副甲状腺機能亢進症:どんな病気?症状は?治療法は?手術で治るの?
更新日:2020/11/11
- 内分泌代謝科専門医の竹内 靖博と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が副甲状腺機能亢進症と診断されてしまった」ことに不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺ホルモンが必要以上にたくさんつくられてしまっている状態のことをいいます。
- 健康診断やほかの病気の検査で偶然見つかることが多い病気です。
- 閉経後の女性に多い病気です。
副甲状腺機能亢進症は、どんな病気?
- 副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺ホルモンが必要以上にたくさんつくられてしまっている状態です。
- 副甲状腺ホルモンは、骨を溶かして血液中のカルシウムを増やす働きがあります。
副甲状腺機能亢進症を疑うきっかけは?
- 健康診断やほかの病気で血液検査をした際に、血液中のカルシウム値が高いことがきっかけになります。
- 骨粗鬆症や腎結石(腎臓にできた、カルシウムを含む不要物のかたまり)になって初めてわかることもあります。副甲状腺ホルモンによって骨からカルシウムが奪われたり、増えてしまったカルシウムが腎臓でかたまりをつくったりすることが原因です。
副甲状腺機能亢進症と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 健康診断や、他の病気で血液検査をした時に、カルシウム値が基準値(正常値)を超えていたら、病院の受診をおすすめします。
- 特に、すでに骨粗鬆症と診断されている、あるいは、過去に腎結石を経験している場合は、早めの受診がすすめられます。また、おなかの超音波検査を受けた際に、「腎結石」や「腎の石灰化あり」と記載されている場合も、積極的に受診することが望ましいです。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 水を多めにとることがすすめられます。血液中のカルシウムが多いとおしっこの量が増えて、体から水分が出ていきやすくなります。また、腎臓にカルシウムのかたまりができてしまうのを防ぐためにも、水を飲んでおしっこを薄くすることが大切です。
- 骨からカルシウムが取られ、骨がもろくなっています。これ以上悪くならないように、ビタミンDを含む食品をよく取るようにしてください。
副甲状腺機能亢進症になりやすいのはどんな人?原因は?
なりやすい方
- 女性は、男性の3倍ほどなりやすいといわれています。
- 若い時からカルシウムを含む食べ物(乳製品、小魚、大豆、海藻など)をあまり食べていない人ほどなりやすいといわれています。
原因
- 副甲状腺機能亢進症の原因はわかっていません。一部に遺伝する方がいます。
どんな症状がでるの?
- 症状がない患者さんがほとんどです。
- 血液中のカルシウムが高いことにより、食欲がない、便秘、うつ状態、イライラするといった症状が出ることがあります。また、高カルシウム状態が続くと、おしっこの量が増え脱水になりやすくなります。
- 骨粗鬆症による骨折をしたり、腎結石によるおなかや背中の痛み、血が混じったおしっこが出たりすることもあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査・尿検査 カルシウムが多いこと、副甲状腺ホルモンがたくさん出ていることを確認します。
- くびの超音波検査 副甲状腺は通常4つあり、そのうちどれが腫れているかを確かめます。
- 骨密度測定 レントゲン検査で、骨の状態をみます。副甲状腺ホルモンにより骨からカルシウムが奪われるため、骨がスカスカになり骨折する危険があります。
- おなかの超音波・CT検査 血液中のカルシウムが増えると、不要な分はおしっこに出します。おしっこをつくる腎臓にカルシウムのかたまりができることがあります。
- 核医学検査 微量の放射線を出す物質を使って、腫れている副甲状腺の位置を確かめます。
どんな治療があるの?
- 基本的には、手術で腫れている副甲状腺を取ります。
次のような場合は、お薬を使って様子をみることがあります。
- 検査で腫れている副甲状腺が見つからない。
- 心臓や肝臓などが手術に耐えられる状態ではない。
- 患者さんが手術を希望しない。
お薬を使った治療
- 血液中のカルシウムが多いことによる症状を和らげます。
- 骨からカルシウムがとられて骨がもろくなっています。これ以上悪くなって骨折してしまわないように、飲み薬や注射で骨を守ります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 手術後しばらくはのどの周りが腫れて、声が出しにくい場合があります。無理に大きな声を出そうとせず、楽に声が出るようになるまで静かに過ごしてください。
血液中のカルシウムを減らすお薬を飲む場合
- はき気がしたり食欲が低下したりすることがあります。胃腸を刺激するお薬ではないので、がまんできる程度であれば、次第に気にならなくなります。どうしてもはき気が続く場合は病院に相談してください。
骨粗鬆症のお薬を使う場合
- いろんな種類のお薬があり、それぞれ副作用があります。くわしくはかかりつけの医師に聞いてみてください。
予防のためにできることは?
- カルシウムをとる量が少ないとなりやすいとされています。カルシウムを多く含む、乳製品や魚介類、大豆製品を積極的にとるように心がけてください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 腫れた副甲状腺を手術で取り除くことができれば、治ります。
- お薬を使った治療をしている場合は、完全には治せませんが、症状をおさえることができます。
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治療の選択について
- 血液中のカルシウム値がそれほど高くなく、骨粗鬆症や腎結石などもない場合に、手術で治すことのメリットがどれほどあるのかは、個人差も大きく客観的に説明することは難しいです。
- しかし、長寿高齢化が進む現在、加齢による骨粗鬆症の進行は大きな問題となっています。そのため、長生きを前提として、50歳未満で副甲状腺機能亢進症と診断されたら、たとえ程度が軽くても手術がすすめられます。
- ほとんどの患者さんは、緊急で手術が必要な状態になることはありませんし、直接死に直結する病気でもありません。主治医の説明を聞いて病気をよく理解したうえで、手術を受けるかどうかをご自分で判断していただくことになります。