椎間板ヘルニア:どんな時に病院へ行けばいい?よくなるためにできることは?
更新日:2020/11/11
- 脊椎外科専門医の井上 玄と申します。
- このページに来て頂いた方は、首や腰の痛み、あるいは手や足の痛みや痺れでお悩みで、自分が椎間板ヘルニアではないかと感じていらっしゃるかもしれません。
- 椎間板ヘルニアにも色々と種類があり、一刻も早い治療を有するものも含まれるため、不安を感じておられるかもしれません。
- 私が日々の診察の中で、「注意しなければならないこと」、「よく質問を受けること」を中心にまとめました。
目次
まとめ
- 椎間板ヘルニアとは、背骨を形作っている「脊椎」という一つ一つの骨をつなぐ軟骨のクッションである「椎間板」が後ろに出て、神経が押されることにより、痛みやしびれが起こる病気です。
- 腰椎椎間板ヘルニアは多くの人が自然に治癒する疾患です。 しかし、椎間板ヘルニアの中には、すぐに治療をしないと症状が長く残存してしまうものがあります。
- 診断の難しい椎間板ヘルニアの中には、実は他の病気が隠れていることもあります。
椎間板ヘルニアは、どんな病気?
- 背骨を形作っている「脊椎」という一つ一つの骨をつなぐ軟骨のクッションである「椎間板」が後ろに出て、神経がおされることで、痛みやしびれが起こる病気です。
- 椎間板の生じる部位や大きさなどにより、症状は様々です。予後も異なります。
- 軽い症状である場合は、投薬やリハビリ、あるいは自然経過で症状が軽快する場合もありますが、症状が重度である場合は、その後の経過などを考慮して手術を必要とする場合もあります。
椎間板ヘルニアと思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?
- 次のような症状がある場合は、椎間板ヘルニアの可能性があるので、病院に行きましょう。
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- 日常生活に支障が出るほど、痛い
- 手足の力が入らなくなってきていると感じる
- 歩行や寝返りなど、いつもできる動作がやりにくい
- おしっこを出すのに時間がかかる(この症状だけが現れることは稀ですが、全くないわけではありません)
救急車を呼ぶ場合
- 通常は、救急車を呼ばなければならない疾患ではありません。しかし急に排尿が困難になった場合などは、なるべく急いで病院に行きましょう。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 単純な腰や首の痛みだけの症状で、手足に痛みやしびれ、筋力の低下がない場合、数日の自然経過で良くなることがあります。ただし、動いていなくても痛みがある、あるいは痛みがどんどん悪くなっている場合は、病院に行きましょう。
- 症状が悪くなる動作があるときは、その動作を避けた方が良いでしょう。症状が悪くなったと感じたら、すぐに病院に行きましょう。
- 安静にしていても痛みやしびれがあるか、発熱など他に体の調子が悪いところはないか、ご自身の持病や飲んでいる薬などの情報を整理しておいて、受診時に必要な情報を効率よく伝えると、医師は本当に椎間板ヘルニアであるかの判断がより正確に可能になります。
椎間板ヘルニアになりやすいのはどんな人?原因は?
- 椎間板ヘルニアは腰にできる腰椎椎間板ヘルニアと、くびにできる頚椎椎間板ヘルニア、まれに背中にできる胸椎椎間板ヘルニアがあります。腰椎椎間板ヘルニアは20〜40歳代、頚椎椎間板ヘルニアは30〜50歳代の比較的若い世代がなりやすいです。
- 腰椎椎間板ヘルニアは、ご家族に同じ病気の方がいると好発しやすい病気です。
- 詳しい原因はまだわかっていません。しかし重労働、車両の運転、喫煙、スポーツなどをやりすぎると、症状は治りにくくなります。
どんな症状がでるの?
- すべての症状がでる患者さんはほとんどいません。いくつかの症状に当てはまれば、椎間板ヘルニアの可能性があります。
椎間板ヘルニアの症状
- くびの後ろ、腰や背中が痛む
- 手や足が痛い、しびれる
- 頚椎椎間板ヘルニアでは、首を後ろに曲げたとき、腕がしびれたり、痛む
- 腰椎椎間板ヘルニアでは、洗顔などで腰を前に曲げたとき、おしりや足が痛い、しびれる
- 筋力の低下、ものを落としやすい、足がつまずきやすい
- 肩が上がらない、肘が曲げられない、膝立てが出来ない
- 箸が使いづらい、ボタンをかけにくい、字が書きづらいなど細かい動作がしづらくなった
- おしっこがしづらい、おしっこの勢いが弱い、便秘
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 次の3つは必ず行います。ヘルニアの大きさや位置、他の病気と区別するために行います。
椎間板ヘルニアの検査
- レントゲン検査
- MRI検査
- 神経学的検査
- 精密検査として、下記を行う場合もあります。
精密検査
- CT検査
- 筋電図:どの部分が障害されているかをみます。
- 神経根ブロック:手術を行う場合、障害されている部分を確認します。
どんな治療があるの?
- ヘルニアが生じる部位により、優先すべき治療法が異なります。
- 腰椎のヘルニアでは、まずは手術以外の方法を試みることが多いですが、頚椎や胸椎のヘルニアには、早急に手術を要する場合もあります。
- 痛みや痺れに対しては、痛み止めやビタミンB12製剤などを使います。
- 神経根ブロックで痛みが良くなる可能性があります。しかし、痛み以外の症状は良くなりません。
- いずれの治療を行うにしても、神経症状の重症度の評価が必要です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 自覚的に症状が良くなっているかどうかをご自身で見極めることも重要です。効果がない場合、その治療を引き続き継続した方が良いのか、それとも中止・変更した方が良いのかを担当医師に相談して下さい。
- 治療を開始してから、新しい症状がでたり、体調が悪くなった場合はすぐに医師に相談しましょう。特に、痛みがむしろひどくなった場合は、治療を中止した方が良い場合もあります。
予防のためにできることは?
- ヘルニアの部分に負荷をかけすぎないようにしましょう。どの程度の負荷をかけて良いかは個々の症状により異なるため、担当医師に相談して下さい。
- 椎間板への過剰な負担がヘルニアの発症に関与するとも言われています。体幹の筋力を蓄える運動を定期的に行ったり、体重を過剰に増やしすぎないようにしましょう。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 椎間板ヘルニアは自然の経過で、症状が良くなる病気です。自覚症状に患者さんが耐えることができても、神経症状の表れ方によっては、手術が勧められる場合もあります。
- 腰椎椎間板ヘルニアに関しては、90%以上の患者さんが治療により、症状が軽くなると言われています。良くなる期間はだいたい3か月程度が目安と言われますが、もっと早期に良くなることもあります。
- 頚椎や胸椎の椎間板ヘルニアは、神経の麻痺をきたす場合もあり、その場合は症状により、手術の適応が判断されます。治療方針を病院で相談しましょう。
追加の情報を手に入れるには?
- 下記のページを参考にしてみてください。
- 日本整形外科学会のサイト
- https://www.joa.or.jp/index.html
- 日本脊椎脊髄病学会のサイト
- http://www.jssr.gr.jp
もっと知りたい! 椎間板ヘルニアのこと
早めに病院を受診したほうがよいケース
- 下記のような症状がある場合、早めに病院に行きましょう。
診療のガイドライン
- 時間や活動性に関係のない痛み
- 胸部痛
- がん、ステロイド治療、HIV感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及ぶ神経症状
- 発熱