喉頭がん:原因は?症状は?ステージとは?検査や治療は?
更新日:2022/05/20
- 耳鼻咽喉科専門医、頭頸部がん専門医の千年 俊一と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が喉頭がんになってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に知ってほしいこと」、「よく質問を受けること」、「説明すべきこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 喉頭がんは喉頭と呼ばれる、のどぼとけにできるがんのことを言います。
- できる場所によって「声門がん」「声門上がん」「声門下がん」の3つに分けられ、それぞれ初期症状と経過が異なります。
- 症状はかすれ声が2-3週間以上続いたり、のどの異物感や痛みなどがあります。
- がんの進行度によって、治療法が異なります。治療のメリットとデメリットをよく理解してから、治療を受けることをおすすめします。
喉頭がんとは?
- 喉頭がんとは、のどぼとけのある喉頭にできるがんのことをいいます。
- のどぼとけには声を作る声門というものがあります。
- 喉頭がんは、できる場所によって「声門がん」「声門上がん」「声門下がん」の3つに分けられます。
- 最も多いのは声門がんで、喉頭がんの半数以上を占めます。
喉頭がんになりやすい人は?
- 喉頭がんになりやすいのは下記のような人です。
喉頭がんになりやすい人
- 喫煙者
- 飲酒量が多い人
- 年間に10万人あたり約4人の頻度で喉頭がんになるといわれています。
- 男性は女性の10倍以上であり、男性に多い傾向がみられます。
- 50歳代から増加し、70歳代に最も多いです。
喉頭がんの初期症状と経過は?
- 喉頭がんのできる場所によって最初にあらわれる症状が異なります。
喉頭がんの症状
- 声門がん:声帯にがんができるため、初期のがんでも声がれがあらわれます。がんが進行すると、声がれ・かすれがひどくなり、声門が狭くなると息苦しくなります。痰に血が混じることもあります。
- 声門上がん:のどの異物感や唾をのむときに痛みがあらわれます。がんが声帯に広がると声がれ・かすれが起こり、さらに進行すると息苦しくなります。痰に血液が混じることもあります。
- 声門下がん:初期のがんでは症状がないことが多く、進行すると声がれ・かすれ、息苦しさ、痰に血が混じるといった症状があらわれます。
喉頭がんかも・・・?と思ったら、どんな時に病院・クリニックに行けばいいの?
- 下記の症状が2-3週間以上見られれば、喉頭がんの可能性があります。耳鼻咽喉科の受診を検討してください。
喉頭がんの症状
- のどの違和感
- 唾を飲み込むときに痛い
- 声がれ・かすれ
- 痰に血が混ざる
- 息がしづらい
- 声門がんでは症状が早いうちに現れるため、早期に発見されることが多いです。
- 声門上がんや声門下がんは、のどの違和感など風邪のような症状のため気づくことが遅れ、受診が遅くなりがちです。
- 人間ドックでの胃カメラ検査で偶然見つかることもあります。
どんな検査があるの?私の喉頭がんのステージ(進行度)は?
- 病院では下記の検査をすることになります。
検査の種類
- 内視鏡検査:鼻から内視鏡をいれて喉頭を観察します。喉頭がんが疑われる場合には組織をとって検査することもあります。
- 胃カメラ検査:内視鏡検査と内容は同じになります。
- CT検査:簡易的にがんがどれくらい組織に入り込んでいるか、ほかの臓器にがんがみられるかを調べます。
- MRI検査:CTより精密に、がんがどれくらい組織の中に入り込んでいるか、ほかの臓器にもがんがみられるかなどを調べます。
- PET検査:全身へのがんの広がりなどを調べます。
- 病変の広がりを調べるための喉頭のストロボ検査や治療の効果を判定するための音声検査を行う施設もあります。
- 声門がんは進行するまで転移しないことが知られています。
- 声門上がんと声門下がんは周辺のリンパ液の流れが豊富なためリンパ節に転移しやすいという特徴があります。
コラム:癌の進行度
- がんの進行度によって早期がん(Ⅰ期、II期)と進行がん(III期、IV期)に分けられます。
- 喉頭がんが広く深く浸潤している場合やリンパ節に転移している場合は進行がんになります。
どんな治療があるの?
- 治療法としては下記のものがあります。
治療の種類
- 薬物療法:抗がん剤と言われるものでがんを殺していく治療です。
- 放射線治療:放射線を当ててがんを焼く治療です。
- レーザー治療:経口的に、レーザーを使いがんを切り取る治療です。
- 喉頭の部分切除術と全摘出術:がんとなる部分の再発の可能性を考えて、のどの一部、あるいは全部を切除する治療です。
- がんの進行度によって上記の治療を選択していきます。
喉頭がんの治療
- 早期がんの治療:経口的なレーザー治療あるいは放射線治療があります。レーザーや放射線を使って、がんを焼く治療です。早期がんでも進行がんに近い場合は、放射線に抗がん剤を併用するなど、治療を複合することがあります。
- 進行がんの治療:放射線化学療法(放射線治療と抗がん剤を使った治療)、のどの部分切除術あるいはのどの全摘出術があります。
- 残念ながら、のどの全摘出術を行った場合、声は出せなくなります。その場合、人工的な小さなのどを埋め込むことなどで、人工的な声が出せるようになります。
コラム:再発がんの場合
- 放射線治療後に再発した早期がんに対してはレーザー治療あるいは喉頭の部分切除術を、再発した進行がんに対しては喉頭の部分切除術あるいは喉頭の全摘出術を行います。喉頭の部分切除術は癌の部分だけ切除する方法で、適応する症例が限られています。
コラム:喉頭がんの治療後の声について
- 早期がんの治療で声が出なくなることはありません。進行がんの治療で化学放射線療法を行った場合も声が出なくなることはありません。
- しかし、喉頭の全摘出術を余儀なくされた場合は、声帯をすべて摘出しますから全く声が出せなくなり、首の前には息をするための穴(気管孔)が一生必要になります。代用音声としてヴォイスプロテーゼ(プロヴォックス®)というシリコン製の小さな人工喉頭を埋め込む方法(シャント発声)、電動式人工喉頭や食道発声があります。
レーザー治療(経口法)
- レーザー治療のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 入院期間が短い(1週間程度)
- 再発時に放射線治療を行える
デメリット
- 術後に声がれ・かすれが生じる。(手術によって声がれの程度が異なる)
放射線治療
- 放射線治療のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 治療後の音声がよい。
デメリット
- 治療期間が長い(1ヶ月半~2ヵ月程度)。
- 急性の粘膜障害が生じる。
- 晩発性の粘膜障害、稀ではあるが放射線誘発癌や喉頭の軟骨壊死などが生じることがある。
- 再発時に放射線治療が使えない。他の頭頸部がんができた場合に放射線治療が使いにくい。
- 化学療法を併用した場合には、化学療法による全身合併症が加わる。
余命はどれくらい?
- 適切な治療を受ければ、ほとんどの人は5年以上生きることが可能です。また、術後にもがんの再発に気をつけることが大切です。
- 下記のことに気をつけると喉頭がんの予防につながります。
喉頭がんにならないために
- 禁煙
- 受動喫煙を避ける
- 節度のある飲酒
- 規則正しい生活
- バランスの良い食事
- 適度な運動
もっと知りたい! 喉頭がんのこと
咳や痰との関係は?
- 咳や痰は、とくに風邪などでみられる症状であり、それだけで喉頭がんを発症していることはまれです。
- 喫煙者の場合は、喫煙による長期的なのどの刺激症状として、咳や痰を伴っていることが多いです。
- ヘビースモーカーであれば、咳や痰が長引く場合、喉頭がんになる危険性が高いです。
咽頭(いんとう)がんとは違うのですか?
- 喉頭がんと咽頭がんは異なります。しかし、部位が近いので症状が似ています。
- 咽頭は、鼻の中、口の奥から続く部分で、喉頭は食道につながる器官です。
- 咽頭がんはとくに「声門上がんに症状が似て」おり、のどの異物感が初期症状で、痛みを生じるようになります。
- 進行するとのどの痛みが強くなり、痰に血が混ざる、飲込みが悪くなり、さらに声がれ、息苦しさ、鼻のつまり感を生じることがあります。
治療後に食事はできるようになるのですか?
- 早期がん治療後では治療前とほぼ同じ食事ができます。
- 進行がんに対する放射線化学療法(放射線と抗がん剤を組み合わせた治療)、あるいは喉頭部分切除術を行った場合には食事に制限を受ける喉頭全摘術後では、気道に食物が入る危険性がなくなるため、治療前とほぼ同じ食事ができますが、口の中で食物をよく噛んで小さくすることができない場合は、食べ物が喉に詰まりやすくなります。
ガイドラインはありますか?
- 日本頭頸部癌学会からの頭頸部癌診療ガイドライン2018年版
- http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/2018guideline_PublickComment.pdf
- または金原出版株式会社刊行物(「喉頭癌」の項)
- https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307203791