敗血症:敗血症とは?敗血症性ショックって何?原因や症状は?治療はどうするの?
更新日:2020/11/11
- 救急医学を専門としている井上 茂亮と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると身近な方が「敗血症の危険がある」と医師に指摘され、不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 敗血症とは、体の中で細菌が繁殖し、生命を脅かす状態です。
- 敗血症はたいてい、肺炎、腎臓や尿路の感染、皮膚、腸管の感染と関係しています。
- ショックや著しい臓器障害をきたす場合は、死に至る場合もあります。
- 敗血症になるリスクが高い方(糖尿病や癌、免疫抑制剤を飲んでいる、高齢、幼児など)で、重症の感染症の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
敗血症は、どんな病気?
- 敗血症とは、細菌が感染して体の中で繁殖してしまい、組織や臓器が正常に働かなくなり、生命を脅かす状態になったときの生体の反応です。
- 集中治療室(ICU)での全身管理および治療が必要になります。
- ショックや著しい臓器障害をきたした場合は、死に至ることもあります。
- 敗血症はたいてい、肺の感染症(肺炎)、尿路感染症(腎臓)、皮膚および腸管の感染と関係して起こります。
敗血症と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- もし細菌に感染した可能性があり、敗血症を疑う症状(発熱や低血圧、心拍数が高かったり、荒い呼吸)があれば、すぐに医療機関を受診してください。敗血症は救急疾患です。
- もし感染に対する症状の改善がなければ、速やかに敗血症について医師にお尋ねください。
- もしあなたやご家族が、敗血症になるリスクが高く(免疫機能が低下している方、ご高齢の方、幼児の方)、発熱・嘔吐・意識が遠のくような症状がある場合、すぐに医療機関にご相談ください。
敗血症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 敗血症はいつ、誰にでも、どんな感染症からも発生し、体のいかなる部位にも影響をあたえることがあります。ちょっとした感染症の後で起こることさえあります。
- 特に、免疫機能が低下している方、また弱いとされている方は特に注意が必要です。
敗血症になるリスクが高い方
- 糖尿病、がんや自己免疫疾患などの慢性的な病気を持っている方
- 65歳以上の高齢者
- 1 歳未満の乳幼児
どんな症状がでるの?
- 敗血症になると、一つの症状や前触れがあることはなく、発症すると同時に様々な症状が組み合わさってあらわれてきます。
- ただ、敗血症は感染症の結果として起こることなので、嘔吐・下痢やのどの痛みなど、普段よくみる症状を伴うこともあります。
敗血症の症状
- 嘔吐
- 下痢
- のどの痛み
- 悪寒とふるえ
- 発熱
- 身体の痛み
- 身体の不快感
- 冷や汗が出る(皮膚が冷たく湿る)
- 混乱して意識が悪くなる(見当識障害)
- 息切れがする
- 息が荒い
- 脈が速い
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院では、熱や低血圧、心拍数や呼吸数の上昇などの所見を参考にして、敗血症と診断します。
- ただ、発熱や呼吸困難などの敗血症の症状の多くは他の病気でもあらわれるため、敗血症を早期に診断することが難しいです。
- 感染症や臓器障害の徴候を調べる検査を実施することもあります。
どんな治療があるの?
- 治療は細菌による感染のコントロールと、血圧低下とこれ以上臓器が傷つくことを予防するための全身管理を中心に行います。
- まずは速やかに抗菌薬を投与します。また、感染して傷ついた組織は、手術などで切除することもあります。
- 全身管理では血圧と血液中の酸素濃度を維持するために、酸素投与と大量の輸液を行います。
- その他の治療法として、必要であれば人工呼吸器管理や人工透析などの全身管理も行うこともあります。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 敗血症は、一般的にはうつらないと言えます。
- 主な敗血症の予防方法を3 つあげます。
敗血症予防のためにできること
- ワクチン接種:インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、感染症予防のためのワクチン接種は敗血症予防につながります。
- 衛生を保つ:傷口をしっかり洗う、普段から手洗いやうがいをするなどです。感染性微生物が増えることや、体の中に侵入することを防ぐことができます。
- 初期に対応する:早期に敗血症に気づければ、それ以上の悪化を防ぐきっかけとなります。もし細菌に感染していて重症だと感じたなら、敗血症の症状がないか気を付けてください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 早期から適切な治療がされれば、敗血症はある程度治療できます。敗血症から完全に回復した方の多くが、元どおりの生活に戻っています。
- しかし、治らない臓器障害が残ってしまう場合も少なからずあります。
- 例えば、もともと腎臓の機能が低下している方は、敗血症のために腎機能が悪化し、生涯透析を余儀なくされることもあるでしょう。また、運動障害や認知障害、メンタルヘルス障害などに陥り、長期化することもあります。