ロコモティブシンドローム(ロコモ):どんな病気?予防法は?運動との関係は?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医の稲毛 一秀と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると病院でロコモティブシンドローム(以降はロコモと略します)という用語を聞き、どんなものなのか調べたいとお考えかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の衰えで日常生活に支障をきたしている状態です。
- 進行すると、要介護や寝たきりになる可能性が高くなります。
- 痛みがある場合は、整形外科専門医による治療が必要になります。
- ロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、治療だけではなく予防にも有効です。
ロコモは、どんな病気?
- ロコモ(運動器症候群ともいいます)とは、骨や関節、筋肉などの衰えが原因で、歩くことや立ち座りなどの日常生活に支障をきたしている状態のことです。
- 進行すると、要介護や寝たきりになる可能性が高くなります。
- 超高齢社会が加速する日本の将来を見据え、日本整形外科学会が2007年にこの概念を提唱しました。
ロコモと思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?
- 運動器の障害は、少しずつ進行します。ご自分で気付くためのツールとして、日本整形外科学会から「ロコチェック(ロコモーションチェック)」が出されています。以下7つの簡単な質問に答えるだけですので皆さんも是非やってみましょう。
ロコチェック
- 問1:片脚立ちで靴下がはけない
- 問2:家の中でつまずく、すべる
- 問3:階段を上がるのに手すりが必要である
- 問4:家のやや重い仕事が困難である
- 問5:2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である
- 問6:15分くらい続けて歩くことができない
- 問7:横断歩道を青信号で渡りきれない
- ロコチェックの結果は、いかがでしたでしょうか?実は、1項目でもチェックがつくと、ロコモの可能性があります。その場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
ロコモの原因は?
- ロコモの原因となる主な病気は、以下の3つです。これらは全て痛みが起こり、放置すると痛みがずっと続いたり、症状が悪くなったりします。
ロコモの原因となる病気
- 骨粗鬆症:背中・腰の痛みが生じます。骨がもろくなり、進行すると背骨に圧迫骨折を起こし、痛みが生じます。
- 変形性膝関節症:膝の痛みが生じます。膝関節の軟骨のすり減りなどが原因で、膝の痛みが続きます。
- 脊柱管狭窄症:足腰のしびれや痛みが生じます。年をとって脊柱管という背中の管が狭くなると、中を通る神経が圧迫され、足腰にしびれや痛みが起こります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院では、「ロコモ度テスト」として、以下の3つの検査を実施します。ロコモ度テストの結果から「ロコモ度1」または、「ロコモ度2」を判定します。
検査の種類
- 立ち上がりテスト:下半身の筋肉の力を調べるテストです。両脚、または片脚で10~40cmの台から立ち上がれるかをテストします。
- ツーステップ(2 STEP)テスト:歩く幅を測定して、下半身の筋肉の力やバランス能力、柔軟性などを含めた歩く能力を総合的に評価することができます。
- ロコモ25:1か月間に体の痛みや日常生活で困難なことがあったかを25項目の質問でチェックします。5段階で答えるようになっています。
- 何らかの病気が原因となりロコモになっている場合は、病気を調べる検査をさらに行います。
医療従事者向けコラム:ロコモ度2について
- ロコモ度2は、移動機能が低下し、日常生活に支援や介助が必要となってくるリスクが高い状態です。
- 特に痛みがある場合は、運動器の疾患(前述の骨粗鬆症、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症など)を伴っていることもあります。
- 骨密度検査、レントゲンやMRI検査などの精密検査が必要になります。
どんな治療があるの?
- ロコモの程度によって治療は異なります。
- 痛みがない場合は、主に理学療法士による運動指導が治療の中心となります。ロコトレのほか、タンパク質やカルシウムを摂取することも大切です。
- 痛みがある場合は、整形外科専門医による治療が必要です。痛みなどによって運動を避けることにつながったり、精神的にも悪影響を及ぼしたりするので、痛みを抑える薬などを使いながら、運動療法を行います。無理をせず、ご自分のペースで続けることが特に重要です。
ロコモの治療薬
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS):痛み物質や炎症性物質の生成を抑制し、痛みと炎症を鎮める薬です。急性の痛みや慢性侵害受容性疼痛の場合に使用します。ロルノキシカム、ロキソプロフェンナトリウム、フルルビプロフェン、ケトプロフェンなどがあります。
- 神経障害性疼痛治療薬:神経伝達物質の放出を抑制することで、痛みを和らげる薬です。プレガバリンなどがあります。
- オピオイド:脊髄での痛みの情報を遮断し、脳に作用して痛みの感受性を低下させる薬です。特に難治性の痛みに使用されます。トラマドールなどがあります。
運動療法
- ロコトレ:関節に過剰な負担をかけずに足腰の筋肉を鍛えてロコモを防ぐ運動です。目を開けて片脚立ち(バランス能力を鍛える)、スクワット(下肢筋力を鍛える)などのメニューがあります。
- 柔軟性を高める運動:筋肉や関節をほぐして柔軟性を高める体操です。運動の前後に行うと、より体が動きやすくなります。準備体操(軽い体操とストレッチング)がこれにあたります。
- 痛みを軽くする運動:膝や腰の痛みを改善し再発を予防するためには、筋肉を鍛えるのと同時に、関節の可動域を広げる運動をすることが大切です。腹筋・背筋運動、腰回りのストレッチ、太ももの筋肉を鍛える体操、膝の曲げ伸ばし運動などが効果的です。
予防のためにできることは?
- ロコトレは、ロコモの治療だけではなく、予防にも有効です。ただし、お一人お一人の運動機能のレベルによってやり方が違いますので、ご自分にあった安全な方法で、まずは片脚立ちとスクワットを始めてみることをおすすめします。
- 運動機能のレベルに応じたロコトレの詳しいやり方に関しては、後述のホームページをご覧ください。ほかにもロコモ予防に役立つ多くの情報が掲載されています。
- 皆さんもロコトレを実施し、いつまでもご自分の足で歩き続けていくために、運動器を長持ちさせ、ロコモを予防していきましょう。
追加の情報を手に入れるには?
- ロコモONLINE (ロコモ チャレンジ!推進協議会)
- https://locomo-joa.jp/