スティーブンス・ジョンソン症候群:どんな病気?薬が原因なの?治療は?
更新日:2020/11/11
- 皮膚科専門医で特に重症薬疹を専門にしている渡辺 秀晃と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がスティーブンス・ジョンソン症候群になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- スティーブンス・ジョンソン症候群は薬剤内服中に生じる薬のアレルギーによる発疹症です。
- スティーブンス・ジョンソン症候群は皮膚粘膜眼症候群と言われているように、眼・口唇や口腔内・外陰部など粘膜が侵される病気です。
- 38℃以上の高熱、眼の充血・痛み、目やに、口内炎、体の赤い斑点などが最初に気づく自覚症状です。
- 後遺症として視力の低下、ひどい場合は失明を起こす可能性があります。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、どんな病気?
- スティーブンス・ジョンソン症候群は、高熱とともに、眼の充血や腫れ、口唇・外陰部粘膜のただれ、体の広い部分に赤い斑点(紅斑)や水ぶくれ(水疱)のできる病気です。
- 重い眼の症状を後遺症として残す場合や、全身の皮膚がむけてしまう中毒性表皮壊死症に移行する場合があります。
- 薬剤内服中・内服後や、風邪の症状の後に、上記に挙げた症状(高熱が生じ、眼の痛み、口内炎、外陰部の粘膜がただれるなどの症状)が出た場合は、皮膚科専門医のいる病院を受診してください。
スティーブンス・ジョンソン症候群と思ったら、どんなときに病院を受診したらよいの?
- お薬を飲んだ後、急に38度以上の熱が出て、加えて次のような症状がある場合は、医療機関の受診を検討してください。
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- 眼の充血、目やに、まぶたの腫れなどがある
- くちびるが腫れる、くちびるがただれた、口内炎ができた
- 体に斑点や水ぶくれができた
- 外陰部がただれた、排尿・排便時に痛みがある
救急車を呼ぶ場合
- 体がだるく起き上がることも難しい
- 眼の充血や目やに、眼の痛みがひどく、眼が開けにくい
- くちびるから出血する、口内炎がたくさんでき、食べられない
- 顔や体の広い範囲に斑点や水ぶくれができた
- 外陰部や肛門がただれて、痛みや出血がみられる
受診前によくなるために自分でできることは?
- 残念ながら、受診前に症状を良くしたり、症状の進行を止めることはできません。自分で市販薬を買って治そうとしたり、解熱剤を飲んだりせず、スティーブンス・ジョンソン症候群を疑う症状があったら、すぐに病院へ行ってください。
- スティーブンス・ジョンソン症候群は、お薬を飲んだ後、1週間から2週間くらいで起きることが多いです(5日以内に起きることもあります)。お薬を飲んだ後に下記の症状が無いかをご自分でチェックしてみてください。
薬を飲んだ後に注意してほしい症状
- 高熱(38℃以上)
- 眼の充血、目やに、まぶたの腫れ、眼が開けづらい
- くちびるの腫れ、くちびるからの出血、口内炎
- 外陰部部のただれ、排尿・排便時の痛み
スティーブンス・ジョンソン症候群になりやすいのはどんな人?原因は?
- あらゆる内服薬が原因で起きる可能性がありますが、感冒薬、抗生物質、痛み止め、てんかんの薬、尿酸を下げる薬などが原因として多い薬剤です。
- 現在のところ、いくつかの薬で遺伝的体質からスティーブンス・ジョンソン症候群になる可能性があることがわかっています。しかし、残念ながら多くの薬では、「なりやすい人となりにくい人」の理由は分かっていません。
- また、マイコプラズマ肺炎を含むマイコプラズマ感染症やヘルペス感染症にかかった後にスティーブンス・ジョンソン症候群になる人がいますが、その中でどのような人がなりやすいか、なりにくいかは分かっていません。
遺伝的な要因が分かっている薬
- カルバマゼピン:てんかんの薬
- アロプリノール:尿酸値が高い人が飲む薬
- ジアフェニルスルホン:一部の感染症や皮膚疾患に使う薬
どんな症状がでるの?
- 薬剤内服中もしくは内服後に、次のような症状がみられます。
スティーブンス・ジョンソン症候群の症状
- 38℃以上の発熱
- 眼の充血、目やに、まぶたの腫れ、眼が開けづらい
- くちびるのただれ、多発する口内炎、喉の痛み
- 陰部のただれ、排尿・排便時の痛み
- 皮膚の広い範囲が赤い、皮膚に水ぶくれができる
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病理組織検査:局所麻酔をして、皮膚を一部取ります。この病気の診断をつけるのにとても役立ちます。
- 血液検査:白血球数や肝臓・腎臓の機能をみます。
- 尿検査、便検査
- 胸部レントゲン写真、CT撮影:肺炎などの所見がないかを調べます。
どんな治療があるの?
内服したお薬が原因の場合
- まずは原因の薬を中止します。
- 補液をおこない、体の中の水分量や電解質のバランスを整えます。
- ステロイド剤を内服もしくは点滴を行います。ステロイドの量は症状によって医師が判断します。
- 眼の症状が強い場合はステロイド点眼・外用を行います。
- 外陰部や肛門のただれに対しては、ワセリンや抗生剤含有軟膏の外用を行います。
- 感染症を併発しないように抗菌剤を投与する場合があります。
ステロイドの全身投与が効かない場合
- 血漿交換療法やヒト免疫グロブリン製剤大量静注療法という方法を行うことがあります。
原因がマイコプラズマ感染症の場合
- エリスロマイシン、テトラサイクリンというマイコプラズマ感染症に効く抗菌剤を内服もしくは点滴します。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
入院時に眼の症状が強かった場合
- 退院後に眼の感染症が起きたり、視力の低下を起こすことがあります。
- そのような症状があった場合は、眼科を紹介してもらい受診して下さい。
入院時に呼吸器の症状が強かった場合
- 肺機能の低下がみられる場合がありますので、担当医と相談し呼吸器内科を紹介してもらい受診して下さい。
ステロイド治療を行っていた場合
- 感染症を起こしやすくなっているため、風邪のような症状が見られた場合はすぐに医療機関を受診してください。
- 骨がもろくなり、骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症になりやすくなります。骨が折れたかもしれないと思った場合は、すぐに医療機関を受診してください。
予防のためにできることは?
- これまでにお薬を飲んだ後に皮疹が出るなどの異常があった薬は、医師や薬剤師に相談してから、飲むかどうか決めてください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 症状にもよりますが、おおむね1ヶ月ほどの入院治療が必要となる場合が多いです。
追加の情報を手に入れるには?
自分の症状がスティーブンス・ジョンソン症候群かどうかを知りたい場合
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「一般の方向け」(https://www.pmda.go.jp/pnavi-01.html)
スティーブンス・ジョンソン症候群にかかった後の医療費の助成などについて知りたい場合
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の「医薬品副作用救済制度」(http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/index.html)
もっと知りたい! スティーブンス・ジョンソン症候群
スティーブンス・ジョンソン症候群と他の薬疹は何が違うの?
- スティーブンス・ジョンソン症候群は、他の一般的な薬疹と比べて急速に進行する、眼の後遺症が残ることが多い、死亡する場合がある(4.5%)点が異なります。
- このような重い症状があるため、スティーブンス・ジョンソン症候群は最重症薬疹に分類されています。