テニス肘:原因は?症状は?ストレッチやサポーターの効果は?治療は?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医の落合 信靖と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がテニス肘になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- テニス肘とは、30代から50代の方によくみられる、肘関節の外側に痛みが生じる障害です。
- 早期のテニス肘であれば、日常生活の動作に気を付けていただくことなどで、約80%は自然に治ります。
- 痛みがあるのにさらに肘を酷使すると、痛みが長く続いてしまう場合があります。
テニス肘は、どんな病気?
- テニス肘とは、肘の関節の外側が痛くなる病気です。上腕骨外側上顆炎【じょうわんこつがいそくじょうかえん】とも言われます。
- 痛みを感じるようになってはじめの段階ならば、10人に8人の方が自然に治ると言われています。
- しかし、症状がよくならなかった場合、そのまま肘を使い続けていると、痛みが長く続くようになり、治りにくくなってしまいます。そうすると、スポーツや肉体労働をする時だけでなく、日常生活でも痛みが生じて不自由を感じるようになります。
テニス肘と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 以下の場合に病院の受診をおすすめします。
病院を受診してほしいとき
- 肘の関節の外側が痛くなって、安静にしているときや寝ているときでも治らない場合
- 物を持ち上げたとき、タオルや雑巾を絞るとき、手を握るとき、肘の外側が痛くなる場合
- テニスなどの運動中に肘の外側が痛くなり、治らない場合
受診前によくなるために自分でできることは?
- 肘を伸ばしたまま持ち上げると肘に痛みを感じやすいので、肘を曲げた状態でものをもつとよいでしょう。
- 肘の外側の部分の筋肉が固いと痛みにつながります。肘から手首にかけての筋肉のマッサージや、肘を伸ばした状態での手首や指のストレッチを行ってみるのもおすすめです。
- 肘の外側を触ると熱をもっている場合は冷やしてください。熱をもっていない場合は、あたためることによって痛みが軽くなる可能性もあります。
テニス肘になりやすいのはどんな人?原因は?
- テニス肘は腕の障害としては頻度が高く、大人の方の4%に生じると言われています。とくに30代~50代に多く、また、女性がなりやすいと言われています。
- テニスの場合、練習のしすぎや体に合わない打ち方、自分に合わないラケットを使っているとなりやすいです。
- また、仕事などで腕を繰り返し使っているときにもなりやすいです。
どんな症状がでるの?
- 以下にテニス肘の症状をまとめます。
テニス肘の症状
- 肘の関節の外側が、何もしていないときでも寝ているときでも痛い、だるい
- 手首を上にそらしたときに手首に痛みを感じる
- 物を持ち上げたとき、タオルや雑巾を絞るとき、テニスではバックハンドストロークをしたときに、肘の関節の外側が痛い
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まずどこが痛いかお聞きし、痛い部分を押して、痛みの程度を確認します。テニス肘では、肘の外側の部分を押すと痛みがあるというのが特徴です。 肘から手首にかけて痛い場合もあります。
- 画像をとって確認しますが、変化がでない場合もあり、⼒を加えて痛みの部位がどの程度痛くなるのかをみて、診断します。
どんな治療があるの?
- 安静にし、痛みの部分に熱がある場合は、冷やすことが大事です。
- また、重たいものを持ち上げない、肘を曲げた状態で体の正面で物を持つなど、肘の外側に痛みが生じないように行動してください。
- 安静時にも痛みがある場合、痛み止めを飲んだり、湿布を貼ったりしてください。
- テニス肘バンドの着用もおすすめです。このバンドをつけることで、肘にかかる力を軽くし、治りを早くする効果があります。
- リハビリでは筋力をあげる運動やストレッチ、痛みの部分を温める温熱療法を行います。
- 痛みの部位にステロイド薬や麻酔薬の注射を行う場合もあります。
- 自分の血やPRPという成分を注射する方法もあります。これらの成分は傷ついた組織を再生させ、治療効果をみます。この方法は厚生労働省で認められた施設でのみ使用可能な治療法です。
- 体外衝撃波療法というのもあります。これは、体の外から、衝撃波を当て、痛みを軽くする治療です。
- これらの治療で治りが良くならない場合、手術を行います。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 痛みが出ないように動くことが大事です。痛みがでない状態が続くことで自然に治ることが多いです。
- また、手首や指のストレッチを継続していくことも大事です。
- 仕事で痛みが出る場合、仕事内容の調整も必要です。
予防のためにできることは?
- 痛みが起きやすい動作や、運動のしすぎを避けることが重要です。
- 運動の前の準備体操や、運動後のクールダウンやテニス選手の場合は自分に合ったラケットを使うことが予防につながります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- テニス肘は8割の人が自然に治ります。ただし、使いすぎや痛みがでる動作を続けていると、治りにくくなることがあります。
- 自然に治らない場合は、内服、外用薬、リハビリテーション、注射、装具療法を行います。それでも6か月以上症状が改善しない場合、自己血注射、PRP、体外衝撃波療法を行い、これらの治療でも改善しない場合は手術を行います。
追加の情報を手に入れるには?
- テニス肘に関しては下記のページを見ると良いでしょう。
- 日本整形外科学会のホームページ
- https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lateral_epicondylitis.html
もっと知りたい!テニス肘のこと
検査について
- 検査としては肘を伸ばした状態で手首を背屈させ、手抵抗を加えるトムセンテストや肘を伸ばした状態で中指を伸展させて抵抗を加える中指伸展テスト、前腕を回内(手の平を下に向ける)し、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げたりすることにより先述の押して痛い部位に痛みが生じるか確認します
- 画像診断としてレントゲンでは圧痛部の石灰化を認める場合もありますが、基本的には特別大きな問題を認めない場合が多いです。
- 超音波では短橈手根伸筋付着部や上腕骨と橈骨の間の滑膜ひだと言われる部分に血流の増加や低輝度に描出される変性像を認める場合があります
- MRIでは先述の短橈側手根伸筋付着部のT2強調像での高輝度領域や滑膜ひだの肥厚を認める場合があります。
治療について詳しく知りたい
体外衝撃波療法
- 結石破砕等で使用される体外衝撃波療法は痛みを軽減し、組織再生を促す治療法です。
- 1回の治療は約10分で体外衝撃波を照射し、痛みを軽減させる治療です。
- 短期では痛みを軽減させ、長期では組織が再生されていきます。
手術療法
- 手術には様々な方法があります。
- 直視下に変性している腱や滑膜ひだを切除し再度腱を骨に縫合する方法や、近年は関節鏡を用いて変性している腱や滑膜ひだを切除する方法が一般的です。
ほかの肘関節の痛みについて
- 肘関節の内側に痛みが生じる場合、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)と呼ばれ、治療法としてはテニス肘と同様の治療法を行います。
- その他の肘の外側に痛みが生じる疾患として、上腕骨の軟骨に障害が生じる上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(小学校高学年から中学生に後発し、野球で投手をしている子に生じやすく、初期には痛みが生じず、ある程度進行すると症状が出現するため注意が必要です)や橈骨神経管症候群(手首や指を伸ばす神経が圧迫されることにより生じ、テニス肘と似たような症状を呈します)があり、鑑別が重要です。