ブドウ球菌:どんな病気の原因になるの?感染経路は?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の矢野 晴美と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がブドウ球菌に感染してしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 皮膚の常在ブドウ球菌の多くは、ヒトの皮膚にいてヒトと共生しています。通常、ヒトに病気を起こすことはありません。
- 一方で、ブドウ球菌の内でも、黄色ブドウ球菌は、ヒトに重篤な病気を起こすことが知られている菌です。
- 特に皮膚がなんらかの理由でバリアが弱まったときに皮膚から体に侵入し血液の中に感染症を起こすことが知られます。
- 黄色ブドウ球菌は健康な人にも、抵抗力が弱った人にも、いったん体内に入った場合には重篤な感染症を起こします。
- 治療としては抗菌薬の投与を中心として行います。
- 予防には皮膚の健康を保ったり、医療者が清潔な処置をすることが大切です。
ブドウ球菌は、どんな病気?
- ブドウ球菌は、普段皮膚にいる菌と黄色ブドウ球菌に分類できます。
- ブドウ球菌の多くは、ヒトの皮膚にいてヒトと共生しています。通常、ヒトに病気を起こすことはありません。
- 一方で、黄色ブドウ球菌ヒトに重篤な病気を起こすことが知られている菌です。
- 特に皮膚がなんらかの理由でバリアが弱まったときに皮膚から体に侵入し血液の中に感染症を起こすことが知られます。
- 黄色ブドウ球菌はばい菌の王様のような菌で、健康な人にも、抵抗力が弱った人にも、いったん体内に入った場合には重篤な感染症を起こすことが知られています。
ブドウ球菌と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 下記のような方が突然の発熱や悪寒が生じた場合、黄色ブドウ球菌が血液の中に入っている可能性がありますので、すぐに病院を受診してください。
ブドウ球菌による感染症が起こっている可能性がある人
- 心臓に人工弁、心臓内のペースメーカーなど心臓内の医療機器が入っている方
- 人工血管がある方
- 人工関節がある方
- 手術で背中などに金具が入っている方
- アトピー性皮膚炎や、そのほか皮膚病がある方
- 最近手術をした方
- 最近入院したことがある方
ブドウ球菌になりやすいのはどんな人?原因は?
- 黄色ブドウ球菌による感染症になりやすい人というのはありません。
- 黄色ブドウ球菌は、健康な人にも、抵抗力が弱った人にも、病気を起こすことが知られています。
- 入院していろいろな医療器具が皮膚を通して体に挿入されたときには、皮膚の常在菌のブドウ球菌も黄色ブドウ球菌も、菌が体に入りやすくなり、感染症を起こすことが知られています。
どんな症状がでるの?
皮膚の常在ブドウ球菌の場合
- 皮膚の常在ブドウ球菌は、通常、症状を起こしません。
- 入院して医療器具が挿入された場合、医療器具を通して体内に侵入し下記のような症状を起こすことがあります。
皮膚の常在ブドウ球菌による症状
- 発熱
- 寒気
- ふるえ
黄色ブドウ球菌の場合
- 黄色ブドウ球菌は、皮膚を通して体内に入った場合には、下記のような症状を起こします。
黄色ブドウ球菌による症状
- 発熱
- 寒気
- ふるえ
- 菌が入った皮膚や筋肉の発赤、腫れ
- 体内で膿が溜まった場合、痛み
- 頭痛
- 意識がない、もうろうとする
- 黄色ブドウ球菌の一番恐ろしい点は、血液の中に入って体中に膿をつくる可能性がある点です。
- 菌がいるところが赤く腫れたり、痛みが出たりします。
- 急に発熱し、皮膚が赤く腫れたり、痛みが出たりした場合、黄色ブドウ球菌が症状を起こしている可能性が高いです。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- ブドウ球菌を疑った場合、菌がいるかどうかの検査が中心になります。
- 菌がいるかどうかの検査を培養検査と言います。
- 培養は、血液、痰、膿などで行います。
- 通常、菌がいれば、菌が培養されるまでに24-48時間かかります。
どんな治療があるの?
- ブドウ球菌が症状を起こした場合には、薬物治療を行います。
- 薬は抗生物質による治療です。
- 外来では内服薬、入院した場合には点滴薬での治療を行います。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- うつることはありませんが、黄色ブドウ球菌は、皮膚が破たんしたことで体内に侵入し、症状を起こします。
- 予防するには、下記のようなことが大切です。
予防のために
- 皮膚の健康を保つ
- 医療関係者が手指の清潔を保つ対策をする
- 例えば、アトピー性皮膚炎、怪我をして皮膚が破たんしたときなどには、しっかりケアをすることが大切です。
- また病院のなかでは、医療に関連した感染症として病気を起こすことが知られています。
- 病院のなかでは、職員が、手洗いを中心とする標準予防策と言われる予防策を徹底することが重要です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 早期に診断し、標準的な抗生物質を使用すれば通常治ります。
- ただし、抵抗力が弱った人の場合には、重症化することがあり、時には命にかかわることがあります。
- 血液の中に感染した場合には、菌がいなくなるように、一定期間(通常2週間以上)、点滴薬で治療を行います。
- 体内に膿ができている場合には、膿がなくなるまで長期にわたり治療が必要な場合があります。
- 最低4-6週間程度の点滴薬による治療が必要になります。
- 血液の検査で、血液のなかに黄色ブドウ球菌がいないことが確認されれば、通常、治療はうまくいく方向になります。