血糖降下薬(内服):どんな薬? どのような種類があるの? 飲み方や注意点、副作用は?
更新日:2020/11/11
- 糖尿病専門医の園田 紀之と申します。
- このページに来ていただいた方は、「2型糖尿病になってしまったけど、薬を飲むことが不安」と感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に、治療薬について役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 2型糖尿病の治療法は食事療法と運動療法に加えて薬物療法があります。
- 薬物療法には飲み薬と注射薬があり、ここでは主に飲み薬について解説します。
- 2型糖尿病の飲み薬にはいくつかの種類があり、ご自身の年齢、体格、血糖値の上がり方やインスリンを出す力がどれくらい残っているか、などによって選択されます。
- 副作用(特に低血糖)に注意しながら、血糖値を良い状態に保つことが大切です。
どんなお薬があるの?
- 2型糖尿病の飲み薬は大きく分けて、次の3つがあります。
2型糖尿病の飲み薬の種類
- インスリンを出しやすくするお薬
- インスリンをききやすくするお薬
- 糖の吸収や排泄【はいせつ】を調整するお薬
- お薬の値段はさまざまですが、最近開発されたお薬ほど高価な傾向にあります。
- 安価で古くからあるお薬にはこれまで多くの経験があり、2型糖尿病治療になくてはならないお薬も多いです。
- インスリンを出しやすくするお薬には、飲み薬のスルホニル尿素(SU:エスユー)薬、速効型インスリン分泌促進【ぶんぴつそくしん】薬(グリニド薬)、DPP-4(ディーピーピーフォー)阻害薬【そがいやく】があります。
- インスリンがききにくい方(インスリン抵抗性【ていこうせい】が強い方)には、インスリンをききやすくするお薬として、飲み薬のビグアナイド薬とチアゾリジン薬を使います。
- 糖そのものの吸収をゆっくりにする、またはからだの中の糖を積極的に外に出すお薬にはα—グルコシダーゼ阻害薬(α−GI:アルファー・ジーアイ)とSGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬があります。
- これらを1つあるいはいくつかを組み合わせて治療を行いますが、それぞれのお薬の特徴は以下をご覧ください。
どんな目的で飲むの?
- 糖尿病の患者さんの血糖をコントロールする方法の基本は、食事と運動です。
- 2型糖尿病では特に、まずは食事と運動を行い、血糖値をみながら必要に応じて、飲み薬を使います。
- お薬の種類は、次にあげるような基準による患者さん1人ひとりの糖尿病の状態によって決められます。
お薬の種類を決める患者さんの状態
- 体格(肥満【ひまん】があるかどうか)
- インスリンをつくる力がどのくらい残っているか
- 合併症【がっぺいしょう】の状態
- 2型糖尿病であっても、次のようなときは、インスリン注射が必要となることもあります。
2型糖尿病でインスリン注射が必要なとき
- 自分で出すインスリンの量が不十分
- 飲み薬で十分に血糖をコントロールできない
どのように飲むの?
- 2型糖尿病の飲み薬は食前でなくてはならないもの、食前でも食後でもよいものなど、お薬の種類によって異なります。
- 正しい飲み方を守らないとお薬の効果が十分に発揮できません。
- お薬は1人ひとり異なりますので、医師や薬剤師の指示に従って正しい飲み方で服用してください。
お薬はいつまで使うの? 自分でやめてもいいの?
- お薬によって効果や副作用が異なります。
- 血糖コントロールがうまくいけば、お薬を減らすことや中止することもできます。
- お薬を減らしたり中止するのは、主治医とよく相談し、決して自分の判断でやめないようにしてください。
副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの? 治療中の注意点は?
低血糖
- 血糖値を下げるお薬の重要な副作用として、血糖値が正常な値より低くなる低血糖があります。
- 低血糖は、お薬がききすぎたり、お薬を飲んだのに食事がとれないときに起こりやすいです。
- お薬の種類により低血糖を起こしやすいものとそうでないものがありますので、ご自分の飲んでいるお薬をよく理解することが大切です。
- 低血糖にともなう徴候【ちょうこう】(サイン)には次のようなものがあります。
低血糖の徴候
- 動悸
- 冷や汗
- 空腹感
- これらのサインを見逃して放置すると、昏睡【こんすい】など命にかかわる状態になることがありますので、低血糖のサインを見逃さないようにすることが大切です。
- 低血糖が起こった際の対処法には次のようなものがあります。
低血糖への対処法
- 軽症の場合:糖分を補給することですみやかに回復します。
- 意識がないとき:まわりの人の介助や病院で注射が必要なことがあります。
- 高齢者、肝臓や腎臓の働きが弱くなっている人はお薬の副作用を生じやすくなります。
- お薬ごとに起こりやすい副作用が違いますので、医師や薬剤師の説明をよく聞いておくようにしてください。
薬剤の種類と特徴
薬剤にはどのような種類があるの? それぞれの特徴は?
- 現在使用されている薬剤を紹介します。また、これら以外にも開発中の薬が多くあります。
スルホニル尿素(SU)薬
- 膵臓【すいぞう】のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させます。
- β細胞にインスリンをつくる能力が残っている患者さんに使用します。
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
- SU薬と同じようにインスリン分泌を促進し血糖値を低下させます。
- SU薬に比べて、血中への吸収と血中からの消失が速いため、効果が現れるまでの時間と効果が持続している時間が非常に短いのが特徴で、食後の高血糖を抑えます。
- 食事の直前(5~10分以内)に服用します。
DPP-4阻害薬
- 食事をしたときに腸管からでて、インスリンの分泌を刺激するインクレチンというホルモンの分解を抑制します。
- そのことにより、インスリンの分泌を促進し、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制して血糖値を低下させます。
ビグアナイド薬
- 肝臓での糖の新生や消化管からの糖の吸収を抑えるなど、膵臓以外に作用してインスリン分泌に関係なく血糖値を低下させます。
- 体重を増加させにくい薬です。
チアゾリジン薬
- 脂肪細胞へ作用してインスリン抵抗性を改善して血糖を下げます。
α-グルコシダーゼ阻害薬
- 食事から摂取した炭水化物の分解を抑えることにより、小腸からの糖の吸収を遅らせて、食後の高血糖を抑える薬です。
- 食事の直前に服用します。
SGLT2阻害薬
- 腎臓で排出されるブドウ糖の再吸収を抑えて、尿に糖を多く出すことで血糖値を低下させます。