破傷風:どんな病気?どうやって感染するの?予防接種は有効?治療は?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の上田 晃弘と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が破傷風になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 破傷風とは、土の中などにいる破傷風菌が傷から体の中に入り、毒素を出すことで、しびれやけいれんを起こす病気です。
- 口を開けにくくなる、ものが飲み込みづらくなる、全身のけいれん、呼吸のしづらさなどの症状があらわれます。
- 破傷風にかからないための予防接種があります。
破傷風は、どんな病気?
- 破傷風とは、土の中などにいる破傷風菌が、傷口から体のなかに侵入して、毒素を出すことによって、しびれやけいれんをおこす病気です。重症になると息ができなくなり、死に至ることもあります。
- 最初は首筋の張りや口の周りのしびれなどから始まり、その後口が開けにくい、ものが飲み込みづらいといった症状が出てきます。さらに症状が進行すると体を弓なりに反らせるような姿勢になり、呼吸が苦しくなり、けいれんなどが見られ、死に至ります。
- 破傷風菌に感染してから3日~3週間程度後に症状があらわれます。
医療従事者向けコラム:日本における破傷風の発生
- 定期予防接種に破傷風の予防接種が含まれるようになって、日本で破傷風にかかる患者さんの数は少なくなっています。それでも、年間100人前後の患者さんが報告されています。
- なお、傷口から感染する破傷風のほかに、出産時に臍帯を切ったときの傷で新生児に発症する破傷風(新生児破傷風といいます)もありますが、日本ではまれです。
破傷風と思ったら、どんなときに病院へ受診したらよいの?
- けがをして傷口が土で汚れるようなことがあった場合、次のような症状があれば病院にご相談ください。
破傷風を疑う症状
- 口の周りがしびれる
- 口が開けにくくなる
- 痛みを伴う筋肉の張りがある
破傷風を予防するために自分でできることは?
- 破傷風にかかるリスクのあるけがをしてしまった場合、病院にご相談下さい。予防接種などの措置を行えば、破傷風が発症するリスクを下げることができます。
- 予防措置の必要性や方法は、けがの程度や汚れ具合、予防接種をうけたことがあるかどうか、などをもとに医師が判断します。
破傷風になりやすいのはどんな人?原因は?
- 下記のような方は破傷風にかかるリスクがあります。
破傷風にかかるリスクのある方
- 破傷風ワクチンを受けていない(1968年以前に生まれた方は、破傷風ワクチンが定期予防接種に含まれていません)
- けがをして、傷が土などで汚れた
- 汚れたくぎなどが刺さった
- 動物に咬まれた
どんな症状がでるの?
- 破傷風にかかると下記のような症状がでます。症状が進行すると命を落とすこともあります。
破傷風の最初の症状は…
- 口の周りがしびれる、口が開けにくい
- 首すじが張って痛い、ものが飲み込みづらい
- 息がしづらい
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 破傷風の診断には特別な検査は行いません。お困りの症状とけがや傷などの経緯を伺って診断します。
- 汚れた傷の部分で破傷風菌をみつける検査を行っても、菌がみつかる確率は低いため、実際にはあまり行われていません。
どんな治療があるの?
- 破傷風菌に効果のある治療と、破傷風の症状に対する治療を行います。
破傷風菌に対する治療
- 破傷風菌に効くお薬(抗破傷風ヒト免疫グロブリンと破傷風トキソイド)を点滴・注射します。
- 傷口をきれいにして、破傷風菌に効く抗菌薬を投与します。
症状に対する治療
- 息が苦しい場合:呼吸がしやすくなるように喉に呼吸のための管を入れることがあります。
- 筋肉の張りやけいれんが強い場合:筋肉の張りを楽にするお薬を使います。症状が落ち着いたらリハビリテーションを行います。
- 脈拍や血圧が不安定な場合:心臓の働きをコントロールするお薬を使います。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 破傷風にかかって治療を受けた後も、破傷風菌に対する免疫はできません。そのため、繰り返し破傷風にかかる可能性があります。
- 破傷風に対する免疫をつけるためには、破傷風の予防接種を受けてください。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 破傷風が人から人にうつることはありません。
- 破傷風は予防接種で防ぐことができる病気です。予防接種がとても有効ですので、破傷風にかかってから治療するよりも、破傷風にかからないようにすることがとても重要です。
- 破傷風のワクチン(破傷風トキソイド)は、定期予防接種の4種混合(DPT-IPV)、3種混合(DPT)や2種混合(DT)に含まれています。
- 最後にワクチンを接種してから10年以上経過している場合は、破傷風トキソイドなどを1回追加接種することが勧められています。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 症状が強くない場合、ほとんどの患者さんが治ります。治るまでの期間は症状によってさまざまですが、お薬や人工呼吸器などの医療の発展のため、治る患者さんが増えてきています。
- ただし、けがをしてから症状が出るまでの期間が短い(7日以内)と重症になりやすく、残念ながら重症の患者さんは6割が命を落とされるといわれています。
追加の情報を手に入れるには?
- 厚生労働省のサイト
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/tetanus/index.html
- 国立感染症研究所のサイト
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html
- 厚生労働省検疫所のサイト
- https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name74.html
- 予防接種のスケジュール
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/component/content/article/320-infectious-diseases/vaccine/2525-v-schedule.html