眼瞼【がんけん】ミオキミア、眼瞼けいれん、片側顔面けいれんが挙げられます。
- 症状が両目に広がるとき、額や口の周りに広がるときは、脳神経内科、脳神経外科、眼科を受診することを考えてください。
- 原因の疾患によって治療が不要な場合と、必要な場合があります。必要な場合は飲み薬や、注射などがあります。
- 予防のために眼精疲労、ストレス、睡眠不足、カフェイン、アルコールの摂取、喫煙などを減らしてみてください。
まぶたや筋肉のピクつきがみられるときは、何かの病気にかかっているのですか?
- まぶたや筋肉のピクつきを起こす病気はいくつかあります。
- 主な原因として、眼瞼ミオキミア、眼瞼けいれん、片側顔面けいれんが挙げられます。
- これらは、病態も、治療も異なりますので、症状がどれに当てはまるのかをしっかりと判断することが重要になります。
- おおまかな特徴を下記にまとめました。
眼瞼ミオキミア
- 目の周囲の筋肉が自分の意思に反してピクピクとさざ波のように小さく痙攣し、それが数秒程度続く状態で、1日に何度か生じます。
- 上まぶたにも下まぶたにもあらわれます。
- 通常は左右どちらか片方ですが、両側に生じることもあります。
- 眼精疲労、ストレス、睡眠不足、カフェイン、アルコールの摂取、喫煙が誘引となることもあります。
- 頻度は、症状が軽く医療機関を受診しない患者さんも多く不明です。しかしながら、下記の2つの疾患に比較してかなり多いと推測されています。
眼瞼けいれん
- まぶたの筋肉が勝手に縮み、まばたきが増え、症状が進行すると眼を開けることが困難となり、失明になる可能性のある病態です。
- 医学的にはジストニアという病気に分類され、脳の中の運動を司る部分が障害されることで起こります。
- 通常は左右両方にあらわれますが、左右差があることも少なくありません。
- まぶたの刺激感・不快感、羞明(通常の光量でもまぶしいと感じること)や瞬目過多(まばたきの回数が多いこと)などの症状を合併することがあります。
片側顔面けいれん
- 初めは目の周りの筋肉のみがけいれんします。症状が進行すると症状があらわれている同じ側の頬、口角、顎の筋肉も自分の意思に反してピクピクと痙攣するように動く状態です。
- 顔の筋肉は顔面神経によって支配されますが、この顔面神経が脳動脈により物理的に刺激されることにより発症します。
- 通常は左右どちらか片方であらわれます。初めは症状がでてもすぐに治まったりしますが、進行すると常に出現することもあります。
ピクつきがあらわれたら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?
- 片目の周囲のみにピクつきが限定している場合は、多くの場合は問題ないので、目安として1,2か月様子をみてもかまいません。
- 両目に広がるときは眼瞼けいれんの可能性、額や口の周りに広がるときは、片側顔面けいれんの可能性がありますので、脳神経内科、脳神経外科、眼科を受診することを考えてください。
ピクつきがあらわれやすいのはどんな人ですか?
- 下記にそれぞれの疾患における、ピクつきの症状があらわれやすい人と原因を記しました。
- 眼瞼ミオキミアはどのような人がなりやすいかは分かっておりません。眼精疲労、ストレス、刺激のある食品などが原因とされています。
- 眼瞼けいれんは、10万人あたり約10-20人の患者がいるとされており、男女比は1:2-2.5と、少し女性に多い病気です。50-70歳代の発症が多いです。
- 片側顔面けいれんは10万人あたり約1-10人の患者がいます。男女比は1:1で、50-70歳代の発症が多いです。
どんな症状がでるの?
- 下記にそれぞれの疾患における症状をまとめました。
眼瞼ミオキミア
- さざ波のような小さな動き
- 不規則に短時間の速い動き
- 目の開閉は自由に行うことができます
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- お医者さんに行ったらまずは、症状について詳しく聞かれます。
- その後、下記のような検査を行います。
主な検査
- 表面筋電図:筋肉の収縮の様子をみます。眼瞼けいれんでは筋肉の持続的な収縮が確認できます。
- 瞬目テスト:できるだけ早く連続でまばたきをしてもらいます。眼瞼けいれんを診断することができます。
- MRI・MRA:脳の内部に異常があるかどうかを確認できます。片側顔面けいれんでは特に重要となってきます。
どんな治療がありますか?
- まぶたのピクつきがみられたら、疾患に応じた治療を行います。
- それぞれの疾患の治療を下記にまとめました。
眼瞼ミオキミア
- 通常は医療機関での治療は不要です。
- ストレスや眼精疲労などの誘因があるときは、可能な限りそれらを減らすような生活を心がけてください。
- 症状が強いとき、数週間以上継続するときは、別の疾患の可能性もあるため、医療機関を受診することをお勧めします。
眼瞼けいれん
- ボツリヌス毒素を目の周りのけいれんする筋肉に注射します。
- 1回注射すると2~3日後から効き始め、3,4か月は症状が楽になります。
- その他には、まぶしさを予防する遮光眼鏡、クロナゼパムなどの抗痙攣薬、抗不安薬、抗コリン薬などの飲み薬が効果的な場合もあります。
片側顔面けいれん
- 一般に飲み薬は効果が乏しいですが、まずは上記の眼瞼けいれんに使用するお薬で様子をみることもあります。
- 効果がみられない時には、ピクピクしている筋肉の部位にボツリヌス毒素の注射をします。
- 根治療法として手術があります。これは原因となっている血管と顔面神経(顔の筋肉を動かす神経です)が接触しないようにする神経血管減圧術で、ジャネッタの手術と呼ばれています。有効性は90%以上とされています。
日常生活で気を付けることはありますか?
- 眼瞼ミオキミアの場合は、眼精疲労、ストレス、睡眠不足、カフェイン、アルコールの摂取、喫煙などの誘因がありそうな場合はそれを減らしてみてください。
- 眼瞼けいれん、片側顔面けいれんの場合は、日常生活の要素はあまり関係ありませんが、ストレス、不安、疲労が症状の悪化に関与している可能性も示唆されています。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 眼瞼ミオキミアでは、治療なしで、数日~数週間で自然に治ります。
- 眼瞼けいれんでは、治療しなかった場合、自然に治るのは約10%のみです。
- 片側顔面けいれんでは、治療しない場合は自然に治ることはほぼありません。治療が必要となります。