副甲状腺機能低下症:どんな病気?難病なの?症状は?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 内分泌代謝科専門医の竹内 靖博と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が副甲状腺機能低下症と診断されてしまった」ことに不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺でつくられるホルモンが足りなくなり、血液中のカルシウム値が低下して、しびれやけいれんが起きる病気です。
- 副甲状腺機能低下症を引き起こす病気には様々なものがあります。ご家族の中で同じ病気にかかる方もいます。
- しびれやこむら返りが続く、むし歯ができやすいといった症状に当てはまる方は、一度病院を受診してください。
- 血液中のカルシウム値を正常に保つため、お薬は一生飲み続ける必要がありますが、決められた通りに飲んでいれば、普通に生活することができます。
- 副甲状腺機能低下症、後述する偽性副甲状腺機能低下症は指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
副甲状腺機能低下症は、どんな病気?
- 副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺という場所でつくられる副甲状腺ホルモンが足りない状態です。
- 副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウムの量を調節している大事なホルモンで、これが足りなくなると、カルシウムも減ります。その結果、しびれやいつもと違う感覚を自覚します。こむら返りや、手指がつったり、ひどい場合はけいれんを起こすこともあります。
- 多くの場合、このような症状は自然に改善したり、病院での治療でよくなります。
- 副甲状腺ホルモンがあっても十分に作用しないという特殊な先天性疾患があり、このような病気を偽性副甲状腺機能低下症と呼びます。
- 副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症ともに指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
副甲状腺と甲状腺の関係
- 「副」甲状腺という名前は紛らわしいですが、甲状腺とは何ら関係がない臓器です。副甲状腺機能低下症も、甲状腺の病気とは全く関係ありません。
副甲状腺機能低下症と思ったら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?
- 手足など体のあちこちがよくつる場合は、副甲状腺機能低下症かもしれません。とくに運動時など呼吸が荒くなる時に起こりやすいことが特徴ですが、きっかけが無くても起こることはあります。
- 歯がもろく、昔から頻繁に歯医者にかかっている方の中には、副甲状腺機能低下症の方がいます。
- しびれや違和感(指先がピリピリする感じ)だけが症状として現れることもあります。しびれがなかなか良くならない場合には一度病院を受診してください。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 積極的にご自分でできることはありませんが、過呼吸になると症状が出やすいので、過激な運動は避けることが望ましいでしょう。
- 吹奏楽器の演奏も症状出現のきっかけとなることがあります。
副甲状腺機能低下症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 甲状腺やのどの病気でくびの手術を受けた、あるいはくびに放射線を当てる治療を受けたことがある方:副甲状腺は、のどの前にある甲状腺のすぐそばにあります。上記のような方では、副甲状腺を一緒に取ってしまっていたり、傷ついている可能性があります。
- 副甲状腺機能低下症の家族がいる方:生まれつき副甲状腺ホルモンがつくれない方もいます。徐々にホルモンをつくる力がなくなってしまうこともあります。
どんな症状がでるの?
- 副甲状腺機能低下症では、下記の症状が出ます。
主な症状
- しびれ
- 手足がつる、こむら返り
- けいれん
- むし歯ができる
- 皮膚の下に硬いものができる(ことがあります)
- なお、偽性副甲状腺機能低下症では、低身長や丸顔、指が短いなどの身体の特徴が、生まれつき認められることがあります。
コラム:石灰化について
- 副甲状腺機能低下症では、脳をはじめとして身体のいろいろな部位にカルシウムのかたまりが沈着する(石灰化する)ことがあります。
- 原因はよくわかっていませんが、血中のリン濃度が高いことが関係すると考えられます。
- 血中のカルシウム値が正常化すると、リンの値も改善するので、石灰化に対する特別な治療は必要ありません。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液や尿の検査:副甲状腺ホルモンとカルシウムが少ないことを調べます。
- 頭のCT検査:副甲状腺機能低下症では、カルシウムが脳にくっつきやすくなっています。どれくらいくっついているかを調べます。
どんな治療があるの?
- 血液中のカルシウムを増やす、「活性化ビタミンD」というお薬を飲みます。
- カルシウムそのものを一緒に飲む場合もあります。
- なお、今のところ、副甲状腺ホルモンそのものを補充する治療は日本では認可されていません。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- お薬を、決められた通りに、決められた量だけ飲むことが大切です。勝手に飲むのをやめたり、心配でたくさんお薬を飲んでしまったりすると、症状が出やすくなったり、体のほかの場所に悪い影響をおよぼすことがあります。
予防のためにできることは?
- 残念ながら、副甲状腺機能低下症は予防できる病気ではありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 副甲状腺機能低下症は完全には治りません。一生お薬を飲み続ける必要があります。
追加の情報を手に入れるには?
- 副甲状腺機能低下症に関してさらに情報を手に入れるには、下記のページを参考にされるとよいと思います。
- 厚生労働省のサイト
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/4426
- 日本内分泌学会のサイト
- http://www.j-endo.jp/ippan/03_disease/04_03.html
- 偽性副甲状腺機能低下症に関する厚生労働省のサイト
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/233