シェーグレン症候群:原因はストレス?症状は?検査や診断基準は?予後はどうなの?
更新日:2020/11/11
- リウマチ専門医の坪井 洋人、住田 孝之と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がシェーグレン症候群になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- シェーグレン症候群は、唾液を作る場所である唾液腺や涙を作る場所である涙腺の炎症によって、口の中や目が乾燥してしまう病気です。
- シェーグレン症候群では診断が確定したら、唾液腺・涙腺以外の臓器に病変があるかどうか、他の膠原病の合併がないかを判断し、これらを基に病型を決定して、治療方針を定めます。
- 基本的に治療は唾液を増やす薬の内服や目薬で行いますが、内臓に病変がある場合には、ステロイドや免疫抑制薬を使用することがあります。
シェーグレン症候群は、どんな病気?
- シェーグレン症候群は、唾液を作る唾液腺や涙を作る涙腺の炎症が主な病態です。
- 自分の免疫が自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の1つです。抗SS-A抗体/抗SS-B抗体という自己抗体の出現がみられます。
- シェーグレン症候群は、ゆっくりと症状が進行する慢性型の病気で、炎症をきたし、他の臓器の病変を伴うことがあります。このような病気はまとめて膠原病と呼ばれ、シェーグレン症候群は膠原病の1つです。
- シェーグレン症候群は以下のように分類することができます。どれに分類されるかによって治療方法が決まります。
一次性
- 他の膠原病を合併しない。
- 腺型:唾液腺と涙腺の炎症のみの病型。
- 腺外型:唾液腺と涙腺以外の臓器の病変を伴う病型
二次性
- 他の膠原病を合併する。
シェーグレン症候群と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 口の乾燥(ドライマウス)や目の乾燥(ドライアイ)が気になる場合や、虫歯が頻繁におこるとき、一度歯科や眼科で検査を受けることをおすすめします。
- 無症状でも、健診での血液検査の異常や胸部レントゲン写真の異常から病気が発覚することがありますので、定期的な健診を受けましょう。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 高度のドライアイのときに、防腐剤入りの点眼薬を使用すると、状態が悪くなる場合がありますので、市販の点眼薬の使用には注意が必要です。
- ドライマウスでは、虫歯や口腔内カンジダ症(カビの一種)のリスクが高くなりますので、口腔ケアと定期的な歯科受診が重要です。
シェーグレン症候群になりやすいのはどんな人?原因は?
- 残念ながら、シェーグレン症候群の根本的な原因はまだ解明されていません。
- 遺伝的要因、環境要因(感染症など)、ホルモンの要因などが合わさって、自分の免疫が自分の体を攻撃してしまい、自分の体を攻撃するリンパ球や、自分の体に反応してしまう自己抗体によって、唾液腺、涙腺、その他の臓器に炎症が生じます。
- 男性よりも女性の方が、圧倒的にシェーグレン症候群になりやすいとされています。
どんな症状がでるの?
- シェーグレン症候群は主に唾液腺・涙腺の症状(腺病変)と唾液腺・涙腺以外の臓器の症状(腺外病変)に分かれます。
- 下記にそれぞれの症状についてまとめました。
腺病変(唾液腺炎、涙腺炎)
- 唾液腺炎:唾液腺の腫れ、つばが出ない、口の乾燥、虫歯、口腔カンジダ症、口の痛み、乾いた食べ物が食べにくい、飲み込みがしにくい
- 涙腺炎:涙が出ない、目の乾燥、目がゴロゴロする、目に砂や砂利が入った感じ、乾燥性角結膜炎、視機能の低下
腺外病変(唾液腺・涙腺以外の臓器病変)
- 関節の腫れ、関節痛、レイノー現象、リンパ節の腫れなど
- 他に、発熱、体のだるさ、咳、息切れ、むくみ、脱力、筋肉痛、筋力低下、しびれ、麻痺、足にできるあざ(紫斑)などがあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 診断基準として、以下の4項目を検査し、2項目以上が陽性の場合、シェーグレン症候群と診断します。
- ①唾液腺または涙腺の生検:組織を一部取って、顕微鏡で調べます。
- ②口腔検査:耳下腺造影、唾液分泌量、唾液腺シンチグラフィなどがあります。
- ③眼科検査:涙液分泌量、目の染色検査などがあります。
- ④血液検査:抗SS-A抗体、抗SS-B抗体があるかどうか調べます。
- シェーグレン症候群が疑われた場合には、前述の4項目の検査に加えて、腺外病変(唾液腺・涙腺以外の臓器病変)や他の膠原病の合併がないかどうか、血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー、CT、MRIなどを行います。
どんな治療があるの?
- 病型診断(一次性か二次性か、腺型か腺外型か)に基づいて、治療方針を決定します。
腺型一次性シェーグレン症候群の場合(腺病変の治療)
- 局所療法:点眼薬、涙点プラグ(涙の出口を塞ぐ治療)、人工唾液
- 内服薬:唾液分泌刺激薬
腺外型一次性シェーグレン症候群の場合(腺外病変の治療)
- 肺、腎臓、筋肉、神経、血管などの重要な臓器の病変が進行している場合には、中等量以上のステロイド、免疫抑制薬を使用します。
- ステロイドや免疫抑制薬で症状が良くならない場合には、血漿交換療法(血液の成分である血漿を入れ換える治療)や生物学的製剤という薬の使用も考慮します。
- 関節痛・関節炎に対しては、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用います。効果がみられなかったり、関節炎が高度の場合には少量のステロイドを考慮します。
- 皮疹に対しては、ステロイド外用を用い、重度の場合にはステロイドの内服を考慮します。
二次性シェーグレン症候群の場合
- 合併する他の膠原病により、治療方法は異なります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 治療で用いられる薬は様々な副作用があるため、決められた用量・用法で使用することが大事です。
- 以下にそれぞれの治療法の副作用をまとめました。
- ステロイドの副作用:感染症、高血圧、脂質異常症、糖尿病、食欲亢進、肥満、骨粗鬆症、不眠、便秘、白内障、緑内障など
- 唾液分泌刺激薬の副作用:消化器症状(腹痛など)、発汗など
- ステロイドは病気の状況をみながら徐々に減量し、可能であれば中止を検討します。また、唾液分泌刺激薬の副作用の症状がみられた場合には、薬剤の変更や減量、少量からの再開などを検討します。
- ドライアイに用いる点眼薬は1日に頻回の点眼(4~6回/日)が必要です。眼科の先生の指示に従って、適切な点眼方法を守りましょう。
予防のためにできることは?
- シェーグレン症候群の根本の原因はいまだ不明のため、現時点では確実な予防方法はありません。
- ドライアイ、ドライマウス、検査異常などからシェーグレン症候群が疑われた場合には、放置せずに医療機関で検査を行い、診断の確定と病型診断を受けましょう。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 残念ながら、現時点ではシェーグレン症候群を完治させる治療は確立されていません。
- 重要な臓器(肺、腎臓、筋肉、神経、血管など)の病変の進行が早い場合は、ステロイドや免疫抑制薬を適切に用いて、病気の勢いを抑え、進行がないようにすることが治療目標となります。
- 病気の勢いが抑えられたら、ステロイドや免疫抑制薬の減量や中止を検討しますが、その方法や期間は確立されていません。
- 一方で唾液腺炎や涙腺炎に対するステロイドや免疫抑制薬の効果は分かっておらず、現時点ではあらわれている症状に対して、その症状を和らげる対症療法というものが主体となっています。
追加の情報を手に入れるには?
- 難病情報センターのホームページに病気の解説(一般利用者向け)が公開されています。
- http://www.nanbyou.or.jp/ entry/111
もっと知りたい! シェーグレン症候群のこと
指定難病について
- シェーグレン症候群は現在国の指定難病(指定難病53)に認定されており、診断基準と重症度分類を満たした場合には、医療費助成の対象となります。詳細に関しては、主治医の先生、または最寄りの保健所にご確認ください。
妊娠をご希望の方へ
- 抗SS-A抗体が陽性の妊婦では、胎児心ブロック(約1%)、新生児ループス(約10%)など、胎児に影響を及ぼす可能性があります。妊娠をご希望の際は、主治医の先生に加えて、産婦人科、小児科の先生とも事前によく相談し、計画的な妊娠が必要です。