急性乳児死亡症候群(SIDS):検査や治療は?治るの?
更新日:2020/11/11
- 発達神経病理学・小児睡眠診療専門医の小保内 俊雅と申します。
- このページに来ていただいたご家族の方は、何がどうして起こったのかくわしくお知りになりたいと思っておられるに違いありません。
- そして、赤ちゃんとおわかれをする機会をもちたいと考えていらっしゃることでしょう。
- 解剖を拒否されるのではなく、必要ならば受け入れてもいいと思われているのかもしれませんが、解剖の後に自分たちの赤ちゃんとおわかれができないのではと、あるいは、虐待をしていなくともなにかを疑われるのではないか、育児にミスがあったといわれるのではないかと不安をいだかれているのかもしれません。
- いまこのような不安や、つらい思いを抱えている方々に寄り添い、お役に立てる情報をまとめました。
目次
まとめ
- 急性乳児死亡症候群は1歳未満の赤ちゃんが寝ているあいだに突然亡くなる病気で、原因や仕組みはわかっていません。
- 急性乳児死亡症候群は、心臓と肺のはたらきが止まってしまった状態で病院に搬送されてくるので、異状死体として医師法21条にしたがって警察に通報する義務があります。
- 診断には脳をはじめとする重要な神経や全身の解剖、亡くなったときの状況調査と家族歴を含む病歴調査が必須です。
- 突然の事態にあわれて動転しているご家族の方々に寄り添い、ご説明をしたいと思います。
- このページでは、基本的な部分を記述しますが、各地の死因究明事情などにより内容は異なることをご承知おきください。
何が起こったのでしょうか?
- 病院に着かれたときにはすでに、心臓と肺のはたらきが止まってしまった状態でした。
- 蘇生【そせい】を試みましたが、生命活動は再開しませんでした。
- 元気だったのになんの前触れもなく突然亡くなることは、1歳未満の赤ちゃんではまれではありません。ですが、なにが起こったのか、なぜ起こったのかをいろいろと調べなくてはなりません。
何をどのように調べるのでしょうか?
- 病気などの明らかな原因がみつからない場合、事故やそのほかの原因を明らかにするため、亡くなったときやその前の状況を調査しなくてはなりません。
- この調査を実施するのは警察ですので、警察に知らせなくてはなりませんが、このことは法律で決まっていることなのでご了承ください。
- 亡くなった赤ちゃんだけでなく、ご家族の病歴を調べ、また赤ちゃんに症状がなくはっきりとはわからないような病気などがなかったか調べます。
- そのために、解剖をしてからだの中をくわしく調べなくてはなりません。
解剖はだれが行うのですか?
- 解剖は目的によって、だれが実施するのか変わってきます。
- 司法解剖:事故や過失を明らかにするために、警察が主体となって行います。事故や過失の疑いがない場合は、警察は解剖の必要はないと判断しますが、その場合でも次のように解剖は実施されます。
- 行政解剖:警察が解剖をしない(事件の可能性がない)とした場合、亡くなった原因を調べるために監察医などによって行われます。
- 病理解剖:病気の原因を調べるために病理医が行います。
コラム:解剖の詳細について
- 解剖は、からだの真ん中の線(正中線【せいちゅうせん】といいます)に沿って、胸の中央に縦に位置する胸骨の上からへその下に位置する恥骨【ちこつ】のすぐ上まで、また肩を形づくる鎖骨に沿って体を開き、内臓を調べます。
- 調べた後は、必要な臓器を取り出してくわしく調べます。
- 頭部は両側の耳の付け根部分と頭の真上を結ぶ線に沿って皮膚を開き、さらに頭蓋骨を開いて、脳を調べます。
- 脊髄【せきずい】と延髄【えんずい】という部分の境界で切り離して脳を取り出します。
解剖を行った後に赤ちゃんはどのように戻ってくるのですか?
- 解剖の検査が終わった後は、骨や皮膚をもとのとおりにぬい合わせて帽子をかぶせ、お洋服も着ていただいて、お戻しいたします。
- 外からは解剖の傷あとはまったくわからない状態になり、顔の表情や体つきが変わったり、傷ついたりすることはまったく起こりません。抱っこをして、お別れをしていただくこともできます。
解剖の結果はいつわかりますか?
- 司法解剖の場合は、その地域を担当する警察から連絡がいき、警察官から説明がなされます。
- それ以外の場合は、当初の解剖から、必要な標本を作製して調べ、そのほかの情報を合わせて診断するので、数か月かかります。
- 突然死の場合は、これらの検査をしても原因が特定できないこともあります。
- 特定はできなくても、病気や事故などが原因ではないということはできますので、必要な情報は十分に得られます。
解剖の結果を教えてください
- 解剖で突然死の原因となる異常な所見がみあたらず、死亡の状況調査でも事故などの疑いはなく、今までの健康状態やご家族の病歴からも突然死の原因は判明しなかった場合、これらを総合的に判断して急性乳児死亡症候群(SIDS)と診断されます。
急性乳児死亡症候群とはどのような病気なのですか?
- 急性乳児死亡症候群は1歳未満の赤ちゃんが寝ているあいだに突然亡くなる病気で、原因や仕組みはわかっていません。
- 生まれたばかりの赤ちゃんは生命活動を調節する自律神経が発達途上で、さまざまなストレスに弱いため、体調の軽微な変化や環境の変化などに影響され、調節がうまくいかずに心臓や肺が停止すると考えられています。
- 急性乳児死亡症候群は、不適切な育児が原因で起こるものではありません。
- また、急性乳児死亡症候群は遺伝性の病気ではありませんので、ご兄弟やこれから生まれてくるお子さんが同様に突然死することはありません。
- 急性乳児死亡症候群の発生数は減少傾向ですが、出生1,000に対して0.3〜0.4人ぐらい発生しています。
追加の情報を手に入れるには?
- 急性乳児死亡症候群のご遺族の方は、心ない質問や慰めに傷ついたり、回答の出ない疑問にいつまでも悩まされることがあるでしょう。これらを回避するためにも、適切に死因究明をすることが必要と考えます。
- 同じ経験をされたご家族の方の会がありますので、ご紹介しておきます。
- 「急性乳児死亡症候群家族の会」(http://www.sids.gr.jp/)