骨粗鬆性椎体骨折:原因は?治療は?予防はできるの?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医の成田 都と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「骨粗鬆症が原因で骨折をしてしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 骨粗鬆症性椎体骨折(Osteoporotic Vertebral Fracture: OVF)とは、骨粗鬆症により骨の強度が低下し、発生する背骨の骨折です。
- 骨粗鬆症患者さんは日常生活動作での比較的軽度の力によって骨折することに注意が必要です。
- 基本的には安静、装具および薬物療法の組み合わせで治療を行いますが、正しい治療を行わないと脊椎に変形が生じたり、骨折部がくっつかないため腰背部痛が慢性化することがあるため、早期受診、早期治療が大切です。
骨粗鬆症性椎体骨折とは、どんな病気?
- 骨粗鬆症とは「骨がもろくなった結果、骨折のリスクが高くなった状態」のことを言います。
- 骨粗鬆症があると、尻もちをついたとか重たいものを持った、その他の軽いけがでも背骨がつぶれてしまうことがあります。これを骨粗鬆症性椎体骨折と呼びます。
骨粗鬆症性椎体骨折と思ったら、どんなときに病院を受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 腰や背中の痛みがあり、かつ下記のような場合は、医療機関の受診を検討してください。
整形外科医への受診をおすすめする場合
- 骨粗鬆症患者
- 閉経後の女性
- 高齢者(65歳以上)
- 軽いけがでも、腰や背中が痛む
- 痛みが強い
- 以前にも骨折したことがある
- 痛みが3ヶ月以上続いている
- 腰の曲がりが強く、腹痛などの消化器症状がある
救急車を呼ぶ場合
- 痛みで動けない
- 足が動かないなど麻痺が出ている
- 排尿障害などが出ている
骨粗鬆症椎体骨折を起こしやすいのはどんな人?原因は?
- 骨粗鬆症の女性が最も起こしやすいです。男性の発生率は女性の1/3〜1/2程度と言われています。
- 70 歳を越えると急激に増加し、年齢が上がるとともに右肩上がりになります。
- 以前体のどこかが骨折したことがあると,骨折のリスクは約 2 倍に、背骨を骨折したことがある場合は骨折のリスクは約 4 倍となります。背骨を骨折した回数が増えるほどそのリスクは増えます。
どんな症状がでるの?
- 特徴的な症状は動いた時の痛み(体動時痛)と痛みの部位をトントンと叩くと響く痛み(叩打痛)です。
- 時に動くことがつらいほどの痛みが生じる場合があります。
- 骨折のあと、骨折部がくっつかない場合はグラグラするため不安定になり、痛みが増悪し、長期化することがあります。
- 骨折の状態が悪化すると、神経が押されて足が動かない、おしっこがでにくいなどの症状や腰の曲がりが残る場合は逆流性食道炎のような内臓の病気の原因にもなります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 骨粗鬆症性椎体骨折の診断には単純レントゲン検査が必須です。
- その他の画像検査については、骨折が新鮮なものか元々あったものかの判断にはMRI検査が、詳細な骨折の評価にはCT検査が有効です。
どんな治療があるの?
- 治療は安静、薬物治療、装具療法、リハビリテーションを組み合わせて行います。
- 痛みのために日常生活が難しい場合は入院治療が望ましく、約2週間程度、ベッドで安静にした後、必要に応じリハビリを行います。
- 手術療法はこれらの治療で良くならなかった場合、行います。病気の状態にあった何通りもの手術方法があります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?食事や生活で気をつけることは?治療の副作用は?
- 骨折後の骨の経過や治療のために、必ず整形外科医の先生の指示を守って、通院や薬の服用、リハビリなどを行っていきましょう。
- 骨の健康のためにはカルシウムの摂取と、カルシウムの吸収を促進するビタミンD、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKなど、様々な栄養素が必要です。1日3回の規則正しく、バランスのとれた食事を心がけましょう、また適量の牛乳・乳製品を取ることも必要です。
- 骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムの摂取とビタミンDを体内で合成するために必要な日光浴に加えて、ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨に刺激が加わる運動がおすすめです。
予防のためにできることは?
- 先ずは骨粗鬆症を予防するのが大前提です。骨粗鬆症の患者さんは、適切な骨粗鬆症の治療が骨折を防ぐのに重要です。
- 全身の骨を丈夫にして、骨折が起こりにくくすることを目的に前述した食事療法、筋肉を鍛えて転倒をしないようにするための運動療法、そしてそれに薬物療法を組み合わせます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 骨粗鬆症性椎体骨折は、自然経過や治療により、予後は良いです。しかし、初期診断で見逃されると神経障害がでたり、痛みが治りにくくなったりと増悪の恐れがあるので注意しましょう。
- 急性期は、ベッドでの安静、装具療法、薬物療法の組み合わせで治療を行います。痛みに応じて、徐々に活動度をアップしていくのが良いでしょう。急性期の痛みは一般的に6〜12週持続するため、その間は無理をせず、痛みのコントロールや背骨の変形予防のためにコルセットやギプスなどを使います。
- 椎体骨折の予後を決める因子として以下があげられます。
椎体骨折の予後を決める因子
- 高齢
- 軽いけがによる発症
- 治療開始時期
- 後弯角
- 椎体高位(胸腰椎移行部)
- CT画像検査による後壁損傷
- MRI輝度変化の広がり
追加の情報を手に入れるには?
- 骨粗鬆症、骨粗鬆症性椎体骨折に関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 厚生労働省のサイト
- https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/osteoporosis
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
- http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf