肝癌:原因は?症状は?ステージとは?検査は?治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 肝臓癌専門医の豊田 秀徳と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が肝癌になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 肝癌とは、肝臓にできた癌のことです。
- 肝癌は進行するまでは症状が出ず、検査をしないと発見されません。
- 放っておくと進行し命にかかわります。
- 肝癌には治療として手術のほか、複数の治療法があります。
- 一旦治療しても再発しやすい癌です。
- 肝癌はもともと肝臓が悪い人に発生しやすく、肝臓の状態の改善が肝癌発生の危険を低下させるとされています。
肝癌は、どんな病気?
- 肝癌とは、肝臓にできる癌のことです。
- もともと体の他の部位に出来た癌が肝臓に飛んで生じた癌の場合は肝転移(転移性肝癌)といいます。
- 一般には肝癌といえばもともと肝臓にできた癌のことを指します。
医療従事者向けコラム:がんの種類
- 肝癌には大きく分けて肝細胞癌と肝内胆管癌の2種類があります。
- 肝臓には代謝をしたり胆汁を作ったりする肝細胞と、胆汁を流す管の壁になる胆管細胞があり、前者が癌化したものを肝細胞癌、後者が癌化したものを肝内胆管癌といいます。
- どちらも癌ですので、放っておけば進行して死に至ります。早期発見・早期治療が重要なのも同様です。
肝癌と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 肝癌は進行するまで症状が出ません。
- したがって、検診や人間ドックでの検査で指摘されて気づくことが多いです。
- 指摘をされたら必ず医療機関にかかることが大切です。
- その際には、肝癌であるかないか、良性か悪性かなどを判定するためにより詳しい検査が必要になります。
- したがって詳しい検査のできる設備のある病院を受診することをおすすめします。
肝癌になりやすいのはどんな人?原因は?
- 肝癌でも種類によってなりやすい人、原因が異なります。
肝細胞癌の場合
- 肝細胞癌はもともと肝臓が悪い人、つまり肝炎や肝硬変の人に発生しやすいです。
- 特に肝硬変では肝癌発生の危険は非常に高くなります。
- したがって肝臓が悪いといわれている人は、癌ができていないか定期的に検査をする必要があります。
- 以前は肝炎ウイルスによる慢性肝炎が肝癌の原因の多くを占めていました。
- 最近では脂肪肝から肝臓が悪化して肝硬変となり、最後は肝癌が発生してしまう人が増えています。
肝内胆管癌の場合
- 肝内胆管癌は肝細胞癌に比べるととりわけ発生する危険の高い人というのはありません。
どんな症状がでるの?
- 肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、癌も進行しないと症状が出ません。
- これが肝癌の大きな問題で、検査を受けないと手遅れの状態で見つかることがほとんどです。
- もともと肝硬変など肝臓の病気があると肝癌が発生する危険が高いことが分っており、そのため定期的に腹部エコーなどの検査を受けていた人は早期に発見されることがあります。
- 癌が進行すると下記のような症状が出ます。
肝癌の症状
- お腹の張り
- お腹の痛み
- 黄疸
- 食欲がでない
- 症状がきっかけで肝癌に気づくことがありますが、この場合は効果的な治療が出来ないところにまで癌が進行していることが多いです。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 肝癌を疑われると、下記のような検査をすることになります。
検査の種類
- 超音波(エコー)検査:癌の肝臓内における部位、癌の大きさ・個数を把握します。
- CT検査:超音波検査より正確に癌の個数を把握するとともに、悪性度、広がり・特に肝内の血管内に広がっていないかなどを調べ、癌のステージを評価します。
- MRI検査:CT検査同様にステージの評価をするために行います。
- より細かく診断をつけるために、血管造影検査や針生検という検査をすることがあります。
医療従事者向けコラム:診断をつけるために
- 小さな腫瘍の場合、見つかった腫瘍が本当に癌かどうか、肝細胞癌なのか肝内胆管癌なのか判断に迷う場合があります。この場合は血管造影検査を行ってさらに腫瘍の質をさらに詳しく検査することもあり、それでも判断がつかない場合には針生検といって腫瘍に直接針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で見て判断する場合もあります。
どんな治療があるの?
- 肝細胞癌の治療は主に手術療法、局所療法、放射線療法、薬物療法があります。
手術療法・局所療養
- 手術療法・局所療法では主に3種類あります。
手術療法・局所療養の種類
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- 治療は可能であれば手術で切除するのが最も効果的であるといえます。
- ただ癌の大きさや個数・広がりによっては取りきれない場合もあります。
放射線療法
- 体幹部定位放射線治療や陽子線・重粒子線治療が行われるようになっています。
薬物療法
- 薬物療法では分子標的薬という抗がん剤を使って癌を小さくすることもあります。
- 一部の肝癌患者さんには高い効果が認められています。
- 一方、肝内胆管癌の場合は、手術が困難な場合には全身の抗がん剤治療(化学療法)が主体となります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 肝細胞癌の場合は、もともと癌ができやすい肝臓に発生していることが多く、新たに肝癌が発生してくることも少なくありません。
- 再発しても早期発見していれば再び癌を完全に除去する治療が可能なため、必ず専門の先生への通院を続けることが大切です。
- 手術や局所療法では治療直後以外に特に症状はありませんが、治療を繰り返すことにより肝機能が低下していくという問題点があります。
- 分子標的薬治療や化学療法では、それぞれの薬に特徴的な副作用が出る場合があります。
- 治療開始前に主治医からよく説明を受けてください。
予防のためにできることは?
- 肝癌は残念ながら、他の癌と同じように100%の予防は不可能です。
- 肝細胞癌は肝臓の悪い人に発生することがほとんどなため、肝臓自体の治療をすることが癌発生の危険を低下させることにつながります。
- したがって、下記のことに気をつけることが大切です。
予防のために
- ウイルス性肝炎の場合、内服薬によって肝炎ウイルスを抑制・排除する
- アルコールによる肝障害の場合、禁酒する
- 脂肪肝の場合、減量する
- 癌が出来てしまっても十分な治療が可能であるために早期発見・早期治療がやはり重要です。
- 肝癌の危険が高いと思われる人には定期的な検査がすすめられます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 癌自体は早期発見されて、適切な治療を受ければ治ります。
- しかし再発する危険は高いため、その後も定期通院し検査を受けることが重要です。
追加の情報を手に入れるには?
- 肝癌治療の詳細・予防その他については、下記のページをみるとよいでしょう。
- 日本肝臓学会・日本肝癌研究会肝癌診療ガイドライン2017のサイト
- https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp_2017