蕁麻疹：原因は？ ストレスに関係あるの？ 薬や対処方法はあるの？

更新日：2020/11/11

著者秀 道広 | 広島大学大学院医系科学研究科皮膚科学 教授・副学長

監修椛島 健治 | 京都大学大学院医学研究科皮膚科学 教授
  • 皮膚科・アレルギー科専門医の秀 道広と申します。
  • このページに来ていただいた方は、もしかすると「皮膚にくり返しあらわれる赤いもり上がりは内臓の病気？」「一生治らない？」などと不安を感じておられるかもしれません。
  • 今は症状がなくてもいつまたあらわれるかもしれないという不安を抱えている方や、原因がわからない、お薬を飲めば症状はでないけれど、やめるとまたでてくるという状態の方もおられることと思います。
  • 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
  • 蕁麻疹は、皮膚にくり返し赤いもり上がりがあらわれ、しばらくすると消えさる病気です。
  • 原因、検査、治療の内容は病気のタイプによって異なるので、正しい診断が必要です。
  • 蕁麻疹の多くは、とつぜん原因もわからずに症状があらわれます（特発性【とくはつせい】といいます）。
  • 蕁麻疹の治療は、病気の発症にかかわるヒスタミンという物質のはたらきをおさえるお薬（抗ヒスタミン薬）を飲むことが基本です。
  • お薬を飲みつづけていただくことで、ほとんどの蕁麻疹はやがて治ります。
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蕁麻疹は、どんな病気？

  • 蕁麻疹とは、とつぜん皮膚に赤いもり上がりが現れては消えることをくり返す病気です。
  • 蕁麻疹は、大きく次の2つの種類に分けられます。

蕁麻疹の主な種類

  • 特発性：とつぜん原因もわからずに症状があらわれるもの
  • 刺激誘発型：お薬や運動、皮膚をこすったり寒さにさらされたりしたときにあらわれるもの
  • 特殊な病気のタイプとして、まぶたやくちびるがぼっこりふくれる、血管性浮腫【けっかんせいふしゅ】とよばれるものもあります。
  • アレルギーによって起こるほかの病気と同じく、皮膚などにあるマスト細胞という細胞のはたらきが活発になることで起こります。
  • 現在までに多くの治療のためのお薬が開発されています。

蕁麻疹と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの？ 医療機関の選び方は？

  • 2日以上症状がくり返しあらわれたら、早めに近くのかかりつけ医などを受診してください。症状がでてから1週間以内に治療を始めた患者さんの70％以上が1週間以内、90％以上が1年以内に治っています。
  • 特別の場所や食べ物と症状があらわれたこととの関係に心あたりがある場合、それを検査してもらうことで原因がわかることがあります。
  • 次のような場合は、皮膚科やアレルギーの専門医を受診してください。

皮膚科・アレルギーの専門医の受診が必要な場合

  • 6週間以上たってもよくならない
  • かゆみがあらわれてひっかいたところがみみず腫れのようになる：この場合、お薬はあまりききません。
  • 皮膚の症状とともに涙や咳が出てくる、おなかが痛くなるなど、皮膚以外の症状がある場合は検査が必要です。また、見た目は蕁麻疹に似るけれども1日以上無くならない、かゆくない、熱が出る、関節が痛いといった症状がある時は、蕁麻疹に似た別の病気のことがあります。

受診前によくなるために自分でできることはあるの？

  • ときどき疲れたときにだけ症状があらわれる場合や、お風呂上がりやスポーツをしたあとに小さな赤いぼつぼつが何個かあらわれるだけの場合は、ほうっておいてもかまいません。
  • 蕁麻疹に効くぬり薬はありませんが、一時的にかゆみを止めるためには、薬局で買えるスッとするお薬（メントール）を使ってもかまいません。
  • 症状があらわれたときの写真を撮っておいてください。病院で診察を受けるときには何も症状が残っていないことが多いので、「単にかゆみがあるだけ」と判断されることもあります。症状の写真をお医者さんにみせると、正確な診断に役立ちます。

蕁麻疹になりやすいのはどんな人？ 原因は？

  • 最近の研究では、人口の0.7％は蕁麻疹にかかっており、4.4％は一生のうちのどこかで蕁麻疹をわずらうとされています。
  • 男性よりも女性のほうが多いですが、子どもとお年寄りでは男女の差はありません。
  • 今、あるいはかつてアトピー性皮膚炎であった人は、からだが温まったり、緊張したりしたときにあらわれるタイプの蕁麻疹（コリン性蕁麻疹）がよく起こります。
  • ウイルスや細菌などの感染が蕁麻疹の原因になることがあります。しかし、すべての蕁麻疹が感染によるというわけではありません。

どんな症状がでるの？

  • 蕁麻疹では、次のような皮膚の症状があらわれます。いずれもかゆみがあり、ひどい場合には１日中常にからだのどこかにあらわれていることもあります。
  • 1つひとつの症状は数時間か、長くても1日以内に完全に消え去ります。

赤い盛り上がり

  • 蚊に刺されたあとに似ているもの、あずき粒くらいの丸い点々のほか、にわとりの卵ほどになることもあります。
  • 時には手のひらよりももっと大きなものがつながり、地図のような形になることもあります（図１）。

図表1 蕁麻疹

べったり広がる、または赤い点々

  • 日光や冷たい水、風、お湯などによってあらわれる蕁麻疹では、これらの刺激にさらされた部分がべったりと、あるいは点々と赤くなります。

みみず腫れのような赤い盛り上がり

  • 皮膚がこすれたところにあらわれるタイプの蕁麻疹（機械性蕁麻疹）では、みみず腫れのように赤く腫れあがります。

血管性浮腫

  • 上にあげた蕁麻疹の症状といっしょに、あるいはまったく関係なく、まぶたやくちびるが大きくふくれる場合があります。これは血管性浮腫【けっかんせいふしゅ】とよばれます（図2）。
  • 血管性浮腫はかゆみがなく、多くは2～3日続いて消えます。

図表2 血管性浮腫

コラム：遺伝性血管性浮腫
  • まぶたや舌、くちびるなどが腫れる血管性浮腫の中には、遺伝性血管性浮腫（HAE）という病型があり、その発作は時に生命に関わります。
  • 特に原因不明の腹痛やお腹が膨らむ、手足が腫れる、おしっこをするときに痛いなどは遺伝性血管性浮腫で多く見られる症状です。
  • 遺伝性血管性浮腫については、以下のサイトが参考になります。（https://www.harefukutsuu-hae.jp/knowledge/）

お医者さんに行ったらどんな検査をするの？

  • 蕁麻疹でお医者さんに行くと次のような検査が行われます。

お医者さんで行われる蕁麻疹の検査

  • 問診：まずくわしくお話しを聞き、蕁麻疹の病気のタイプを調べます。
  • 血液検査：蕁麻疹のあらわれ方からアレルギーによって引き起こされたものと疑われた場合に行われます。
  • レントゲン検査：皮膚以外に熱が出たり、関節の痛み、おなかの痛みなどの症状がある場合、症状に応じて血液検査などとともに行うことがあります。
  • 過敏性【かびんせい】の検査：アレルギーの原因として疑われる物質やそのエキスを少し皮膚に刺す、または運動や物理的な刺激、汗をかく刺激などを加えたら反応するかどうかを調べるものです。これは専門の病院で行われます。

どんな治療があるの？

  • 明らかな原因や、蕁麻疹を起こす刺激がある場合はそれらを取り除きます。
  • それらがない、あるいはあっても取り除くことがむずかしい場合は、お薬による治療を行います。
  • お薬による治療の基本は、病気の発症にかかわるヒスタミンという物質のはたらきをおさえる抗ヒスタミン薬を飲むことです。
  • 抗ヒスタミン薬がきかない、あるいは効果が不十分な場合は、さらに次のステップのお薬を使います。
  • 治りにくい場合は、4週間ごとにお薬を皮下に注射することもあります。
  • 汗や、日光などが原因となって起こる蕁麻疹では、むしろ積極的に刺激にさらされることで耐性【たいせい】ができることがあります。

お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは？ 食事や生活で気をつけることはあるの？ 治療の副作用は？

  • 抗ヒスタミン薬では、眠気やからだのだるさがあらわれることがありますが、症状のあらわれ方には個人差がありますので、おかしいなと思ったときは主治医の先生に伝えてください。
  • どのお薬、どの治療がいちばんよいかは1人ひとり異なりますので、いろいろ試してみることが必要な場合もあります。
  • 人によっては、痛み止めのお薬で蕁麻疹が悪くなることがあります。湿布やぬり薬の痛み止めでも起こりますので注意してください。
  • 蕁麻疹はしばしば疲れやストレスで悪くなります。適度のお酒はかまいませんが、翌日まで残るような飲み方はひかえてください。
  • 蕁麻疹のタイプにより、症状がでたときだけお薬を飲む場合と、症状がなくても続けて飲む場合がありますので、具体的には担当の先生の指示をよく聞いてください。

予防のためにできることはあるの？

  • 残念ながら現在の医学では、蕁麻疹を予防する方法はありません。
  • 多くはとつぜん発症しますが、細菌やウイルスに対する感染や、強い疲労がきっかけになることがあります。
  • 蕁麻疹にかぎりませんが、健康のために規則正しい生活と十分な睡眠、バランスのよい食事と適度な運動を心がけてください。

治るの？ 治るとしたらどのくらいで治るの？

  • 蕁麻疹はいつか治りますが、その時期はいろいろで、1日だけで治まる人から、なかには何十年も続く人までもいます。
  • 発症してからの期間が長いほど、その後の治るまでの期間が長くなる傾向があります。
  • 発症して1週間以内に治療を開始した人の70％以上が1週間以内に、90％以上が発症後1年以内に治っていますが、6週間以上症状が治らなかった人の半数以上の人は、治るまでに1年以上かかっているようです。
  • 現在、蕁麻疹を確実に根治させる治療法はできあがっていません。治療を受けて症状がでなくなってもすぐにお薬をやめないでください。特に、慢性蕁麻疹では2か月間無症状の状態が続いてから、少しずつお薬の量を減らすようにしてください。

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