重症急性呼吸器症候群:どんな病気?感染経路は?日本でも感染するの?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の川名 明彦と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が重症急性呼吸器症候群(SARS)にかかるのでは?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- SARSとは、SARSコロナウイルスというウイルスによって肺炎などが起こる病気です。
- 2003年に中国を中心に世界で8,000人以上の患者が発生し、そのうち1割弱の人が死亡しました。
- 日本人の感染者はおりませんでした。
- 流行は半年ほどで終息し、現在は世界中に感染者はいません。
- 現時点ではこの病気にかかる心配はないと考えて良いです。
- 感染症を予防するためにも、特に海外では火の通ったものを食べたり、手洗い・うがいを心がけることが大切です。
重症急性呼吸器症候群は、どんな病気?
- SARSとは、SARSコロナウイルスというウイルスによって肺炎などが起こる病気です。
- ウイルスは、コウモリやハクビシンなどの動物から人に入ったと考えられています。
- 咳やくしゃみをした時に飛び散るしぶきなどにウイルスが含まれ、人から人へとうつります。
- インフルエンザに似た症状で始まりますが、重症肺炎を併発する事が多いです。
- 治療薬やワクチンはまだ実用化していません。
重症急性呼吸器症候群と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 現時点でSARSは世界中で明らかな感染者は一人もいませんので、感染を心配する必要はありません。
- もしSARSが再び流行し始めた場合は、厚生労働省がテレビや新聞などのメディアを通じて注意を呼びかけますので、その指示に従ってください。
受診前によくなるために自分でできることは?
- SARSに限らず、海外では動物から感染する病気は他にもたくさんあります。
- 下記によってSARSだけでなく、感染症の予防につながります。海外では特に注意してください。
感染症の予防のために
- 生きた動物や死んだ動物に不用意に触れない
- しっかり加熱調理した食物を食べる
- 手洗いをする
重症急性呼吸器症候群になりやすいのはどんな人?原因は?
- SARSは下記のような人になりやすく、重症化しやすいです。
SARSになりやすい人
- 高齢者
- 肺や心臓に持病のある人
- 抵抗力の弱っている人
- 子供はあまりかからず、かかっても軽症で済む人が多いようです。
- 医療従事者(医師、看護師など)は、かかる危険性が高いです。
どんな症状がでるの?
- 感染して4~5日ほど後、症状として下記のようなものが挙げられます。
SARSの症状
- インフルエンザのような突然の高熱
- 激しいだるさ
- 咳、息切れ
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- SARSを疑われたら、下記のような検査を行います。
検査の種類
- 血液検査:採血をして、炎症反応やSARSの抗体あるかどうかを調べます。
- 喀痰検査:痰の中に原因となる菌・ウイルスがいないかを調べます。
- 尿検査:喀痰検査と同様に原因となる菌・ウイルスがいないかを調べます。
- 胸部レントゲン検査:肺に異常をきたしているかを調べます。
- SARSは、感染症法で2類感染症に指定されています。
- 医師がSARSを疑った場合は、直ちに保健所に届け出ることとされています。
- 感染症指定医療機関への入院が勧められます。
どんな治療があるの?
- 残念ながら、SARSコロナウイルスに対し、効果が確実な治療法はありません。
- 酸素吸入、点滴静注、抗菌薬投与など、症状に合わせた治療が行われます。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- SARSは人から人にうつるので、感染防止の目的も兼ねて、感染者は原則として感染症指定医療機関に入院になります。
- 手洗い、咳が出るときのマスクなどをエチケットとして行うことが重要です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 2003年の世界流行の時は、発病した人の9割以上は治りましたが、1割弱の方が亡くなりました。
- 肺炎による死亡が多かったです。
- 期間としては解熱後10日程で治るとされています。
追加の情報を手に入れるには?
- 厚生労働省検疫所.重症急性呼吸器症候群
- https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name58.html
- 国立感染症研究所感染症情報センター.SARS(重症急性呼吸器症候群)
- http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/index.html