日本脳炎:どんな病気?症状は?治療は?予防は?治るの?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の氏家 無限と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると、日本脳炎の予防方法について、疑問を持っておられるかもしれません。
- 日本脳炎の感染症について基本的な情報を知りたい方に、一般的な情報をまとめました。
目次
まとめ
- 日本脳炎は、主に日本脳炎ウイルスをもっている蚊に刺されることでうつります。
- 感染しても全員に症状が出るわけではありません。日本では非常にめずらしく、年間およそ10人ほどです。
- 死亡率が高く、治ったとしても障害が残りやすいなど、発症すると非常に危険な感染症です。
- 予防接種で予防ができます。市町村による予防接種では合計4回の接種が推奨されています。
日本脳炎は、どんな病気?
- 日本脳炎は、日本脳炎ウイルスをもっている蚊に刺されることでうつる、脳などの感染症です。日本では、主にコガタアカイエカという蚊によって運ばれます。
- 感染したひとのうち、実際に症状が出るひとは0.1〜1%ほどです。日本国内でも毎年10人ほどの、非常にめずらしい病気です。
どんなとき疑ったらよいの?
- 日本脳炎に特徴的な症状はありません。そのため、症状だけから日本脳炎を疑うことは困難です。
- 意識がない、突然高熱が出るなどの症状から、病院で脳炎や脳症と判断されたとき、下記の条件に当てはまる場合は医師にお知らせください。日本脳炎の可能性を疑います。
日本脳炎を疑う情報
- 周りにブタがいる場所などで蚊に刺された
- 日本脳炎が流行している地域から帰国した
受診前によくなるために自分でできることは?
- 残念ながら、自分でできることはありません。
- できるだけ早く、適切な検査や治療を受けることができる医療機関を受診してください。
日本脳炎はどんなところで流行っているの?
- 日本脳炎は、東南アジアや東アジア、日本では温暖な西日本でより多くの報告があります。
コラム:日本脳炎と動物の関係
- 日本脳炎ウイルスは、特にブタや水鳥の間で、蚊を通じてウイルスの感染が繰り返されていることが知られています。
- 日本国内でも、より温暖な西日本で、ブタの日本脳炎に感染しているブタの割合が高いことが知られています。
- ですから、日本脳炎が流行している地域で、このような動物が近くにいる環境では、日本脳炎に感染する可能性があります。
どんな症状がでるの?
- 日本脳炎の典型的な症状を下記にまとめました。
日本脳炎の症状
- 38~40℃以上の高熱が数日間続く
- 頭痛や吐く
- 急に光が眩しいと感じるようになる、意識がなくなる、けいれん、異常な運動をする
※日本脳炎に感染してから6~16日に、これらの症状が生じます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 一般的な血液検査などのほかに、脳の周りにある脳脊髄液を腰から針で刺して取る髄液検査が行われます。
- また、脳の変化をみるために、頭の画像検査として、CTやMRIが行われることもあります。
- 日本脳炎の診断を確定するためには、血液や脳脊髄液の日本脳炎ウイルスに対する抗体やウイルスの存在を調べる検査が行われます。これらは特殊な検査のため、結果が出るまでに日数がかかります。
どんな治療があるの?
- 残念ながら、日本脳炎ウイルスそのものに有効な治療法は見つかっていません。
- けいれんが出た場合は、けいれんを抑える治療、呼吸の状態が悪い場合は、人工呼吸器で呼吸を支える治療を行うなど、症状に対する治療を行いながら、体が自分の力で回復するのを待ちます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?
- 日本脳炎から回復して退院した後、脳神経の障害によって、けいれんを起こしやすくなったり、手足の震えが出たりすることがあります。
- また、お子さんの場合、しばらくは様子をよく観察してあげてください。退院後、数か月してからおかしい行動がみられたり、学習障害がはっきりしてきたりすることがあります。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 人から人に直接うつることはありません。蚊を通じてうつります。
- 予防で最も重要なことは、予防接種を受けておくことです。日本脳炎に対するワクチンは、市町村によって行われる定期の予防接種となっています。3歳から3回、9歳から1回の合計4回行われます。
- 実際は生後半年から予防接種ができます。もしお家の近くにブタを飼っているところがある場合などは、3歳前の予防接種が勧められます。
- また、流行のある地域や季節では蚊に刺されないように、肌を出すような服を着ない、虫よけスプレーを使用するなどの対策も有効です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 残念ながら死亡率は約20~40%と高く、回復した場合にも約50%に障害が残ります。
- 脳症などの重い症状が出てから診断されることが多いので、治療に必要な期間も長いことが多いです。
追加の情報を手に入れるには?
一般的な情報
予防接種について
- 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール
- https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=84
- 厚生労働省による日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/dl/nouen_qa.pdf
もっと知りたい! 日本脳炎のこと
日本脳炎の予防接種の歴史
- 以前使用されていた日本脳脳炎ワクチン接種には、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)という疾患の関連が疑われていたことがあります。そのため2005年から2009年まで、日本脳炎の予防接種を積極的にお勧めすることを中止されていました。
- この影響で定期の予防接種を受けていない方には特別な措置として、残りの予防接種を受けることができます。対象となるのは、1995年4月2日から2007年4月1日生まれの方(20歳になるまで)、2007年4月2日から2009年 10 月1日生まれの方(13歳になるまで)です。
- また、ADEMとの医学的な因果関係は証明されておらず、日本脳炎の接種率が低かった時期にも、同程度のADEMが発生していることが知られています。
- さらに、2009年から新しいワクチンが使用されるようになっていますので、現在は安心して日本脳炎ワクチンの予防接種を受けることができます。