膿痂疹:原因は?症状は?人にうつるの?検査や治療は?跡は残らない?
更新日:2020/11/11
- 皮膚科専門医の馬場 直子と申します。
- 「膿痂疹(とびひ)=うつる病気」ということは知っていても、どうしてできるのか、実際にかかったときにどうすればいいのかはよくわからない、という方も多いかもしれません。お子さんのとびひの対策を知って、予防に気を付けて、もしも罹ったら早く治してあげましょう。
まとめ
- 膿痂疹【のうかしん】は「とびひ」とも呼ばれ、細菌が皮膚に感染して、次々に全身に広がり、触ると人にうつる皮膚の病気です。
- 細菌の種類によって、水ぶくれができるタイプと、膿の入った水ぶくれから厚いかさぶたができるタイプの2種類あります。
- 細菌が原因なので抗菌薬の塗り薬や飲み薬で治療します。
- 早く治すためには、早く治療を開始し、治るまで続けることが重要です。
- 人からもらわない、人にうつさないための感染対策が必要です。
膿痂疹は、どんな病気?
- 膿痂疹【のうかしん】は「とびひ」とも呼ばれ、皮膚によくいる細菌に感染して起きる病気です。
- 1~2個できた状態から、火事が広がるようにあっという間に全身にできるため、「飛び火【とびひ】」といわれるようになりました。
- 水ぶくれができるタイプの水疱性膿痂疹【すいほうせい】と、最初に膿の入った水ぶくれができて、後で分厚いかさぶたができるタイプの痂皮性【かひせい】膿痂疹の2種類があり、それぞれ違う種類の細菌によってできます(図1、2)。
- 水ぶくれのタイプ(図1)は、0~8歳くらいの小さな子どもによくでき、夏に多くみられます。
- 虫刺されやあせも、湿疹などをかきむしったところに、細菌が感染してとびひになる場合と、人から感染する場合があり、しばしば保育園や幼稚園などで集団発生します。
- もう一方の厚いカサブタができるタイプ(図2)は、子どもだけでなく大人にも生じ、夏だけでなく冬でもみられます。
- またのどの痛み、リンパ節の腫れ、発熱などの全身症状が現れます。
膿痂疹と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
かかりつけ医(皮膚科、小児科)への受診がおすすめの場合
- 水ぶくれや、それがつぶれて、ただれている(ジュクジュクと液が出て来る)所が、2カ所以上あり、増えてきている場合
- 1歳未満の乳児の場合
- 機嫌が悪く、食欲が落ちている場合
- 発熱があったり、リンパ節がはれたりしている場合
- 症状が3日間たっても治らない場合
- かゆがって、かいている場合
- もともとアトピー性皮膚炎がある場合
受診前によくなるために自分でできることは?
- 水ぶくれやただれているところを、かきむしらないようにガーゼや包帯で完全に覆う。
- プールや水遊びはしない。
- 市販の傷薬があれば塗ってもよい。塗った上からガーゼで覆う(消毒は必要ない、ガーゼ付き絆創膏は良くない)。
- 汗をかいたらシャワーで流して下着をこまめに着替える。
膿痂疹になりやすいのはどんな人?原因は?
- 膿痂疹になりやすい人は以下の通りです。
膿痂疹になりやすい人
- 汗をかいてもすぐに拭いたりシャワーを浴びたりしない人
- こまめに着替えない人
- もともとアトピー性皮膚炎や乾燥肌があり、よく皮膚をかいている人
- シャワーやお風呂がきらいで、夏でもお風呂に入らない日があるような人
- 鼻をかまずに、よく鼻の穴をいじる人
- 爪を切らずに伸ばしている人、あまり手を洗わない人
どんな症状がでるの?
- 膿痂疹にかかった場合、下記のような症状を示します。
症状
- 突然、皮膚に水ぶくれができる(図1)
- 水ぶくれはすぐにつぶれて、ただれる(表面の皮がむけてジュクジュクと液が出る)
- 水ぶくれやただれている所を引っかいた手で触ったところに、次々と新しい水ぶくれができる(図1)
- ただれた後はかさぶたになる(図2)
- 透明な水ぶくれの中身が黄色く濁って膿をもつこともある
- 発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛みがある(図②のような溶連菌による膿痂疹)
- 最初はかゆいが、皮膚がむけると痛みもある
- 痒みや痛みで眠れない
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 膿痂疹を疑ったら、綿棒の先で水ぶくれやただれている所の液を吸い取って、細菌の種類を調べます。
- そしてどの抗菌薬(細菌を殺す薬)が効くのか、効かないのかの検査をします。
- 熱を測り、リンパ節が腫れていないか、喉が赤く腫れていないか確かめます。
どんな治療があるの?
- 膿痂疹は細菌による感染のため、抗菌薬(抗生物質)の塗り薬が処方されます。
- 消毒薬を塗るとしみますし、消毒薬にかぶれたり、かえって治りを遅くすることもあるので消毒はしません。
- 水ぶくれが全身に広がっているときには抗菌薬の飲み薬も飲みます。場合によっては最初から塗り薬と飲み薬を両方とも処方されることもあります。
- かゆみが強い場合は、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されることもあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 塗り薬は1日1~2回、忘れずに水ぶくれ、ただれ、赤いところ、かさぶたのところにのせるようにやや厚めに塗ってください。少量をすり込んではいけません。
- 薬を塗った上から、すべて覆うようにガーゼを載せて包帯で固定してください。ガーゼ付き絆創膏は貼らないでください。
- プールや水遊びはやめて、1日1-2回塗り薬を塗る前にシャワーを浴びるといいです。石鹸の泡でなでるように優しく洗い流してください。
- 浴槽にはつからない方が良いです。
- 飲み薬が処方されていたら、途中で飲むのをやめたりせずに、処方通りに最後まで飲みきってください。特に溶連菌による膿痂疹では、長めに10日~2週間くらい抗菌薬を飲むこともあります。
- 小さい子どもでは、抗菌薬の飲み薬で下痢をしたりうんちがゆるくなったりすることがあります。そのようなときはすぐに主治医に連絡してください。最初から整腸剤も一緒に処方されることもあります。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 皮膚に触れることでうつります。膿痂疹になった人が周りにいたら、その人が水ぶくれやただれている所を触らないように注意し、プール、水遊びなどを一緒にしないようにしてください。
- 兄弟がなったら、一緒にお風呂に入らず、タオルや寝具も共有しないようにしてください。
- プールの後は良くシャワーで流すといいです。
- 汗をかいたら早くタオルで拭き、シャワーで流して、着替えてください。
- アトピー性皮膚炎や普段から乾燥肌の人は、特に注意が必要です。湿疹の塗り薬や保湿剤を普段からしっかり塗っておき、皮膚のバリア機能(外の刺激から皮膚を守る力)を高めておくことが大切です。
- 鼻の穴や爪の中には細菌がいます。鼻をよくかみ、爪は短く切っておき、遊んだあとは手洗いをしてください。鼻の穴をほじる癖はやめさせるべきです。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 水ぶくれが1-2個のうちにかかりつけ医に受診して、すぐに抗菌薬を塗って覆うなど、正しい処置を行えば、3-4日で治ります。5カ所以上に広がってから受診して治療を開始しても、治るのに1週間以上かかることもあります。
- 通常の抗菌薬が効きにくいタイプの細菌による膿痂疹もあります。その場合は抗菌薬の種類を変えて、また初めからの治療のやり直しになるので、治るまでに時間がかかります。時には1ヵ月以上かかることもあります。
- アトピー性皮膚炎があると、普段から皮膚をかく癖があるので、とびひが広がりやすく、治りにくいこともあります。アトピー性皮膚炎の治療も並行して続けてください。かかりつけ医の指示をよく守ってください。
- 発熱やリンパ節腫脹、のどの腫れがあるタイプでは、10日~2週間抗菌薬を飲み続ける必要があります。処方されたら最後までしっかり飲み切ってください。
追加の情報を手に入れるには?
- とびひは、「学校保健安全法」という法律で、学校感染症の第三種、つまり学校において流行を広げる可能性のある感染症のうちの「その他の感染症」に定められています。
- その他の感染症は、学校で流行が起こったときに、「校長が学校医に意見を求め、第三種の感染症として扱うことができる」もので、とびひは「通常出席停止は必要ないと考えられる感染症」に分類されています。
- とびひに対する学校感染症対策としての注意事項は下記のページを見るとよいでしょう。
- 小児皮膚科学会の「学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」のサイト
- http://jspd.umin.jp/info_04_1/20130522.html
図表1 水疱性膿痂疹