川崎病:どんな病気?検査や治療は?後遺症が残ることもあるの?
更新日:2020/11/11
- 小児科専門医の野村 理と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとお子様が川崎病と診断されるなどして、不安を感じておられるかもしれません。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 川崎病とは、発熱・皮膚や口のブツブツ・くびの腫れなどが現れる病気です。
- 高熱が出ている患者さんは、原則として入院での治療が必要です。適切な治療を行えば、さまざまな症状が改善します。
- 冠動脈瘤という心臓の病気が残ってしまった場合、血が固まりにくくなる薬をしばらく服用していただく必要があります。
- 冠動脈瘤があらわれなかった患者さんは、日常生活に制限が必要になることはありません。
川崎病は、どんな病気?
- 川崎病とは、発熱、目の赤み、首のリンパ節・唇・手の腫れ、皮膚の症状などが起こる病気です。基本的にはお子さんがかかる病気で、大人に生じることはほとんどありません。
- 原因はわかっていませんが、診断方法や治療方法はわかっています。自然に治ることはなく、原則として入院していただいて治療します。ほとんどの患者さんは、免疫グロブリンというお薬の点滴で、症状を改善することが可能です。
- まれに冠動脈瘤という後遺症が心臓に残る患者さんがいらっしゃいます。そのため、入院中と退院後に心臓超音波検査を行って確認します。適切に治療すれば、後遺症が生じる危険性も下げることができます。
コラム:合併症の冠動脈瘤について
- 川崎病の合併症として、冠動脈が風船のように膨らむ「冠動脈瘤」が起こることがあります。
- 日本では冠動脈に異常が生じる可能性は、3%程度(川崎病患者さん100人のうち3人)です。
- 冠動脈とは心臓の筋肉に酸素や栄養を届ける重要な血管です。この冠動脈でこぶ状にひろがると、血の塊(血栓)ができて血管が狭くなったり詰まってしまったりすることがあります。最悪、命の危険が生じることもあります。
- 大きな冠動脈瘤ができてしまった患者さんは長期の通院や運動制限が必要になります。そのため、冠動脈瘤を作らないことが川崎病の治療をすすめる上でとても大切です。
どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 下記のような場合は川崎病を疑います。医療機関の受診を検討してください。
川崎病の症状
- 高熱が4日以上続く
- 目が充血している
- 唇が腫れている、舌がいつもより赤い
- 首が腫れている
- 手や足が腫れている
- からだにブツブツがでている
- BCGを接種した場所が赤くなっている
川崎病になりやすいのはどんな人?原因は?
- 川崎病の患者さんは、6ヶ月~2歳未満の乳幼児が特に多いと報告されています。5歳以上の患者さんは多くありません。
- 日本をはじめ、中国、台湾、韓国などの東アジア諸国から多く川崎病の報告があります。また、川崎病の発症や重症化に関連する遺伝子の異常が、これらの人種に多いという報告もあります。
- なお、川崎病の原因は、現時点ではわかっていません。免疫の影響が血管におこる、「血管炎」という病気の一種と考えられています。
どんな症状がでるの?
- 川崎病の症状としては以下のようなものがあげられます。5つ以上の症状があらわれた場合、川崎病と診断されます。
川崎病の症状
- 4日以上高熱が続く(抗菌薬は効きません)
- 両目が充血する(目やにはでません)
- くちびるやのどが赤く腫れたり、舌がイチゴのようにブツブツする
- 体にブツブツがでる(じんましんではありません)
- 手足が赤くなってパンパンに腫れる(2~3週間で指先から皮がむけてきます)
- 首が腫れる(ひどくなると首がうごかせなくなります)
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まずは川崎病以外の病気でないことを確かめるために、血液検査、ウイルス迅速検査、胸のレントゲン検査などを行います。血液検査の結果は、川崎病と診断された場合に、その重症度を知るためにも用いられます。
- 川崎病と診断されて入院した場合は、定期的に血液検査と心臓超音波検査をします。
- 冠動脈瘤ができてしまった患者さんは、CTや血管造影などさらに進んだ検査が必要になります。
どんな治療があるの?
- 川崎病の治療はお薬で行います。用いるお薬は、主にアスピリン、免疫グロブリン、プレドニゾロンです。
アスピリン
- 炎症を抑える飲み薬です。
- 診断された日から飲み始め、熱が下がった後も少量ですが飲み続けていただきます。
- 退院後も1ヶ月程度は飲み続けていただく必要があります。
免疫グロブリン
- 免疫を高めて症状を改善するためのお薬で、点滴で投与します。合併症の発生を抑える効果もあります。
- 入院後に1〜2日かけて点滴することが一般的です。ふつうは1回の点滴で効果がありますが、2回行う場合もあります。
- 免疫グロブリン製剤は人間の血液の成分から精製して作られています。安全性は確立しているとされていますが、投与の前には、医師から詳しく説明いたします。
プレドニゾロン
- 免疫グロブリンがききにくい患者さんに対して、合併症の冠動脈瘤が生じるのを抑えるために、投与するお薬です。ステロイドの一種で、点滴と飲み薬があります。
- はじめは点滴で使います。熱が下がっていることを確認できたら飲み薬に切り替え、3週間程度、飲み続けていただきます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
アスピリン服用中に注意いただきたいこと
- 退院した後も、低用量のアスピリンを1か月程度飲んでいただくことが多いです。
- アスピリンを飲んでいる間は、けがをすると血が止まりにくくなります。激しい運動をする際には十分にご注意ください。
- けがで出血した場合には、その部位をよく洗った後に圧迫してください。出血が止まらない場合には医療機関を受診してください。
- 頭をぶつけて意識がおかしい場合にも、医療機関の受診が望ましいです。
- また、アスピリンを飲んでいる間にインフルエンザにかかると、ライ症候群という重篤な病気を起こすことがあります。インフルエンザにかからないよう、特に冬の間は人混みへの外出は避けることをおすすめします。
再発に注意
- 川崎病は、再発する方が数%ですがいらっしゃいます。川崎病にかかった時と同じような症状があった場合には、医療機関を受診してください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 川崎病にかかっても、患者さんの多くは治ります。
- 1回の免疫グロブリン(免疫を高める薬)の点滴で、約8割の患者さんの発熱やその他の症状を改善させることができます。順調に回復した場合、1~2週間程度で退院できることが一般的です。
- 退院後は、合併症があらわれていないか定期的に通院していただく必要がありますが、合併症がなければ通院を終えることができます。
- ただし、冠動脈瘤を合併した患者さんは、長期間のお薬を飲む必要があり、手術による治療が必要な場合も出てきます。
追加の情報を手に入れるには?
- 川崎病に関する情報は、下記のページを参考にすることをおすすめします。
- 日本川崎病学会(http://www.jskd.jp/info/index.html)
- 川崎病の子供を持つ親の会(https://kawasaki-disease.gr.jp)
- 川崎病 Minds版やさしい解説(https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0164/G0000756/0001)
- メディカルノート (https://medicalnote.jp/diseases/川崎病/contents)