浮腫:むくみの原因は?どんな場所に起こるの?対処法は?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 家庭医療専門医の梶川 奈月、吉本 尚と申します。
- とつぜんむくみがでたり、ひどいむくみが何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、浮腫の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 浮腫は、体の中に余分な水分がたまることによって生じます。
- 浮腫は体のあらゆる部位に生じる可能性がありますが、最初に気づかれやすいのは、足や、手先、目の周り、お腹まわりです。
- 様々な原因によって生じるため、気になる方は一度かかりつけ医に相談してください。
- とくに呼吸が苦しい、胸が痛いなどの症状がある場合は、すみやかに医療機関を受診することがすすめられます。
- 浮腫ができている場所を心臓よりも高くしておくことや、原因によっては水分や塩分の制限が有効です
どんな症状?
- 浮腫とは、体の中の臓器のまわりなど、本来水分がたまらないところに余分な水分がたまることによって生じます。
- 浮腫は体のあらゆる部位に生じる可能性がありますが、最初に気づかれやすいのは、足や、手先、目の周り、お腹まわりです。
- 特に足に目立つのは、重力の影響で地面に近いところにたまりやすくなるからです。
- 浮腫が生じた場所は、はれていて、皮膚は水分でテカテカしているように見えます。
- 浮腫が生じた場所は多くの場合、15秒ほど圧迫するとくぼみができます。
こんな症状があったら急いで病院へ!
- 次のような症状が突然出た場合は速やかに医療機関を受診してください。
- 場合によっては救急車も使ってください。
すぐに病院へ行ってほしいとき
- 座っていても苦しくないが、寝ると呼吸が苦しい
- 体を動かすと呼吸が苦しい
- じっとしていても呼吸が苦しい
- 胸が痛い
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 次のような症状があるときは医療機関の受診を検討してください。
かかりつけ医を受診してほしいとき
- 座っていても苦しくないが、寝ると呼吸が苦しい
- 体を動かすと呼吸が苦しい・胸が痛い
- じっとしていても呼吸が苦しい
- 尿が出る量が減った
- 体重が週~月単位で急に増えた
- 浮腫がある場所が痛い、触ると周囲より熱い、周囲よりも赤くなっている
どんな病院・クリニックに行けばいいの?
- むくみの原因はさまざまあり、内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、女性外来など色々な科が関わりますが、受診前に原因を特定するのはむずかしいので、まずはかかりつけ医へ受診するのがおすすめです。
主な原因とその説明
- 原因はいくつかあります。以下にそれぞれの原因についてくわしくご説明します。
心不全
- 心不全とは、心臓が悪いために、息切れや浮腫が起こり、だんだん悪くなり、命を縮める病気です。
- 心臓の病気を言われている方だけでなく、これまで心臓の病気を言われていない方でも突然心臓が悪くなることで生じることがあるため、医療機関(主に循環器内科、内科)を受診してください。
肝硬変
- 肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、栄養の摂りすぎなどにより起こる肝臓の機能障害がだんだんと進行して肝臓が硬くなった状態をいいます。
- 水分やタンパクがうまく処理されなくなった結果、浮腫が生じます。
- お腹の中に水分がたまったものを腹水といいます。
- 上記の肝臓の機能の障害の原因に心当たりがある方に浮腫が生じた場合は、かかりつけ医(主に内科、消化器内科)に相談してください。
腎臓病
- 腎臓病のうち、ネフローゼ症候群という尿にタンパク質がたくさん出てしまい血液中のタンパク質が減ってしまう病気があります。
- これによって水分が体の中にたまってしまい、全身の浮腫になることが多いです。
- 足だけでなく目の周りや手にも浮腫が生じている場合はかかりつけ医(主に内科、腎臓内科)に相談しましょう。
下肢静脈血栓症
- 下肢の静脈に血のかたまりができて静脈が詰まってしまう病気です。
- 急に生じた場合は浮腫の他に痛みを生じます。
- 血のかたまりが静脈からはがれると、肺の血管につまり胸が痛くなったり息苦しさを生じたりします。これを肺血栓塞栓症といいす。
- 血のかたまりをとかす治療が必要となるため医療機関(主に内科、循環器内科)を受診してください。
リンパ浮腫
- リンパ組織は体の中の余分な水分を回収する役割を持っています。
- 乳がん手術でリンパ組織を切除するなどリンパ組織が傷つくことによって浮腫が生じます。
- 一度はかかりつけ医(手術を行った医師など)に相談してください。
腹腔内腫瘤
- とても稀ですが、お腹の中にできた腫瘤による圧迫のために、両下肢がむくむことがあります。診断には腹部のCT検査が必要になることが多いため、腹腔内腫瘤が疑われる場合は、腹部CTが撮れる医療機関を受診することが推奨されます。
妊娠中や月経前
- 女性ホルモンの変化により浮腫が生じる方がいます。
- 出産や月経周期で自然に消失するため治療の必要はありませんが、症状が気になる際はかかりつけ医(おもに内科、女性外来)に相談してください。
薬剤性
- 内服している薬が原因で浮腫が生じることがあります。
浮腫を起こしやすい薬の例
- 降圧薬:ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬(アムロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン等)
- 糖尿病薬:チアゾリジン系(ピオグリタゾン等)
- 服用している薬が原因ではないか心配な場合はかかりつけ医(薬を処方した医療機関)や薬剤師に相談してみましょう。
浮腫に対して、よくなるために自分でできることは?
- 浮腫が生じている原因によっても異なりますが、次のようなことを工夫するとやわらげることができるかもしれません。
- なお、市販薬での対処をしたい方は、効果がなかったり思わぬ副作用を生じたりすることがあるため、使用する前にかかりつけ医や薬剤師に相談してください。
行うとよいこと
- 心臓よりも足を高くする:座っているときや寝ているときに心臓よりも足を高くする(10cmから15cm)と余分な水分が心臓に戻りやすくなり浮腫を軽減させることができます。
- 着圧ストッキングを使用する:足首からふくらはぎ全体をストッキングで締め付けることによって、余分な水分が心臓に戻りやすくなり浮腫を軽減させることができます。痛みや大きな傷がある場合などはストッキングにより悪化させることがあるので注意してください。痛みやしびれが生じるようなきつすぎるストッキングは避け、適度な力のストッキングを選んでください。お医者さんに相談するのも良いです。
行うとよくないこと
- 水分や塩分の摂りすぎ:水分や塩分の摂りすぎによって体の中に水分が蓄えられてしまい、むくみやすくなります。心臓、肝臓、腎臓などに病気をお持ちの方は、かかりつけ医に水分や塩分をどのぐらい摂ってもよいのか確認してください。
- 同じ姿勢で長時間いる:長時間立ったままや座ったままでいると足の浮腫が生じやすくなります。定期的に足を動かしてください。
お医者さんでおこなわれること
- 浮腫があると言って病院にいらっしゃっても、足のだるさや疲れが原因で医学的には浮腫でないこともあります。
- そのため、病院ではまず、浮腫がある場合はまず全身に生じているのか(全身性)、体の一部に生じているのか(局在性)を判断します。なお、全身性であっても、初期では体の一部にしか見られないこともあります。
- 次のような情報を確認しながら診察を行っていきます。
診療の助けになる情報
- 浮腫を自覚した時期
- 内服中のお薬:病院の処方薬だけでなく市販の薬や健康食品・サプリメントについても伝えてください。
- お酒を飲む量、水を飲む量
- 体重の変化:浮腫を自覚する前の体重がわかるとよいです。
- 痛みや息切れの有無
- また、病院で行う可能性がある検査は以下の通りです。
検査
- 血液検査
- 尿検査
- 胸のレントゲン写真
- 心電図
- 超音波検査(心臓、腹部、下肢)
もっと知りたい! 浮腫のこと
どんな病気のことが考えられる?
- 前述の浮腫の原因の他にも次のようなものがあります。
甲状腺機能低下症
- 体の代謝を調整する甲状腺ホルモンが十分につくられなくなることにより、余分な水分がたまり浮腫が生じます。
- 他の浮腫と違って、圧迫した跡形が残りにくい浮腫になります。
- 甲状腺ホルモンを補充する治療が必要です。
- 通常、内科、内分泌内科での診療となります。
低栄養
- 様々な原因により食事が摂れる量が減っている場合や、極端なダイエットにより体の中のタンパクが少なくなることにより浮腫が生じます。
- タンパク質を十分に含む食事をとることが必要です。
- 食事がとれなくなっている原因などにより診療科が異なります。
- 通常、内科、心療内科、精神科での診療となります。
蜂窩織炎【ほうかしきえん】
- 皮下組織に細菌が感染することによって生じます。生じた部位は通常、赤く、熱を持っており、痛みを生じます。
- 抗生物質での治療が必要です。冷却、安静が有効です。
- 通常、内科、皮膚科での診療となります。
特発性浮腫
- 女性に多く、重い病気ではないが原因がはっきりしない浮腫です。下肢に多くみられます。
- 利尿剤が誘因になりうるため、飲んでいる場合は中止が必要です。
- 通常、内科での診療となります。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
心不全についてわかりやすく書かれているもの
- 「シンゾウ!イキイキ!」日本循環器学会
- http://www.j-circ.or.jp/shinshin_pj/
リンパ浮腫について特に詳しく書かれているもの
- 「リンパ浮腫の考え方と治療の基本」 一般社団法人日本リンパ浮腫学会
- https://www.js-lymphedema.org/?page_id=848
医療者向けのガイドライン
- 「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」
- https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/JCS2017_ito_h.pdf