腰椎穿刺:どんな検査?検査を受けるべき人は?検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2020/11/11
- 医師の服部功太郎と申します。
- 「腰椎穿刺」と聞くと、いかにも痛そうな感じがしますが、検査を受けられた方の大半は、「痛みは採血と変わらなかった」とおっしゃいます。
- とはいえ、背中側から針を刺すため、自分で見ることはできず、はじめて受けられる方は、「なにをしているのだろう」と不安を抱かれると思います。
- そこで、この検査では「何のために」「どんなことを行うのか」、「検査中や検査後の注意点」、などについてまとめてみました。
目次
まとめ
- 腰椎穿刺は、脳や脊髄の周りにある脳脊髄液をとるために行います。脳脊髄液の成分を調べることで、脳や脊髄の病気の診断や評価をします。
- 検査では背中に針を刺して、背骨の後ろにある脊柱管という管から脳脊髄液を採取します。採取には30分から1時間程度かかります。
- 検査をする際に皮膚の局所麻酔をします。そのため、痛みは主に最初の麻酔の際に生じます。皮膚の下は、神経が少なく、大抵は痛くありません。
- 検査後に一時的な頭痛(硬膜穿刺後頭痛)が生じることがあります。横になると改善します。ほとんどの場合、安静にしていれば数日以内に治まります。
どんな検査?
- 腰椎穿刺とは、脳脊髄液という脳と脊髄の周りに溜まっている無色透明な液体を取るための検査です。
- 腰椎穿刺では、患者の腰の位置から針を刺し、背骨の後ろにある脊柱管から脳脊髄液を取ってきます。
- 脳脊髄液は脳や脊髄から出た成分を多く含んでいます。そのため、この成分を調べることで、細菌や異常な細胞が含まれていないか、脳や脊髄の病気がないかを評価することができます。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 腰椎穿刺は、下記のような症状が出ている人や、脳や脊髄の病気が疑われる人が受ける検査です。
腰椎穿刺を受けてほしい方
- 頭痛や発熱、けいれん、意識障害などで脳炎・髄膜炎の可能性がある方
- アルツハイマー病などの認知症の疑いがある方
- 脳腫瘍や、がんの転移の有無を調べる必要のある方
- その他、脳や神経の病気が疑われる方
- 脳が腫れている場合や、血液が止まりにくい場合(血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合)、あるいは針を刺すところにけがや、ただれがある場合などでは、検査できないことがあります。
実際には、どんなことをするの?
- 腰椎穿刺を行う前にまず、脳が腫れていないかどうか、眼底検査やCT/MRIなどで調べます。異常がないことが分かると下記の手順で検査を行っていきます。
検査の手順
- 患者はベッドに横たわり、膝を抱え込むように背中を丸めます。膝頭が揃っていること、なるべく胸の方に近づけることが重要です。椅子に座った姿勢で行うこともあります。
- 担当医は腰の骨や背骨に触れて位置を確認し、刺す位置とその周囲を消毒します。
- 消毒をしたら、腰椎穿刺をするところに、細い針で局所麻酔を行っていきます。
- 麻酔が効いたら、皮膚の下に向かって、腰椎穿刺針を少しずつ進めていきます。皮膚の下には、靭帯というスジがあり、通常は神経がないので痛くないことが多いです(後述)。
- 少しずつ針をすすめていき(通常5~6cm)、脊柱管に届いたら、脳脊髄液が出はじめます。こうなれば、もう痛いことはありません。脳脊髄液を集めるのには5~10分くらいかかります。集め終わるまで姿勢は大きく変えずにお待ちください。
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 腰椎穿刺自体は通常30分から1時間程度で終わります。担当医の判断で、検査後に1時間程度ベッドで安静にする場合もあります。
- 最初の局所麻酔の際に、採血の時に感じるような、チクリとした痛みを感じます。麻酔の後、腰椎穿刺針を刺す際には、指で押されているような感じはしますが、痛みを感じないことが多いです。
- 途中で、もし痛みを感じた場合は、遠慮せず担当医に伝えてください。針の方向を変えたり、麻酔を追加したりできます。
- まれに、針が神経に触れて、脚やお尻がピリッとすることがあります。その場合は、すぐに担当医に伝えてください。針を元に戻せば消えます。
- かゆい部分、痛い部分があったり、同じ姿勢でしびれたりしたら、気軽に周りのスタッフに声をかけてください。
他にどのような検査法があるの?
- 脳や脊髄の疾患が疑われたら、腰椎穿刺の他に脳画像 (MRI/CT)検査を行います。
他の検査
- 脳画像(MRI/CT)検査:くも膜下出血やアルツハイマー病、がんの脳・脊髄への転移などについては、MRI/CTなどの脳画像検査で評価することがあります。これらの検査では針を刺したりしませんので、痛みはありません。また、脳脊髄液検査と異なり、脳や脊髄のどこに異常があるか分かります。ただし、成分の変化や細胞の種類は分かりませんので、組み合わせて検査することもあります。
- 脳炎、髄膜炎の場合は脳画像検査では、わかりづらいため、脳脊髄液検査が必要です。
理解しておきたい リスクと合併症
- 腰椎穿刺の後は下記のような合併症に注意してください。
合併症
- 硬膜穿刺後頭痛(腰椎穿刺後頭痛):腰椎穿刺後5~40%に発生する頭痛で、横になると治まり、立ったり座ったりすると生じます。吐き気や、耳鳴りなどを伴うこともあります。若い人・女性・やせ型の方に起こりやすい傾向があります。これらは、脊柱管に針で開けた穴が十分に塞がらないためにおこると考えられています。安静にしていると大半の方は数日で治まります。
- 腰痛:麻酔が切れたあと、4割くらいの方で腰の痛みや、重い感じが生じます。通常は数日で治まります。
- その他:脳圧が高くなっている方(通常、頭痛や嘔吐、意識障害などを伴います)に検査を行うと、脳ヘルニアが起こる危険があます。血液が固まりにくい方では脊髄硬膜外血腫や硬膜下出血が生じるリスクがあります。また、穿刺を行う部分が感染している方、免疫機能が低下している方では髄膜炎が生じることもありえます。
検査後の注意は?
- 腰椎穿刺の後は下記のようなことに注意してください。
検査後に注意すべきこと
- 検査後は頭痛や腰痛が生じる場合があるため、担当医の判断で、しばらくベッドで安静にする場合があります。
- 頭痛がなかった場合でも、重いものを持ったり、激しい運動、飲酒などは控えましょう。入浴についても、担当医の判断になりますが、シャワー程度は浴びて良いことが多いです。
- もし、頭痛が生じた場合は、横になってみてください。また、水分をしっかりとって、安静にしてください。通常は数日以内に治まります。
- コーヒー3杯程度のカフェインも効果があると言われています(拡張した脳の血管を元に戻す作用)。
- 痛み止めを処方されていれば服用してみてください。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- 検査後に下記のような症状があったら病院を受診してください。
病院を受診してほしいとき
- 頭痛:横になっても治まらない頭痛が生じたり、発熱、けいれん、意識障害などを伴う場合は、病院にご連絡ください。横になると治まる頭痛が、数日以内に改善しない場合、嘔吐や耳鳴り、ものが二重に見える等の症状が続く場合は病院にご連絡ください。
- 足やお尻の痛みやしびれ:まれに脊柱管の外側に血だまりができて、神経を圧迫することがあります(脊髄硬膜下血腫)。検査後に徐々に足、お尻に痛みやしびれ等を感じ、悪化してきた場合には、病院に連絡してください。