心的外傷後ストレス障害(PTSD):原因は?症状は?治療はできるの?
更新日:2020/11/11
- 精神科医の西 大輔と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかするとご自分や知り合いがトラウマとなるような出来事を経験されたのかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、辛い症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を経験した後に、それがトラウマとなり、何度も思い出されて当時と同じような恐怖を感じ続けるという病気です。
- PTSDには4つの主要症状(再体験症状、回避症状、考えや感情の否定的な変化、過覚醒症状)があります。これらの症状が4週間以上続き、強い精神的な苦痛や生活上の支障をきたします。
- PTSDの症状は時間とともに自然に軽快する可能性がありますが、数か月以上続くようなら病院へ行ってください。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、どんな病気?
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を経験した後に、それがトラウマとなり、何度も思い出されて当時と同じような恐怖を感じ続けるという病気です。
- しかし、トラウマとなるような出来事を経験した後に、一時的に心の状態が不安定になるのは、決して珍しくないことです。精神の症状は、異常な事態を乗り越えるための正常な反応だと考えると良いです。
- トラウマとなる出来事から1カ月以上経っても症状が続き、日常生活に支障をきたします。
受診前によくなるために自分でできることは?
- まず、ご自分や周りの方ができることは以下の通りです。
病院へ行く前にできること
- 物理的にも心理的にも安全な環境を確保する。
- 本人が持っている回復力(レジリエンス)を発揮できる環境を確保する。
- 現時点で安全・安心な環境が確保されていなければ、それらに対する現実的な対応を行う。
(例)ドメスティックバイオレンス、感染症や妊娠の可能性、職場における極度のハラスメント、犯罪被害で加害者が逮捕されていない場合など
- 誰かのサポートを求めることは恥ずかしいことではありません。悩みの相談だけでなく生活する上でのストレスを減らすためにも、可能であれば周りの方からのサポートを受けてください。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)になりやすいのはどんな人?原因は?
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)になりやすい人は以下の通りです。
心的外傷後ストレスになりやすい人
- 子どものときに虐待を経験している方
- 女性
- 戦闘や性被害など、人からの暴力の被害を受けた方
出来事の種類としては、自然災害よりもPTSDを引き起こしやすいとされています。
どんな症状がでるの?
- PTSDには、以下の4つの主要な症状があります。これらの症状が4週間以上続き、強い精神的な苦痛や生活上に支障をきたしている場合に、PTSDと診断されます。
PTSDの主要な4症状
- トラウマとなるような出来事の記憶が、思い出そうとしていないのに急にありありと思い出されたり、出来事に関する悪夢をみたりする再体験症状
- 出来事を思い出すような場所・物事・人物・会話を避けようとする回避症状
- 自分自身や他人、世界に対して過剰に否定する信念や、罪悪感・怒り・恥などの感情が続く、考えや感情の否定的な変化
- わずかな刺激(音など)にも強く反応してしまったり、眠りにくかったりイライラしたりする過覚醒症状(かかくせい)
どんな治療があるの?
- PTSDの治療としては、トラウマに焦点をあてた認知行動療法(物の見方に働きかけてストレスを軽くしていく治療方法)が世界でよく使われています。
- また、お薬で治療することもあり、うつ病に使われる抗うつ薬の一部が使われます。これは保険適応があります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- トラウマとなるような出来事を経験しても、すべての方がPTSDになるわけではなく、自然に回復される方もたくさんいらっしゃいます。
- 子ども時代の虐待経験があるかなどによって、治る早さは個人差が大きいですが、トラウマに焦点をあてた認知行動療法によって3か月程度で回復する場合もあります。
- 症状が数か月以上続く場合は、PTSDの治療を専門とする病院へ行ってください。
追加の情報を手に入れるには?
- PTSDに関しては下記のページも参考になります。
厚生労働省のサイト
(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_ptsd.html)
もっと知りたい! 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
PTSDで行われる心理療法にはどんなのがあるの?
- 認知処理療法(CPT: Cognitive Processing Therapy)、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR; Eye Movement Desensitization and Reprocessing)も有効な治療法とされています。