肥満:肥満の基準は?原因は?肥満外来ではどんな治療をするの?
更新日:2020/11/11
- 山崎 聡(糖尿病専門医)、益崎 裕章(糖尿病専門医・内分泌専門医・肥満症専門医)と申します。わたしたちは今回、肥満についてお話します。
- 久しぶりにあった家族や友人がひどい肥満になっていたら、あるいは自覚はあったが少しずつ太ってしまい肥満が長い間続いてしまったら、心配になりますよね。「このままでは致命的な病気になるのかもしれない?」、「もしかしたら悪い原因があるもしれない?」、「病院に行ったほうが良いのかな?」と不安になる方もおられるでしょう。
- そこで肥満の一般的な原因や予防や医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- わたしたちが日々の診察の中で「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしいこと」、「特に気を付けてほしいことについて記載しております。
まとめ
- 肥満とは沢山の脂肪が体についてしまうことで身長と体重からBMIを求め、判定できます。
- 具体的にはBMI 25以上が肥満です。
- 肥満はさまざまな形で健康を害します。肥満に関わる健康障害があるときは肥満症と呼ばれ治療が必要です。
- 予防を意識しましょう。自分の体重やBMIを把握することから始めてみましょう。
- 減量を行う際にはからだに負担のかかる食事や運動はかえって体調を崩すことがあります。
- 持病がある人、肥満歴が長い人、高度肥満になっている人、なにか症状がある人では特に注意が必要ですので医療機関を受診し指導をうけて注意しながら予防や減量を考えていきましょう。
肥満とは?
- 肥満とは沢山の脂肪が体についていることを指します。
- 肥満は身長と体重から判定できます。
- 具体的な計算の方法は、体重を身長の二乗で割る値のことで実にかんたんに計算できます。この値がBMI(body mass index)と呼ばれ25(kg/m2)以上であると肥満です。
主な原因とその説明
- 肥満のおもな原因としては、以下のようなことが挙げられます。
原因
- 食べ過ぎ
- 偏った食事
- 早食い
- 飲酒、喫煙
- 運動不足
- 睡眠不足
- その他にはホルモンの異常による肥満や遺伝子が関わる肥満があります。これらの肥満は二次性肥満と呼ばれ治療が必要な場合があるため医療機関の受診が必要です。
肥満に対して自分でできることは?
- 自分のBMIを知る:学校健診、職場健診、人間ドック、特定健診を利用しましょう。
- 食事や運動など生活習慣に気を付ける:現在の体重や食事を意識しながら生活してみてください。
- ただし、食事や運動は自分の体調と相談しながら行うとよいです。
- 持病がある人、肥満歴が長い人、高度肥満になっている人、なにか症状がある人、などでは適さない食事や運動があります。医療機関を受診して適切な食事や運動の指導を受けてください。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 以下のような肥満が関わる健康障害に気が付いたときは、病院に行ってください。
受診してほしい症状
- 血圧、血糖値、脂質・コレステロール、尿酸値が高い
- 月経異常
- 睡眠時無呼吸症候群
- 関節痛、関節変形
- その他にも、無気力、抑うつ、意識消失、冷や汗、骨のもろさ(骨密度の減少)、多毛や腕や足はやせている割にお腹はぽっこりでている様な肥満や顔貌の変化をともなう肥満は別の原因があるかもしれないので医療機関を受診してください。
お医者さんで行われること
- 診察は以下のような流れで行われます。
診察の流れ
- 問診
- 診察:身長、体重、血圧、心音、呼吸音、ホルモン異常に特徴的な所見がないかどうか確認します。
- 血液検査
- 尿検査
- 問診では、これまでの体重の推移、つまり一番体重があった時期や痩せていた時期、あるいはいつごろから体重が増加したかというのが教えていただきたいポイントです。
- 1日を通しての普段の食事内容、飲酒、喫煙について伺います。
- どのような学業や仕事をしているか、日常の1週間のスケジュール、運動習慣、睡眠時間を教えていただくことでその方の活動量や生活習慣の全体像を把握できます。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下の書籍を参照してください。
- 肥満症診療ガイドライン2016
もっと知りたい! 肥満
- 肥満症における適切な減量は肥満症に有効でありますが、とはいっても減量や生活習慣改善の達成や維持はしばしば難しいことがあります。頭で理解していても実際には行動に移せないジレンマがあり、意識することで行動変容を成功させることに日常生活や実際の診療において限界を感じることは患者さんおよび医療スタッフの方々においても珍しくはないでしょう。
- 近年、肥満は脳に変調をもたらすことが明らかになってきました。これは従来いわれていた脳梗塞のような限局した範囲の神経脱落症状を指すのではなく、脳全体の機能や相互作用のアンバランスを意味します。たとえば肥満者では満足を感じるための中心的なシステムである脳内報酬系の活動が低下していることが解明され、ならびにfunctional-MRIによる脳機能解析を用いた臨床研究においては動物性脂肪の過食で肥満した方では、食後の線条体の活性化(血流増加)が消失しドパミン受容体シグナルが低下することが明らかになりました。これらの新知見から高脂肪食の過食に伴う肥満では食事による満足感を脳が感じにくくなっていることが予想されます。
- 肥満にともなう満足を得られにくい脳にどのような介入が効果的か。そのエビデンスの構築にいま期待が高まっています。自らの意思で行動変容の達成を目指すだけでなく、食事や運動によって脳を制御し生活習慣の改善を目指すコンセプトに注目が集まります。満足しにくい脳をいかに「足るを知る脳」に復調させられるか。脳に効かせる介入方法の探索のため肥満と脳科学に今一層の発展が望まれています。
肥満の種類
原発性肥満
- 原発性肥満とは、食事や運動を中心とした生活習慣のアンバランスによって引き起こされたエネルギーの過剰摂取がもたらす肥満のことを指します。
- 世間でよくいわれる肥満はこれを指しており、世界中で急増しています。
- 現在世界で肥満者は7億人を超え、肥満が流行しています。世界的に肥満の対策が講じられています。
二次性肥満
- 二次性肥満とは、ホルモンの異常が特徴的な視床下部性肥満と遺伝性の病気に伴っておこる遺伝性肥満があります。また、薬剤の副作用による肥満があります。
視床下部性肥満
- 視床下部や下垂体の機能不全の種類や程度によってその症状はかわります。
- 肥満に関わるホルモンとして成長ホルモン、甲状腺ホルモン、男性における男性ホルモン(テストステロン)の低下も、基礎代謝の低下、筋肉量の減少とともに体に脂肪が蓄積しやすくなります。
遺伝性肥満
- Prader-Willi症候群、Bardet-Biedl(Laurence-Moon-Biedl)症候群およびレプチン・レプチン受容体遺伝子異常などの遺伝性疾患にともなう肥満があります。
- 発症の頻度は、Prader-Willi症候群では1-1.5万人出生に対して1人、国内では2000人程度といわれています。Bardet-Biedl症候群では、欧米では1.4-1.6万人出生に対して1人程度、日本ではそれより少ないといわれ、いずれもとても稀です。
- これらの遺伝性肥満では知能障害や性腺機能低下症がみられることが多いです。Prader-Willi症候群では、乳児期にかけて筋緊張低下のため、運動発達の遅れがみられることがあります。
薬物による肥満
- 抗精神病薬や副腎皮質ホルモンの中には、肥満を引き起こす薬剤があります。