床ずれ・褥瘡:原因は?できやすい場所はあるの?予防と治療は?
更新日:2020/11/11
- 褥瘡【じょくそう】を担当します立花隆夫です。
- とつぜん褥瘡ができたり、あるいは、褥瘡が治らないばかりかひどくなったりすると、ご家族の方は心配になりますよね。何か悪いことが起こっているのではないか?と心配されたり、このまま今の治療をつづけていいのか?と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、褥瘡の一般的な知識や、その診断並びに治療について役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」について記載をさせていただいています。
まとめ
- 一般には床ずれと呼ばれている褥瘡【じょくそう】は、外からの圧迫により、その部位に血液が通わなくなってできる皮膚の傷のことです。
- 褥瘡は寝たきり状態の老人のおしり(仙骨部)などの体重がかかるところに多くみられます。
- 特殊な検査は必要なく、傷ができた状況を聞くこと、診ることで、褥瘡は診断できます。
- 褥瘡は寝たきりでできる褥瘡だけでなく、患者さんが治療中に用いる医療用具でできる傷(医療関連機器圧迫創傷といます)などが最近は注目を集めています。
- 褥瘡の治療は基本的に患者さんの治癒力に依存します。そのため、医師や看護師などはその傷がより治りやすくするためのサポートを行っていきます。
褥瘡(じょくそう)とは?
- 褥瘡は一般には床ずれと呼ばれています。
- 体の一定の場所に一定時間以上力が加わって圧迫されることでその部位に血液が通わなくなってできる皮膚の傷です。
- 圧迫の他にも皮膚のこすれや、皮膚に湿気が多いことなどが悪さをします。
- 浅い場合はそのまま治りますが、深い場合には壊死といってその部位の細胞が死んでしまうこともあります。
- 寝る姿勢によって生じる部位は異なりますが、褥瘡の多くは、寝たきり状態の老人のおしりの骨(仙骨部)などの体重がかかるところにみられます(図1)。
図表1 上向きで寝たときにかかる部位別の体重比
厚生省老人保健福祉局老人保健課 監修,宮地良樹 編:褥瘡の予防・治療ガイドライン, 照林社, 1998より改変して引用
褥瘡はどうしてできるの?
- 褥瘡は皮膚の同じ部位がずっと圧迫されることで起こります。
- 特に高齢者や体が麻痺している方は、自由に体を動かせなかったり、不随意運動をすることができなくて、一定の部位に力がかかりやすく、褥瘡になりやすいです。
- 若い方や健康な方は、寝てるときや正座をしているときでも、自然に体が不随意運動をしているために、一定の部位に力がかかり続けるということはありません。
不随意運動とは?
- 不随意運動とは、自分が意識せずに体のいたるところの筋肉が少しずつ動く運動のことです。正座をしたり、長期間同じ姿勢を続けているときでも、不随意運動は行われているため、長時間同じ部位に力がかかることはありません。
褥瘡を取りまく状況について
- 褥瘡の発症・治りやすさを左右するのは、圧迫、摩擦・ずれや湿潤などの皮膚に関わる直接の要因だけではありません。
- 例えば、一人暮らし、子供とは別居している老々家族、あるいは、脳梗塞、うつ状態などによる日常活動の低下など、多彩な全身的あるいは社会的な二次要因にも影響されます(図2)。
- 皮膚の要因に加え、上記に挙げたような二次要因が加わると、褥瘡になりやすく、治りにくくもなります。
- 寝たきりでできる褥瘡だけでなく、治療中に医療用具でできるキズ(医療関連機器圧迫創傷といます)などが最近は注目を集めています。
- 褥瘡の予防は治療と同様に、圧を取り除くことが一番大切です。
図表2 褥瘡とそれを取り巻く直接および間接要因
厚生省老人保健福祉局老人保健課 監修,宮地良樹 編:褥瘡の予防・治療ガイドライン, 照林社, 1998より改変して引用
褥瘡はどのように診断するの?
- 褥瘡は、特殊な検査は必要なく、傷ができた状況を問診したり、傷の状態をみることで、褥瘡診断できます。
- 寝たきり状態の患者さんの、おしり(仙骨部)などの体重のかかるところに赤みや、すり傷、皮膚がえぐれている状態が現れたときは、褥瘡が考えられます。
- 栄養が十分にとれているかということと、貧血になっていないかは、褥瘡の発症と治癒に重要とされています。そのため、患者さんの体重は減っていないか、貧血になっていないかを注意しましょう。
どのように治療するのですか?
- 褥瘡の治療で大切なことは、傷に不要な外力をかけないことです。
- まずは、寝たきりの患者さんであれば、体の姿勢を頻繁に変えたり、体にかかる圧力を和らげる寝具(体圧分散寝具)などを用いて除圧を試みます。
- 褥瘡の治療法には、軟膏、ドレッシング材などを用いた保存的治療と、褥瘡部を取り除く外科治療の2つがあります。外科治療の方が早く治ります。
- しかし、治療効果は患者さんの治癒力に依存しています。患者さんの栄養状態や健康状態が悪く、治癒力が低下しているときには保存的治療あるいは外科治療を行ってもうまくいきません。
- 患者さんの栄養や全身状態を整えつつ、個人個人に適した治療を行っていきます。
褥瘡についてもっと知りたい!
褥瘡の治療法について
- 褥瘡の治療法には、保存的治療と外科的治療の2つがあります。外科治療の方が早く治ります。
保存的治療
- ウンド・ベッド・プリパレーション(創面環境調整)とモイスト・ウンド・ヒーリング(湿潤環境下療法)の2つを心掛けます。発症後1~3週(急性期)とそれ以降(慢性期)に分けて対処します。
- 急性期の治療:傷の除圧やモイスト・ウンド・ヒーリングを心がけます。
- 慢性期の治療:傷の状態によって治療法が異なります。浅い傷の場合、急性期と同様に傷の除圧とモイスト・ウンド・ヒーリングを心掛けます。深い傷の場合は、キズの除圧と共に、治療前半ではウンド・ベッド・プリパレーション、後半にはモイスト・ウンド・ヒーリングを心掛けます。
コラム:ウンド・ベッド・プリパレーション(wound bed preparation)
- 死んでしまった組織を傷から取り除く治療、あるいは、傷が膿んでいたりじゅくじゅくしているとき、傷の縁が浮いている状態(ポケット)がみられるときには、それを少なくまたはなくすような治療を行うことをウンド・ベッド・プリパレーションといいます。
コラム:モイスト・ウンド・ヒーリング(moist wound healing)
- 傷を潤った状態にし、本来皮膚が持っている機能を発揮させて傷の治りを施すことをモイスト・ウンド・ヒーリングといいます。
外科的治療
- 治癒時間を短縮する目的で外科的治療が考慮されます。なお、上記の保存的治療で効果がみられない場合には、妨げになっている要因を除去しないと、外科的治療を行っても再発しますので注意して下さい。
- 外科的治療には植皮術と皮弁形成術の二つの方法があります。
- 植皮術:傷の部位に皮膚を移植する方法です。病棟や家でも行うことがあります。
- 皮弁形成術:傷ついた皮膚(褥療)を外科的にとってしまい、その後近くの皮膚をずらして患部を充填する手術です。また、再発しないように縫い合わせ(縫合線)と患部とをずらすようにします。