QT延長症候群:どんな病気?検査や治療は?生活の制限は?完治できる?
更新日:2020/11/11
- 不整脈専門医の髙橋 尚彦と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分がQT延長症候群ではないか?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方にとって役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- QT延長症候群とは、心臓から発せられる電気伝達に異常があり、気を失ったり、突然死を引き起こす病気です。
- 遺伝子によるものがQT延長症候群の70~80%の患者さんに認められます。
- 症状があらわれることを予防するためには、水泳やマラソンなどの激しい運動は避けなければいけません。
- お薬による治療が有効なことが多いです。
QT延長症候群は、どんな病気?
- 心臓は自身から発せられる電気伝達によって動いています。
- QT延長症候群とは、心臓の電気伝達の異常によって、気を失ったり、突然死をきたす病気です。
- 遺伝子異常が原因になることが多く、家族性に認められることもあります。
- 激しい運動を避けるなどの適切な生活習慣や薬の内服によって症状を予防することが大切です。
QT延長症候群と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 学童健診などで心電図をとった際にQT延長を指摘され、詳しい検査のために専門の医療機関を受診する場合が多いです。
- それ以外でも下記のような場合はQT延長症候群が疑われますので受診すべきでしょう。
QT延長症候群を疑う場合
- めまい、ふらつき、けいれん、気を失ったりした場合
- 家族や親族にQT延長症候群と診断された人がいる場合
- 家族や親族に30歳未満で突然死した人がいる場合
QT延長症候群になりやすいのはどんな人?原因は?
- QT延長症候群になりやすいのは下記のような人です。
QT延長症候群になりやすい人
- 家族にQT延長症候群がいる人
- 中学生ぐらいまでの子ども
- 2000人に1人程度がQT延長症候群を発症します。
- やや女性に多くみられます。
どんな症状がでるの?
- QT延長症候群になった場合、下記のような症状を示します。
QT延長症候群の症状
- めまい
- ふらつき
- けいれん
- 気を失う
- 運動時に起きることが多いです。
- 意識を失ったあと意識が回復せず、突然死することもあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院では下記の検査をすることになります。
検査の種類
- 心電図検査:心臓から発せられる電気信号の異常がないかを調べます。運動時に起こりやすいので、運動をしながら心電図をとる場合もあります。
- 遺伝子検査:採血して遺伝子の異常を調べます。
どんな治療があるの?
- QT延長症候群と診断された場合、以下のような治療法があります。
治療
- 生活指導:症状が現れやすくなる原因の排除を行います。具体的には激しい運動を避けたり、目覚まし時計や電話などの突然の音を避けることです。
- 薬剤療法:心臓からの電気信号の異常が出ないような薬を服用することになります。
- 手術療法:病状が悪いと、突然死につながる可能性があるので、そのようなときに自動的に心臓のはたらきを正常に戻す機械をつけます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- ある種の抗菌薬はQT延長や心臓発作を起きやすくさせます。風邪をひいて病院や医院を受診する場合には医師に相談してください。
- また、抗菌薬以外にも避けるべき薬があるので注意することが大切です。
- 病院や医院を受診する際には、必ずQT延長症候群であることを申し出てください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- QT延長症候群は残念ながら、完全に治る病気ではありません。
- いったん発症してしまった場合、生活習慣、薬の内服、植込み型除細動器などの適切な指導、治療を受けることになります。
- 心臓発作が起きなくなれば寿命は大きく伸びます。
追加の情報を手に入れるには?
- QT症候群について詳しく知りたいかたは、学会(日本循環器学会 日本心臓病学会 日本不整脈心電学会)から公表されているガイドラインを見るとよいです。
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_aonuma_h.pdf
さいごに
- QT延長症候群は遺伝子の異常によって起こることが多いのですが、いろんな薬、体内の電解質異常(おもに血中のカリウム濃度が低い場合)、徐脈などが原因で後天性に生じることもあります。
- QT延長をきたす可能性のある薬はCredibleMedsのウェブサイトに載っています。
- https://crediblemeds.org/