虫刺され:どんな種類の虫が刺すの?腫れるの?水ぶくれができるの?薬は?跡が残る?
更新日:2020/11/11
- 皮膚科専門医の夏秋 優と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が変な虫に刺されたかもしれない?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 虫刺されとは、血を吸う虫、刺す虫、咬む虫によって起こる皮膚の炎症の総称です。
- 主な皮膚の症状は、かゆみ、痛み、赤み、腫れ、ぶつぶつ、水ぶくれなどですが、症状の現れ方には個人差があります。
- 多くの場合は市販されている虫刺され用の塗り薬で対処できますが、かゆみや痛みが強い、腫れがひどいなど症状が強い時は、皮膚科を受診して治療を受けてください。
- ハチに刺されて全身がかゆい、息苦しい、気分が悪いなどの症状が現れた場合は、すぐに救急車を呼んでください。
虫刺されは、どんな病気?
- 虫刺されは、血を吸う虫(カ、ブユ、ノミ、ダニなど)、刺す虫(ハチ、アリなど)、咬む虫(ムカデ、クモなど)によって起こる皮膚の炎症の総称です。
- 毒のある毛を持つ毛虫(ドクガ類やイラガ類など)に触って起こる皮膚炎も、広い意味で虫刺されに含める場合があります。
- 皮膚の症状は、虫が皮膚に注入する物質に対する刺激反応やアレルギー反応によって起こります。主な症状はかゆみ、痛み、赤み、腫れ、ぶつぶつ、水ぶくれなどですが、ご自身の体質や虫の種類によって、症状の現れ方にはかなり個人差があります。
- ハチに刺されると、人によっては5~30分以内に命の危険がある症状(アナフィラキシーといいます)があらわれることがあります。ハチに刺された場合は特に注意が必要です。
- カやダニなどが血を吸うとき、病気を引き起こす微生物や寄生虫が体に入り、感染症を引き起こす場合があります。
虫刺されと思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 虫刺されで現れる症状は、かゆみのある赤いブツブツなど、軽い症状の場合が多いのですが、次のような場合は皮膚科の専門医を受診して治療を受けてください。
皮膚科受診をおすすめする場合
- かゆみや痛みが強い場合
- 腫れがひどい場合
- 症状が現れている範囲が広い場合
- 刺された部位がなかなか治らない場合
- 膿が出るような場合
救急車を呼ぶ場合
- ハチに刺されて5~30分以内に、全身がかゆい、息苦しい、お腹が痛い、気分が悪いなどのアナフィラキシー症状が現れた場合は、命の危険があります。
- すぐに救急車を呼んでください。
皮膚以外の症状もある場合
- カやダニなどに刺された後、急に高熱や全身のだるさ、発疹、腹痛、下痢などの症状が現れた場合は、何らかの感染症を起こしている可能性もあります。
- その場合、皮膚の症状があれば皮膚科、皮膚の症状がなければ内科や感染症科などを受診してください。
受診前に自分でできることは?
かゆみや痛みに対処する
- 保冷剤などで冷やすと症状が和らぎます。かきむしると皮膚にキズができて症状が悪くなりやすいので注意してください。
- 軽い症状であれば、市販の虫刺され用の塗り薬を塗って様子をみてもよいでしょう。
虫の情報を医師に伝える
- 刺した虫をつかまえた場合は、受診の際に持参すると診断にとても役立ちます。
- すぐに医療機関を受診できない場合はつかまえた虫をプラスチックケースなどに入れて冷蔵庫または冷凍庫で保管してください。
- 虫がつかまえられなかった場合でも、スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影しておくと、原因となった虫を知る上で役に立ちます。
虫刺されの原因は?
- 虫刺されの原因となる虫は多く、地域によっても異なります。主な虫を以下に挙げます。
血を吸う虫
- カ:アカイエカ、ヒトスジシマカなど
- ブユ:アシマダラブユ、キタオオブユなど
- アブ:イヨシロオビアブ、ゴマフアブなど
- ヌカカ:イソヌカカ、シナノヌカカなど
- ノミ:ネコノミなど
- トコジラミ:トコジラミなど
- ダニ:イエダニ(室内)、フタトゲチマダニ(野外)、タカサゴキララマダニ(野外)など
刺す虫
- ハチ:オオスズメバチ、キイロスズメバチ、セグロアシナガバチなど
- アリ:オオハリアリ、ヒアリなど
咬む虫
- ムカデ:トビズムカデなど
- クモ:セアカゴケグモ、カバキコマチグモなど
どんな症状がでるの?
- 虫刺されによって現れる皮膚の症状は、かゆみや痛み、腫れ、赤いぶつぶつ、みみずばれ、水ぶくれなどです。ただ、患者さんの体質や虫の種類によって個人差があります。
虫の種類による症状の違い
- 刺された(咬まれた)瞬間に痛みを感じる虫はアブ、ハチ、ムカデ、クモなどです。
- それ以外は刺された直後、あるいは1~2日後にかゆみや赤みが現れます。
- カは、刺された頻度や年齢によって皮膚の症状が変化することが知られています。乳幼児期は刺された翌日からかゆみや赤みが出ることが多く、学童期以降は刺された直後にかゆみと共にみみずばれのような症状が出ます。また、高齢者ではカに刺されても皮膚症状が出ないこともあります。
- ブユに刺された場合、かゆみが長く続いて、しこりがいつまでも残ることもあります。
アナフィラキシー症状
- 過去にハチに刺された時に注入された毒の成分に対してアレルギーになった人に起こる症状です。
- 次にハチに刺されたとき、5~30分ほどで全身のかゆみ、じんましん、息苦しさ、冷や汗、腹痛、吐き気、気分の悪さなどが現れます。重症の場合は血圧が急に下がって、死に至る場合もあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 虫刺されは、病気の経過や症状で診断するので、特別な検査はありません。
- ですが、「一見すると虫刺されのようだが、実は違う皮膚の病気」という可能性がある場合は、それぞれの病気を診断するために必要な検査を行うことがあります。
- ハチに刺された患者さんで、特に全身の症状が出た場合、次に刺された時に強いアナフィラキシー症状を引き起こす可能性がありますので、血液検査でハチ毒に対するアレルギーがあるかどうかを検査します。
コラム:ハチ毒アレルギーの検査
- スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの毒成分に対するアレルギー体質があるかどうかを調べるために、IgEを測定する検査(ハチ毒特異的IgE)があります。
- これで陽性反応が出ている場合は、次にハチに刺されたときにアナフィラキシー症状を起こす可能性があります。ハチに刺されないよう、特に注意が必要になります。
どんな治療があるの?
- 虫刺されの治療の基本は、ステロイドの入った塗り薬です。患者さんの症状に応じて、次のようなお薬も使います。
- かゆみが強い場合:抗ヒスタミン薬の飲み薬を使います。
- 腫れが強い場合や皮膚の症状の範囲が広い場合:ステロイドの飲み薬を用いることもあります。
- 傷から菌が入って膿が出ている場合:抗菌薬を用います。
- ハチに刺されてアナフィラキシー症状が現れている場合:アドレナリンを筋肉に注射します。
エピペンについて
- エピペンとは、ハチアレルギーや食物アレルギーなどでアナフィラキシー症状が現れた時に、患者さんが自分でアドレナリンを注射するための器具です。
- エピペンを処方できる資格を持つ医師が、必要と判断した患者さんに処方するもので、いざという時にいつでも患者さんがご自分で注射できるように、普段から持ち歩いてもらいます。
- エピペンは、アナフィラキシー症状が現れた時に、救急車が到着するまでに自分で注射するためのものです。エピペンを使った後、医療機関への搬送は必要になります。
予防のためにできることは?
- 外で活動する時は、むやみに肌を出さないように、帽子をかぶり、長袖、長ズボンなどを着るとよいでしょう。
- 血を吸う虫に刺されないようにするには、虫よけスプレーが効果的です。使う時は、使用上の注意をよく読んで、正しく使用してください。
- 室内の虫が原因の場合は、適切な駆除が必要です。スプレーや煙が出るタイプの殺虫剤などが効果的です。
- ハチは、巣を刺激すると一斉に襲ってくるので危険です。ハチの巣を見つけたら近づかないようにしてください。駆除が必要と思われる場合は、専門の業者などに相談してください。
どのくらいで治るの?
- 虫刺されのほとんどは数日から2週間以内に治ります。
- ただし、生活している環境の中に原因の虫がいる場合は、くりかえし皮膚の症状があらわれることもあります。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本皮膚科学会のホームページに皮膚科Q&Aがあります。その中の「虫さされ」の項目を見るとよいでしょう。
- https://www.dermatol.or.jp/qa/qa16/index.html