リステリア:どんな病気の原因になるの?どうやって感染するの?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の岡 秀昭、西田 裕介と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がリステリア菌に感染してしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- リステリア菌は土の中にいる細菌です。菌がついている食べ物を、火を通さずに食べると、食中毒を起こします。
- 多くの場合は約2日で、自然に治ります。
- 高齢の方、妊婦さん、体が細菌をやっつける力が弱い方は、症状が重くなることがあり、注意が必要です。
リステリアは、どんな病気?
- リステリア感染症とは、土の中にいるリステリア菌という細菌にかかることによって起こります。
- 健康な方にかかると、食中毒を起こします。
- 細菌をやっつける力(免疫力)が低くなっている方は、菌が血液や脳などに入り込み、重い症状を引き起こすことがあります。
リステリアと思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?
- 殺菌していない乳製品、加熱していない肉類、水洗いしていない生野菜などを食べてから、発熱、下痢、嘔吐などの症状がある場合、とくに細菌に抵抗する免疫力が低下している方(妊娠している、ステロイドなどの免疫を抑える治療を受けている、がん患者さんなど)は、受診を考えましょう。
- 健康な人でも、水が全くとれないときや、同じ食事をした人が同じような症状がある場合は、受診を考えましょう。
- 免疫力が低下している人で、熱が出ている、頭が痛い、意識がもうろうとしている、おかしなことを言う、周囲の人からみて様子がおかしい場合なども、受診を考えてください。
リステリアになりやすいのはどんな人?原因は?
- リステリア菌がついている食べ物を食べた人がかかります。とくに下記の食べ物には注意が必要です。
注意が必要な食べ物
- ナチュラルチーズ
- 生ハム
- スモークサーモン
- 水洗いしていない生野菜
- また、下記にあてはまる方は、細菌をやっつける免疫力が弱くなっているので、症状が重くなりやすく、注意が必要です。
注意が必要な方
- 妊娠している方
- ご高齢の方
- 生まれたばかりの赤ちゃん
- 免疫が弱くなる病気(HIV感染症など)にかかっている方
- 免疫を抑える薬(ステロイド)などを使う治療を受けている方
- がんにかかっている方
どんな症状がでるの?
食中毒としてのリステリア菌感染症
- リステリア菌がついた食べ物を食べた後、およそ1日後に、発熱、下痢、吐き気・嘔吐、頭痛、関節痛や筋肉痛があらわれます。
- 健康な方であれば、ふつうは2日以内に完全に症状がよくなります。
菌血症を起こした場合の症状
- 免疫力が低下した方で、リステリア菌が血液内に入り込んでしまい、全身に感染を起こした場合(菌血症といいます)は、発熱、頭痛、関節痛や筋肉痛のような症状が強く、インフルエンザにかかったときの症状に似ています。
- さらに、脳の周りや脳の感染(髄膜炎や脳炎)が起きると、揺すっても起きないほど意識が悪くなったり、普段ではしないようなおかしな行動をしたりすることがあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 食中毒の場合、検査は行いません。リステリア菌がからだの中にいると分かっても、特別な治療がなく、自然に治るためです。
- しかし、全身の感染や脳の感染かもしれないと思われる場合は、血液検査、血液の中の菌を増殖させ調べる検査(血液培養検査)、背中から針を刺して、背中の神経を守る液をとる検査(髄液検査)をします。
どんな治療があるの?
- 健康な方の場合、2日程度で自然に治りますので、特別な治療は必要ありません。
- 腸を整えるお薬(整腸剤)や、吐き気止めが症状を軽くします。これは、下痢や、吐いてしまうことでからだが水分不足にならないようにするためです。
- 免疫力が弱くなっている方には、菌をやっつけるお薬(抗生物質)を処方することがあります。
- 全身や脳に感染しているかもしれない場合は、入院していただき、抗生物質を点滴します。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 健康な方の場合、リステリア菌はうつりにくく、特別な注意はいりません。
- 免疫力が弱くなっている方は、リステリア菌がつきやすい食べ物を食べないようにすることが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
食中毒の場合
- リステリア菌のついた食品を食べてから1日くらいで症状があらわれますが、およそ2日で自然に治ります。
菌血症の場合
- 全身や脳に感染した場合は、重症度によりますが、およそ2~6週間、お薬を点滴して治療することがあります。正しい治療がすぐに開始されれば、数日で徐々によくなります。
- 免疫力が弱い方や症状が重い方は、麻痺などの後遺症がのこることや、命にかかわることもあります。気になる症状がある場合は、早めに治療を受けてください。
追加の情報を手に入れるには?
- 厚生労働省のサイトが参考になります。
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html