胃癌:原因は?症状は?ステージとは?検査は?治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 内視鏡専門医の田邉 聡と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が胃癌になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 胃癌とは胃の粘膜から発生する癌のことです。
- 日本では胃癌の95%以上にヘリコバクターピロリ菌(HP)が発癌に関与していると考えられています。
- 胃癌は以前に比べて減少傾向ではありますが、罹患数は大腸癌に次いで2位、死亡数は3位と未だに多い癌の一つです。
- 胃癌の治療は進行病期(ステージ)によって治療法が異なります。
- 早期発見のためには検診を受けていただくことが重要です。
- 胃切除を受けた場合には、消化の良い食事を少量ずつ、ゆっくりと食べていただくことで、術後も快適な生活を過ごすことができます。
胃癌は、どんな病気?
- 胃癌とは胃の粘膜から発生する癌のことです。
- 日本では胃癌の95%以上にヘリコバクターピロリ菌(HP)が発癌に関与していると考えられています。
- 若年者におけるHP感染率の低下およびHP除菌治療の普及により、今後は減少していくことが予想されます。
- しかし、現時点では年間13万人の新たな患者がみられます。
- 胃癌は進行に伴い胃の深部へ浸潤していき、様々なところに転移を起こします。
胃癌になりやすいのはどんな人?原因は?
- 胃癌になりやすい人は下記のような人が挙げられます。
胃癌になりやすい人
- 胃潰瘍などになったことがある人
- 喫煙者
- 高塩分食をよく食べる人
- 過度な飲酒をする人
- 胃癌の原因の一つとしてヘリコバクターピロリ菌が挙げられます。ピロリ菌の指摘を受けた人も注意が必要です。
どんな症状がでるの?
- 早期胃癌では症状はありません。
- 進行胃癌になると下記のような症状が現れます。
胃癌の症状
- 胃の不快感
- 食欲が出ない
- お腹がはっている感じがする
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 早期胃癌は症状がありませんので、ほとんどの患者さんは人間ドックあるいは偶然に受けた内視鏡検査によって発見されています。
- 胃癌が疑われると、下記のような検査をすることになります。
検査の種類
- 上部消化管内視鏡検査:直接胃内を観察し、内視鏡下生検によって胃癌を確定診断することができます。早期に発見するために有用かつ不可欠です。
- 胃バリウム検査:バリウムという造影剤を飲んでもらい、胃の壁の凹凸を調べます。
- 腹部超音波検査:エコーとも呼ばれ、お腹の様々な臓器に異常がないかを調べます。胃癌の進行病期(ステージ)を判定するために行います。
- CT検査:超音波検査より精密にお腹の中を調べます。超音波検査と同様に胃癌の進行病期(ステージ)を判定するために行います。
- 胃癌の診断が得られた後に、腹部超音波検査、CT検査などを行います。
どんな治療があるの?
- 進行病期(ステージ)によって治療法が異なります。
- 早期胃癌のうち、粘膜内にとどまる場合は内視鏡で切除が可能です。
- 進行した胃癌は、原則リンパ節郭清(リンパ節に転移していることを疑い、あらかじめ取っておくこと)を伴う胃切除を行います。
- 病変が切除できない場合や、他の臓器に転移がみられる場合には、化学療法(抗がん剤治療など)が行われます。
- 化学療法と外科的胃切除を組み合わせた治療を行うことがあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 治療によって治療後に気をつけることが異なります。下記を参考にしてください。
内視鏡で切除した場合
- 切除した場所には胃潰瘍ができます。出血の可能性が切除後2週間あります。
- その間は刺激物を避けた消化の良い食事をしてください。飲酒や激しい運動は控えてください。
- 切除後の胃潰瘍が治るのには2ヵ月かかりますので、抗潰瘍薬を服用していただきます。
外科的手術(お腹を開けて手術)を受けた場合
- 胃切除後には食べたものが一気に小腸に流れ込むため、めまい、動悸などの症状が発生することがあります。
- 消化の良い食事を少なめに、1回の食事を30分以上かけてゆっくり食べることが重要です。
- 間食をこまめに取って栄養を補給しましょう。
化学療法を受けた場合
- 抗がん剤には効果がある反面、何かしらの副作用があります。
- 効果や副作用は人によって異なりますので、主治医から発現時期、副作用の症状、予防法などの説明を受けてください。
- 化学療法を受けている間、終了後に症状がある場合には、主治医に相談してください。
予防のためにできることは?
- ヘリコバクターピロリ菌は胃癌の発生原因として知られています。
- ヘリコバクターピロリ菌が陽性の場合には、除菌治療を受けることが予防につながります。
- ヘリコバクターピロリ菌が陰性になることで、胃癌の危険性が3分の1に減ります。
- ただしゼロにはなりませんので、除菌後も定期的に内視鏡検査を受けることが重要です。
- 塩分の取りすぎ、喫煙、過度な飲酒は胃癌の危険因子ですので、気をつけましょう。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 早期の癌であればあるほど治ると言えます。早期の胃癌では5年生存率は90%以上です。
追加の情報を手に入れるには?
- 胃癌治療ガイドライン2018(金原出版)が参考になります。
もっと知りたい! 胃癌のこと
胃癌の進行病期(ステージ)とは何ですか?
- 胃癌の壁深達度、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無により、進行病期を決定します。治療方針を決定するためには、進行病期はとても重要です。