関節リウマチ(リウマチ):どんな病気? 遺伝との関係は? 検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- リウマチ膠原病専門医の山岡 邦宏と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が関節リウマチになってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 関節リウマチは関節で原因不明の炎症が起こり、腫【は】れや痛みを感じる病気です。
- 両手の指や手首の腫れと痛みで発症することが多い病気です。
- 「関節のこわばり」は年をとることに伴って現れる症状で、必ずしも関節リウマチをによるものではありません。
- 関節リウマチの際にしばしばみられる「リウマチ因子」という物質が検出されても、関節リウマチが必ず発症するわけではありません。
関節リウマチは、どんな病気?
- 関節リウマチ(以下リウマチ)は、40〜50代女性の手足の小さな関節において発症しやすい病気です。
- リウマチは、さまざまな難病を含む病気のまとめた呼び名である膠原病【こうげんびょう】の一つです。
- リウマチ因子はリウマチの患者さんの約80%から検出されますが、リウマチ因子が検出された方がリウマチを発症する確率は10%以下です。
- リウマチ因子はさまざまな原因で陽性となりますが、必ずしもリウマチだけにかかわる検査結果ではありません。
- 抗CCP抗体という物質が検出された方は、5〜10年後にリウマチを発症する可能性が高いと考えられます。
- リウマチは手の指を中心とした小さな関節で発症することが多いですが、膝などの大きな関節だけで発症することもあります。
関節リウマチと思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 次のような症状がみられたらかかりつけ医を受診してください。
かかりつけ医への受診が勧められる場合
- 健康診断でリウマチ因子が検出された場合
- 関節が腫れているとき
- 関節の痛みの感じ方は人によってさまざまですので、必ずしも目安とはなりません。
- 健康診断でリウマチ因子が検出され、精密検査で抗CCP抗体が検出された場合は、必ず専門医を受診してください。
関節リウマチになりやすいのはどんな人? 原因は?
- リウマチの原因はわかっていません。
- 次の要因が複雑にからみあって発病や増悪【ぞうあく】(病気が悪くなること)にかかわっています。
リウマチの原因、悪化の要因
- 遺伝的背景:遺伝することはきわめてまれですが、遺伝子が発病や治療に関与する可能性はあります。
- 喫煙【きつえん】、歯周病:いずれもリウマチの発症や治療中の悪化に関係し、特に喫煙は歯周病を悪化させますので禁煙することが重要です。
- 食習慣:肉食が関係するといわれることがありますが、明らかな関係はわかっていません。
どんな症状がでるの?
- リウマチの主な症状は、関節の痛みと腫れです。
- リウマチだけに限った症状ではありませんが、関節のこわばりを感じることがあります。
- こうした症状により日常生活に次のような障害がみられます。
リウマチによる日常生活の障害
- 階段の上り下りがきつい
- ペットボトルを開けにくい
- 起床時に動きにくい
- ドアノブが回しにくい
- 着替えがしにくい
- 手の指の末端の関節が腫れて変形することがありますが、これは年をとったことによる変化で、変形性関節症です。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査:リウマチ因子、抗CCP抗体など炎症が起こっていることを示す物質が現れていないか、また肺、心臓などの臓器障害がないかを確認します。
- レントゲン撮影:関節や肺にリウマチに伴う変化がないかを確認します。
- 血液検査と診察など:リウマチに似たような症状が現れる病気がないかを調べます。
- CTなどのさらなる詳しい検査:リウマチでも関節だけでなくほかの臓器に異常をきたす場合もありますので、状況に応じてそうした徴候がないか調べます。
どんな治療があるの?
- 治療の基本は、患者さんと医師の双方が納得した治療を選択することです。
- 次のようなさまざまな要素を考慮して、個々の患者さんに応じて治療方法を調整します。
治療方針を決定する要素
- リウマチがどの程度悪いのか:病気の状態が悪いとより多くのお薬が必要で、1つのお薬で効果がないときは、お薬を変えるのではなく追加することになります。
- 年齢:高齢の方では投与量を減らすことが必要な場合があります
- 肝臓、腎臓、肺の異常の有無:これらの臓器のはたらきが悪くなっている場合には投与量の減量が必要です。
治療の実際
- 最初に、メトトレキサートというお薬を投与します。
- 関節の痛みに対しては、非ステロイド性の炎症を抑える効果のあるお薬を投与します。
- 一般にステロイド剤は使用しませんが、日常生活動作に大きな支障があるほど関節炎がひどい場合は短期間(3〜6か月)のみ最小限の量を用いることがあります。
- 副作用によりメトトレキサートを飲むことが難しい場合は、ほかの抗リウマチ薬を投与します。
- メトトレキサートまたはそのほかの抗リウマチ薬で十分な効果がない場合は、生物学的製剤のような新たなお薬を追加します。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは? 治療の副作用は?
- どのお薬も免疫に影響を与えるので感染症にとくに注意が必要です。次のような基本的な感染予防対策を心がけてください。
基本的な感染予防対策
- 手洗い
- うがい
- マスク
- お薬により特徴的な副作用があり、さまざまなパンフレットがつくられていますので、医療機関で入手してください。
- 発熱が続く場合には医療機関を受診してください。
- お薬によっては妊娠をひかえるべきものがあります。
メトトレキサートの副作用
- メトトレキサートの治療による副作用には次のようなものがあります。
メトトレキサートの副作用
- 間質性肺炎:痰【たん】がからまない乾いた咳【せき】が続き、息苦しさを感じます。
- 肝臓、腎臓の機能障害、血液異常:肝臓や腎臓のはたらきが悪くなったり、血液に異常が生じても、通常、自覚症状はなく血液検査で確認します。
- リンパ増殖性疾患:首や股関節【こかんせつ】周囲のしこり(リンパ節)が大きくなることがあります
生物学的製剤の副作用
- 生物学的製剤による主な副作用は感染症で、次のようなものがあります。
生物学的製剤の副作用
- 黄色い痰がからむ咳がでる
- 熱がでる
- からだがだるく感じる
- 下痢、おなかの痛み
予防のためにできることはあるの?
- リウマチを予防することは難しいですが、喫煙が発症や悪化に関係していることから禁煙は効果があります。
- 関節の異常を感じた場合には、医療機関を受診して病気による症状なのかどうかをみてもらってください。
- リウマチの治療を受けている方は、感染を予防するために次のようなことを行ってください。
感染症の予防のためにできること
- 手洗い
- うがい
- 使用したティッシュなどはできるかぎり早く分別して廃棄する。
- マスクを着用する:ご家族に感染症の方がおられる場合には、ご自身の予防と同時にご家族の方が感染症を拡散しないようにマスクの着用が効果的です。
- インフルエンザワクチンを打つ:インフルエンザのシーズンが始まる前に、ワクチンを打ってください。
- 肺炎球菌ワクチンを打つ:肺炎予防に有効です。
- リウマチの治療としてステロイドを含むお薬を一定量以上飲んでいる場合は、骨粗鬆症【こつそしょうしょう】のお薬を予防として飲んでいただくことがあります。
治るの? 治るとしたらどのくらいで治るの?
- リウマチは基本的に治りませんが、しっかりとした治療で病気の活動性を抑えることができれば治った状態になります。
- 病気がしっかりと抑えられない状態が続くと、関節の機能低下だけでなく、寿命にも影響します。
- 大きな治療効果を得るには、なるべく早くに診断と治療を受けることが重要です。
- お薬により治った状態がある程度続けば、お薬をだんだんと減らすようにします。
追加の情報を手に入れるにはどうしたらいいの?
- リウマチに関しては公的機関(厚生労働省、大学、公的病院)のホームページをみるとよいでしょう。
- 厚生労働省のサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ryumachi/index.html
- 日本リウマチ学会による治療ガイドラインの提言
- https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_tnf.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_IL-6.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/publication/pdf/MTX2016kanni.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_abt.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_denosumab.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/info/RA_guideline.pdf
- https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/news171013/
- 『関節リウマチ診療ガイドライン2014』(日本リウマチ学会編、メディカルレビュー社刊、2014年)
リウマチとリウマチ熱はどう違うの?
- リウマチ熱は感染症(A群レンサ球菌)に引き続いて発症する、高度の炎症と関節炎を伴う病気で、リウマチとは異なります。
- 長寿に伴い、高齢で発症する患者さんが増えています。