多発性骨髄腫:どんな病気?検査や治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 血液専門医の半田 寛と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が多発性骨髄腫になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 多発性骨髄腫は血液のがんです。原因は分かっていない、ご高齢の方に多い病気です。
- 骨がもろくなることが多いので、骨粗鬆症によく似た症状で見つかることが多いです。貧血や腎不全で見つかることもあります。
- 診断には血液検査と骨髄検査が必要です。
- 今の医療ではまだ完全に治すことはできません。抗がん剤で治療しますが、長い人だと15年以上生きたり、短い人だと1年以内に亡くなったりなど、抗がん剤の効き目にばらつきがあります。
多発性骨髄腫は、どんな病気?
- 多発性骨髄腫は、いくつか種類のある白血球のうち、ウイルスや細菌などの病原体を攻撃する抗体を作り出す形質細胞が、がんになったものです。
- がんになった異常形質細胞が骨の中の骨髄で増え、破骨細胞という骨を壊す細胞を活性化して骨折を引き起こしたり、血液を造れなくして貧血を引き起こしたり、腎臓の機能を落として腎不全を引き起こしたりなど、様々な症状を引き起こします。
- 早く治療を受けるために、速やかに医療機関を受診してください。
- 治療は抗がん剤による治療になりますが、今の医療では完全に治すことは難しいです。治療については、血液専門医にご相談ください。
多発性骨髄腫と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 以下のような症状が現れた場合、医療機関を受診し検査を受けてください。
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- おさまらない腰や背中の痛み、激痛の場合
- 繰り返す肺炎や帯状疱疹
- 胸がドキドキする、息切れがするなどの貧血症状がある場合
- むくみが出たとき
救急車を呼ぶ場合
- 腰や背中の痛みで動けなくなったとき
- 意識がもうろうとしたとき
血液の専門の医師への紹介が必要な場合
- 血液検査で異常タンパクがあった場合
- レントゲンで異常な骨折があった場合
- 原因不明の貧血があった場合
どのような病院に受診したらよいの
- まずかかりつけ医で血液検査やレントゲン検査を受けてください。
- 多発性骨髄腫が疑われた場合、血液の専門の医師のいる医療機関(大学病院や地域中核病院)に紹介してもらってください。
多発性骨髄腫になりやすいのはどんな人?原因は?
- 年間10万人あたり5~6人の方に発症しています。多発性骨髄腫はご高齢の方で多く発症し、年齢とともにその割合は増え、80歳代では年間10万人あたり30人ほどに増えます。30歳以下の発症は稀です。原因はわかっていません。特別になりやすい人もわかっていません。
どんな症状がでるの?
- 多発性骨髄腫にかかった場合、以下のような症状がでることが多いですが、健康診断の血液検査により症状がない時に見つかることもあります。
多発性骨髄腫の症状
- 腰や背中の痛み
- 胸がドキドキする、息切れ
- むくみ
- 意識がぼーっとする
- 繰り返す肺炎(1年に2回以上)や帯状疱疹
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まず血液検査と尿検査で、多発性骨髄腫に特徴的に見られる異常タンパクがあるかどうかを検査します。
- 骨(多くは骨盤の骨)に針を刺して骨髄という液体を採る骨髄検査をして、異常形質細胞が増えているかどうかを検査します。
- 骨のレントゲン写真やCT、MRI、PETなどを撮影し、異常な骨折などを起こしていないか検査します。
どんな治療があるの?
- 65歳以下と66歳以上で治療法が違います。ただし、この年齢の境界は、内臓の機能などの条件によって上下することがあります。
65歳以下の患者さん
- 治療は下記のようなスケジュールで行われることが多いです。
治療の流れ
- まず2-3種類の薬を組み合わせた寛解導入療法と呼ばれる治療を3-4サイクル行う
- 次に自分の造血幹細胞(血液を造る元になる細胞)を血液中から採取し、凍らせて保存しておく
- その後、大量の抗がん剤を投与する
- 採っておいた自分の造血幹細胞を戻す
- (その後2-3種類の薬を組み合わせた治療を数サイクル行う地固め療法や1種類の薬を再発するまで続ける維持療法を行うこともあります)
66歳以上の患者さん、臓器の機能が低下している患者さん
- 2-4種類の薬を組み合わせた治療を1年~1年半続けて、効果がでたら薬を一旦やめて再発まで経過をみるか、再発するまでそのまま続ける治療を行います。
再発した患者さん
- 再発した場合は、様々な薬を組み合わせて治療を行いますが、原則、次の再発まで続けて、再発したら薬を変更します。
合併症の治療
- 多発性骨髄腫は、異常な骨折や貧血、腎不全などの様々な症状を合併します。骨の破壊を止める薬の投与や、必要に応じて透析など、合併症に対する治療も必要です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 多発性骨髄腫の治療中は、 免疫が弱っています。肺炎などの感染症にかからないために、手洗い、うがい、歯磨きをまめに行い、マスクを付け、人ごみになるべく出ない、小さいお子さんと関わらない、など感染予防を心がけてください。
- 感染症にかかると、多発性骨髄腫に対する治療を中断しなければならなくなり、病気が悪化します。特に治療開始してすぐの頃には注意してください。
- 多発性骨髄腫により骨が弱くなっているので、重いものを持ったり、転んだりすると骨が折れる危険性が非常に高いです。骨折すると治療を中断しなければならなくなるので注意してください。
- 骨の破壊を防ぐ薬には、投与期間中に歯を抜くと、抜いた場所の顎の骨が溶ける副作用があります。それを避けるために、抜歯は投与前に行い、投与後は歯磨きや歯周病チェックをまめに行ってください。
予防のためにできることは?
- 残念ながら、多発性骨髄腫の予防法はありません。ただし重症になる前に早期に発見して治療を開始することで、長生きできるチャンスが増えます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 現代の医療では、残念ながら治すことはできません。しかし薬が進歩し以前より長く生きられるようになっています。以前は平均して約3年は生きることが出来ましたが、今は5~6年と長くなっています。
- 治療薬の効き方には個人差があるため、残念ながら1年くらいでお亡くなりになられる方もいますが、15年以上と長く生きられる方もおり、そのような方が増えてきています。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本骨髄腫学会ホームページ
- http://www.jsm.gr.jp
- 日本骨髄腫患者の会ホームページ
- http://www.myeloma.gr.jp
- キャンサーネットジャパンがん情報血液がんホームページ
- http://www.cancernet.jp/cancer/blood