MRI(造影含む):どんな検査?検査を受けるべき人は?検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2020/11/11
- 放射線診断専門医の高野浩一と申します。
- 代表的な画像検査方法の一つであるMRI検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- 「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」についてまとめました。
目次
まとめ
- MRI検査(磁気共鳴画像)とは、磁石のトンネルの中に入り、強い磁気と電波を使って、体内の画像を撮影する検査です。
- 安全な検査ですが、狭いところが苦手な方にはつらいかも知れません。
- 磁石の中に入りますので、金属類が体に入っていると検査が受けられないことがあります。
- 一般に、CT検査よりも体内の状態を詳しく調べることができます。
- 一般に、CT検査よりも時間がかかります(30分から1時間くらい)。
- 検査中に、造影剤【ぞうえいざい】の注射をすることがあります。
- 検査は、外来でも入院でも行うことができます。
どんな検査?
- MRI(Magnetic Resonance Imaging/磁気共鳴画像/じききょうめいがぞう)検査とは、磁石のトンネルの中に入り、強い磁気と電波を使って、体内の画像を得る検査法です。
- 磁石の中に入りますので、体内に金属が入っている方などは検査ができないことがあります。また金属類や磁気カードなどは持ち込めません。
- 検査の間は工事現場のような大きな音が聞こえます。
- 検査中に体を動かすと画像が乱れてしまいますので、動かないようにしていただく必要があります。お子さんなど、じっとできない場合には、鎮静剤などを使って眠ってもらう場合もあります。
- 検査の途中で、造影剤(ぞうえいざい)という薬を注射する場合があります。
- 検査時間は、30分から1時間ほどです。
- 検査費用は、機械の種類や検査する部位などにより変わります。3割負担の場合、単純MRI検査(造影剤を使わない検査)でおよそ4,000~9,000円、造影MRIで10,000~14,000円ほどかかります。
図表1 MRI
どういう人がこの検査を受けるべき?
- MRI検査は、頭から足まで、体の中の様々な部位の病気が疑われるときに行われます。超音波検査やX線CT検査で病気が見つかったときに、その状態をさらに詳しく調べたいときに、よくMRI検査が行われます。
- また、病気があらかじめわかっている場合にも、病気の範囲を詳しく見たいときや、病気が時間とともにどう変化したかを確認したいときなど、様々な目的で行われます。 以下に、対象になる病気の例をいくつか示します。
MRI検査の対象となる病気
- 脳の病気:腫瘍、脳梗塞【こうそく】、頭や首の血管を見るとき
- 腹部の病気:肝臓、腎臓、すい臓、子宮、卵巣など
- 手足や関節、骨の病気
- 背骨や脊髄【せきずい】の病気
- MRIは、強い磁石を使いますから、検査室の中に入れない場合があります。体の中に金属が入っている方などは要注意です。特に以下のような方は検査を受けられないことがあります。前もって担当の医師や放射線科に確認しておく必要があります。
MRI検査を受ける前に相談が必要な方
- 心臓ペースメーカーを入れている方
- 人工内耳を入れている方
- 神経刺激装置などの電子機器が入っている方
- 脳動脈瘤の手術で金属クリップがある方
- 心臓の手術で人工弁を入れている方
- 人工関節、歯列矯正ブリッジ、歯科インプラントなどの金属がある方
- 小さいお子さんなど、じっとしていることが困難な方
- 刺青【いれずみ】、タトゥーやアートメイクをしている方
- 狭いところが苦手な方・閉所恐怖症の方
- 妊娠している可能性がある方
実際には、どんなことをするの?
- 検査内容によっては、検査前の食事を抜いたほうがよい場合があります。
- 検査のときは、身に着けている金属類は取り外します。貼り薬も場合によっては外す必要があります。時計や携帯電話などの機械類、磁気カード(クレジットカード、テレホンカード、定期券など)は検査室には持ち込めません。
- 小さなベッド(写真の左、手前)に寝て、ベッドごと、強い磁石のトンネル(写真右、奥)の中に入ります。
- 検査の間は、工事現場のような大きな音が聞こえます。
- 検査中に体を動かすと画像が乱れてしまいますので、じっと動かないようにしておく必要があります。小さなお子さんなど、じっとできない場合には、事前に鎮静剤などを使って眠ってもらう場合もあります。
- 検査時間は、内容によりますが、30分から1時間ほどです。
- 場合によっては、ガドリニウムという物質を含む造影剤を、検査中に血管に注射することがあります。造影剤を使うことによって画像が明瞭になり、より詳しい情報を得ることができたり、新たな病気が見つかったりします。
- ガドリニウム造影剤は基本的に安全な薬ですが、以下に当てはまる方は造影剤を使えないことがあります。前もって担当の医師や放射線科に確認しておく必要があります。
ガドリニウム造影剤を使う前に相談が必要な方
- 喘息【ぜんそく】にかかったことがある方
- アレルギー体質の方
- 妊娠している可能性がある方
- 授乳中の方
- 腎臓の働きが良くない方
- 過去に造影剤を使って副作用が出たことがある方
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 検査時間は、内容によりますが、30分から1時間ほどかかります。
- MRI検査では通常、痛みや熱さなどを感じることはありません。造影剤の注射を使う場合は、注射による痛みがあります。
- 検査の間は工事現場のような大きな音が聞こえます。 また狭いトンネルの中に入りますので、閉所恐怖のような狭いところが苦手な人は苦痛を感じることもあります。
他にどのような検査法があるの?
- よく行われる画像検査として、CT検査と超音波検査があります。それぞれに得意な部分と苦手な部分がありますので、担当医とよく相談して検査方法を決めるのがよいと思います。
X線CT検査(Computed Tomography/コンピューター断層撮影)
- MRIと違い、放射線(エックス線)被爆があります。磁石や電波は使いません。
- 一般に、CTよりもMRIのほうが体内の状態が詳しくわかります。
- 一般に、CTよりもMRIのほうが時間がかかります。
超音波(エコー)検査
- 体に超音波を当てて、音波がはねかえる様子をもとに断面画像を作ります。
- 放射線被爆はありません。また磁石や電波は使いません。
- 一般に、短時間で済みます。
- 頭の中や肺など、骨や空気で囲まれた場所はよく見えません。
理解しておきたい リスクと合併症
- MRIは普通は安全な検査ですが、強い磁石の中に入るため、体の中に金属や機械類が入っている場合や、間違って磁気カードを持ち込んだ場合は、磁石に吸い寄せられて外れたり、壊れることがあります。
- 磁石の中に入ったあと、電波を照射します。このとき、体の表面が熱くなったり、まれにヤケドをすることもあります。いれずみ・アートメイクなどをしている方はヤケドの可能性が高くなるかも知れません。お化粧は控えめにした方が良いです。
- 磁石の筒の中は狭いので、狭いところが苦手な方や閉所恐怖症の方は検査できない可能性があります。
造影剤の副作用・合併症
- MRI検査に使われるガドリニウム造影剤は基本的には安全な薬ですが、まれに副作用を起こすことがあり、多くは注射の直後に起こります。ほとんどは軽いものですが、ごくまれに重い副作用や、また時間が経ってから現れる遅発性の副作用もあります。副作用の種類と頻度は以下の通りです。
- 軽い副作用:吐き気、かゆみ、発疹など:およそ100人につき1~2人(1~2%)
- 重い副作用:呼吸困難、意識障害、血圧低下など:約15000人に1人(0.0065%)
- 遅発性【ちはつせい】副作用:まれに、注射のあと30分から数日後に、発疹や吐き気などが現れることがあります。
- 腎性全身性線維症(NSF):非常にまれですが、重い腎臓病のある人では、ガドリニウムが体の中にたまってしまい、皮膚や関節のこわばりが現れます。重症のときは生命に係わることもあります。
- 血管外漏出【ろうしゅつ】:造影剤を注射するときに、血管の外に漏れてしまうことがあります。腫れたり痛みを伴うことがありますが、通常は時間が経てば自然に吸収されますので心配いりません。
検査後の注意は?
- MRIは安全な検査であり、一般的には、検査の後は、いつも通りに生活してかまいません。
- 検査の後に、かゆみ、痛み、吐き気、息苦しさなどの症状が新たに起こった場合には、検査をした施設に相談してください。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- MRI検査自体による合併症は少ないですが、まれに、お化粧(アートメイク)やタトゥーなどに関連したヤケドを起こす可能性があります(【理解しておきたい リスクと合併症】をご参照ください)。
- 造影剤を使った場合には、副作用に気をつける必要があります。多くは注射の直後に起こりますが、時間が経ってから現れる遅発性の副作用として、30分後から数日後に、発疹や吐き気などが現れることがあります(【理解しておきたい リスクと合併症】の造影剤の副作用・合併症をご参照ください)。
- 検査の後に、皮膚のかゆみや痛み、発疹や色の変化、吐き気、息苦しさなどの症状が現れた場合には、検査をした施設に相談してください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- MRI検査のより詳しい情報については、以下のウェブサイトを参照してください。
- 日本磁気共鳴医学会ページ、市民向けFAQサイト:安心してMRI検査を受けていただくために
- http://growlab.co.jp/jmrts/wp/