ステロイド内服:どんな薬?どういう時に必要になるの?副作用はあるの?
更新日:2020/11/11
- リウマチ・膠原病を専門としている河野 肇と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとステロイドのお薬を処方され、どんな薬だろうと思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- ステロイドとは、副腎【ふくじん】という臓器で作られる副腎皮質ホルモンの1つで、炎症や免疫が過剰になるさまざまな病気の治療に使われています。
- 自己判断で急に飲むのを止めることは危険ですのでやめてください。
- 注意が必要なさまざまな副作用があります。副作用を減らすために、手洗い、うがいのほか、身体に良い食事と適切な運動を心掛けてください。
ステロイドって何?
- ステロイドとは、私たちの体の中にある副腎【ふくじん】という臓器で作られる副腎皮質ホルモンの1つです。通常は「副腎皮質ステロイド」とされていますが、略して「ステロイド」と呼ばれます。
- ステロイドを薬として使用すると、体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑えたりする作用があります。炎症や免疫が過剰になるさまざまな病気の治療に使われています。
コラム:男性ステロイド
- 筋肉増強作用のある男性ホルモンもステロイドと言われますが、薬剤として使用されるのは主に副腎皮質ステロイドです。
服用中に注意することは?
自己判断で急に内服をやめないでください
- お薬としてステロイドを内服した場合、副腎はステロイドを作る量を調節し、場合によっては作らなくなります。ステロイドを作らない期間が一定以上になると、副腎の働きがおとろえて、必要量のステロイドをすぐに作ることができなくなります。
- ですから、急にお薬を飲まなくなると、体の中のステロイドホルモンが不足し、だるさ、吐き気、頭痛、血圧低下などの症状があらわれることがあります(ステロイド離脱症候群といいます)。お薬を止めるタイミングは医師と十分にご相談ください。
コラム:副腎の作るステロイド
- 体内において、ステロイドは副腎プレドニゾロン換算で2.5~5mg程度が作られています。
ストレスがかかる時には量を増やす必要があることもあります
- 重篤な感染症や手術などで、身体にストレスがかかるときには、ステロイドの量を増やすことが必要な場合があります。
ステロイドにはどんな副作用があるの?その対策は?
- ステロイドには多様な副作用がありますが、ステロイドの量が多くなるほど副作用は強く出ることが多いです。
- ステロイドが減量・中止されると改善する副作用も多いですが、骨粗鬆症や白内障など、後遺症として残る可能性があるものもあります。
- また、ステロイドの量や体質によっては副作用が全く認められないこともあります。
免疫力低下
- 体の抵抗力(免疫力)が低下するために、感染症にかかりやすくなります。インフルエンザなど、ふつうに免疫力があってもかかる病気だけではなく、ニューモシスチス肺炎や帯状疱疹など、通常ならばかからない感染症が特徴的です。ふつうの風邪も、肺炎に進展しやすくなります。
- ステロイドを多く飲んでいる時期には、ニューモシスチス肺炎予防のためにバクタ配合錠なども内服することがあります。感染症予防のために、日常生活では手洗い、うがい、マスク着用、人混みを避けるなどの一般的な注意が必要です。
骨粗鬆症
- ステロイドを内服すると、骨がもろくなりやすくなります。誘因がなくても背骨を圧迫骨折したり、ちょっとした転倒で足の付け根の骨を骨折しやすくなります。
- 通常は予防薬としてビタミンD、カルシウムと一緒に骨粗鬆症を予防する薬(ビスホスホネート薬)を内服します。骨密度を定期的に測定して、必要な時には治療を強化します。
- 歯周病があると骨粗鬆症の治療において問題となる可能性がありますので定期的な歯科受診をしてください。また、適切な筋トレを行うと骨粗鬆症対策となります。
糖尿病
- ステロイドを内服すると血糖が上がりやすくなります。
- 食事療法や運動療法による予防が大切ですが、インスリンの注射や内服薬による糖尿病治療が必要な場合もあります。
消化性潰瘍
- 消化管の粘膜が弱くなるため、胃潰瘍などができやすくなります。
- 胃酸を抑制する薬を予防的に内服します。
精神症状
- 気分が高揚して眠れなくなったり、逆にうつ状態になることがあります。
- 眠れるように睡眠薬を内服していただくことがあります。また、うつ状態が起きた場合には、抗うつ薬で対処します。
高血圧症、むくみ
- ステロイドには体内に水分と塩分を溜める作用があるため、むくみが生じます。
- 塩分を制限して、降圧薬で対処します。
脂質異常症、動脈硬化
- 血中のコレステロールや中性脂肪が高くなります。高血圧症とあいまって、動脈硬化が進みやすくなります。
- 食事に注意し、必要であれば、コレステロールや中性脂肪を下げる薬を内服していただきます。
血栓症
- 血管の中で血液が固まってしまう血栓症が起こりやすくなります。特に、静脈に血栓ができて、片方の足が痛みをもってむくんだり(深部静脈血栓症【しんぶじょうみゃくけっせんしょう】といいます)、胸の痛みがおきる場合(肺血栓症【はいけっせんしょう】といいます)には注意が必要です。
大腿骨頭壊死症
- 股関節が痛むことで気づきます。この症状が出現するのは、ステロイドを飲み始めてから数カ月後以降です。
白内障、緑内障
- ステロイドを内服すると白内障が早く進みます。視力低下が進んで日常生活に支障をきたすようになったら、手術で対応します。
- 眼圧が上がり、緑内障になることがあります。当初は症状がないことがほとんどですので、ステロイドを飲み始めたら眼圧を測定して、緑内障が進行していないか確認します。点眼薬、手術にて対処します。
満月様顔貌(ムーンフェイス)、肥満
- ステロイドにより食欲が進み、太りやすくなります。また、脂肪は顔面や肩、腹部につきやすく、手足にはつきにくいという特徴があり、顔が丸くなります。
- 食事の内容や量に注意が必要です。
その他
- にきび、膵炎、増毛、脱毛、生理不順、筋力低下などが見られることがあります。
副作用を減らすために自分でできることはあるの?
- 手洗い 、うがいなどの基本的な感染症予防のほか、骨粗鬆症や動脈硬化を予防するための身体に良い食事と筋トレなどの適切な運動を心掛けてください。