乳腺炎:原因は?症状は?食事との関係は?マッサージの効果は?治療は?
更新日:2020/11/11
- 乳腺専門医の井口 雅史と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が乳腺炎になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 乳腺炎は初めてお母さんになる女性の方に多い病気で、胸に痛みや腫れがみられます。ひどくなると赤みが出たり、熱が出たりします。
- はじめのころは、おっぱいを赤ちゃんに飲ませてあげたり、ご自身で詰まったおっぱいを搾ったりすることでよくなります。症状が24時間以上続く時や、熱がでた場合は、お医者さんに相談してください。
- 乳腺炎のほとんどは赤ちゃんにおっぱいをあげている期間に起こります。おっぱいをあげていないのに胸の痛みがありましたら、乳腺炎以外の病気の可能性もあるので、病院の受診をお勧めします。
乳腺炎は、どんな病気?
- 乳腺炎とは、主におっぱいをあげる時期に、おっぱいの通り道(乳管【にゅうかん】といいます)が詰まっておっぱいが溜まり、さらにそこにばい菌が入ることで起きる炎症のことをいいます。
- 赤ちゃんに十分におっぱいを吸ってもらったり、搾ったりすることでも治りますが、症状がひどい場合は病院に受診していただくことが必要になります。
どんな症状がでるの?
- 症状としては以下のようなものがあります。
乳腺炎の症状
- 自然にしていてもおっぱいが痛い。
- おっぱいを押さえると痛い(圧痛【あっつう】といいます)。
- おっぱいの全体または部分的に腫れている(腫脹【しゅちょう】といいます)。
- やわらかいしこりがある(よくなると消えます)。
- おっぱいが熱い感じがする。
- 熱が出る。
乳腺炎になりやすいのはどんな人?原因は?
- 以下のような方に起こりやすいです。
乳腺炎になりやすい方
- おっぱいをあげている時期の女性
- 特に初めてのお産だった方
- 産後6週間以内の方
- 乳腺炎の原因は、おっぱいの通り道である乳管が詰まってしまうことです。乳管が詰まると管の中の圧力が上がり、また、周りに炎症が起こるために、症状があらわれます。
- 初めてのお産の方は乳管が細く未発達なためにおっぱいが詰まりやすく、とくに乳腺炎になりやすいとされています。
どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- おっぱいをあげている時期の乳腺炎は、ふつうは1、2日で治ります。ただし、症状がつらい場合や、症状が治まってもしこりが消えない場合は、別の病気が同時に起こっている可能性があるので、病院を受診してください。
- おっぱいをあげる時期以外に起こる乳腺炎は、治りにくいものや、乳がんなど別の病気の可能性もあるので、症状が続く場合は、病院を受診してください。
乳腺炎と思ったら、どんな病院・クリニックを受診したらよいの?
- おっぱいをあげている方は、まずは産婦人科を受診してください。受診の前に助産師さんに相談してみてもよいです。
- 症状が長引く場合や、しこりが長く残っている場合、またおっぱいをあげている時期ではない方は、乳腺外科のある病院を受診しましょう。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 乳腺炎に対するマッサージや薬局で買えるお薬など、ご自身でできることがあります。症状別にご案内します。
- 症状が軽い場合:なるべくおっぱいをあげたり、しぼったり、おっぱいをマッサージすることによってよくなります。ご自分でうまくできないときは助産師さんに相談してください。
- 痛みが強い場合:おっぱいに赤みがある場合は冷やしてみてください。
- 痛みや、熱でつらい場合:カロナールなどのアセトアミノフェンと呼ばれるお薬がドラッグストアで売られています。これはおっぱいをあげている時期にも安全に飲むことができます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まずは、痛みの場所や強さを伺い、赤みの程度を調べます。その後、次のような検査を行います。
- 乳腺超音波検査【にゅうせんちょうおんぱけんさ】:検査用のゼリーを付けた超音波を出す機械を胸にあて、乳腺の炎症や乳管の広がり具合、ばい菌がはいっていないか(膿【うみ】が溜まっているかどうかで判断します)を調べます。
- 血液検査:炎症がどれくらいかを調べます。
どんな治療があるの?
- 以下のような薬で治療します。
乳腺炎の治療で使うお薬の例
- 消炎鎮痛剤【しょうえんちんつうざい】 :痛みや炎症を和らげます。
- 抗菌剤【こうきんざい】:おっぱいに入ってしまったばい菌が増えないようにする薬です。
- 葛根湯【かっこんとう】:ドラッグストアでも売っていて、風邪薬としても有名な漢方薬【かんぽうやく】です。痛みや炎症を和らげたり、おっぱいを出やすくします。しかし、消炎鎮痛剤や胸のマッサージの代わりとして使用するお薬で、症状が改善しない場合は病院を受診してください。
- 上記の治療でも改善しない場合は、一旦、おっぱいを出ないようにする薬を飲むこともあります。この場合、おっぱいが出なくなるため、赤ちゃんにおっぱいをあげられなくなります。
お薬を飲んだ後、赤ちゃんにおっぱいをあげてもよいの?
- お薬を飲むことで、赤ちゃんへの影響が気になるところですが、お薬がおっぱいへうつる可能性はとても低いことがわかっており、影響はほとんどありません。
- 乳腺炎の治療で使う消炎鎮痛剤や抗菌剤のほとんどは、お薬を飲んでいても、おっぱいをあげることができます。
- またおっぱいをあげ続けることは、おっぱいの詰まりを取り除くことができるため、治療にもなります。
- もし、使う薬の安全性が心配な場合は、以下のサイトで確認してみてください。
- 国立成育医療研究センター、>妊娠と梳り情報センター>ママのためのお薬情報>授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと>授乳中に安全に使用できると考えられる薬(一覧表)
- http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist.html
予防のためにできることは?
- おっぱいを詰まらせないで出してあげることと、胸をきれいにして、ばい菌が入らないようにすることが重要です。
- 具体的には以下のようなことができます。
乳腺炎を予防するためにできること
- 十分におっぱいをあげる
- 余分なおっぱいはしぼる
- おっぱいをマッサージする
- 乳首のケアをする
- おっぱいをあげる前は手を洗う
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 軽い場合:1、2日以内によくなります。
- お薬が必要な場合:1-2週間ほどかかります。
- 膿ができた場合:通院が必要となり、2週間以上かかることもあります。